13話 開拓の始まり
迷い霧の森の奥。
俺たちの小さな家の前で、全員が外に出ていた。
アリアが周囲を見回す。
木々に囲まれた開けた土地。
静かな森。
だが――
「まずいわね」
アリアが腕を組んだ。
「何が?」
俺が聞く。
「ここ」
アリアは森の奥を指差す。
「魔物が出てもおかしくない場所よ」
ミーナの耳がぴくりと動く。
エリシアも少し不安そうだ。
「……危険なんですか?」
アリアはうなずく。
「だからまずは防御」
「柵を作るべきね」
なるほど。
俺は手を前に出した。
「じゃあ作るか」
本を呼ぶ。
「クリエイトブック」
光が集まり、本が現れる。
エリシアとミーナはまだ少し驚いた顔をしている。
俺は本を開き、書き込んだ。
『家の周りに木の柵を作る』
文字が淡く光る。
次の瞬間――
ゴゴゴッ……
地面が震えた。
木が地面からせり上がる。
太い丸太が並び、ぐるりと家を囲む。
立派な木の柵が出来上がった。
ミーナがぽかんとする。
「……すごい」
エリシアも感心した様子だ。
「本当に何でも作れるんですね……」
アリアは呆れたように言う。
「便利すぎるわ」
リリィが嬉しそうに飛び回る。
「これで安全!」
確かに。
これで拠点っぽくなった。
だがエリシアが言う。
「次は水ですね」
「水?」
「はい」
エリシアは家の横を見る。
「生活には水が必要です」
「飲み水、料理、洗濯……」
「井戸があった方がいいと思います」
確かにその通りだ。
俺はまた本を開く。
『井戸を作る』
文字が光る。
次の瞬間。
地面が少し沈み、石で囲まれた井戸が現れた。
リリィが覗き込む。
「水の精霊いる」
桶を下ろす。
水を汲み上げる。
透明な水がきらきら光る。
アリアが一口飲む。
「……美味しい」
エリシアも少し飲む。
「すごく綺麗な水です」
ミーナも恐る恐る飲んだ。
「……甘い」
井戸も完成した。
アリアが手を叩く。
「よし」
「次は畑ね」
俺が聞く。
「それもスキルで?」
アリアが首を振る。
「いえ」
「これは自分たちでやりましょう」
スコップを持つ。
「畑は土を触るのが大事」
エリシアも言う。
「私、少し農業の知識があります」
ミーナも慌てて言った。
「わ、私も手伝います」
こうして俺たちは畑を作り始めた。
土を掘る。
石をどける。
耕す。
アリアが力仕事。
エリシアが畝を整える。
ミーナが種を植える。
ミーナが小さく聞いた。
「……こうですか?」
エリシアが優しく教える。
「はい、それで大丈夫です」
リリィは上を飛びながら言う。
「精霊いっぱい」
「きっとよく育つよ」
数時間後。
畑は完成した。
だが――
俺たちは泥だらけだった。
アリアが髪をかき上げる。
「最悪」
「泥まみれじゃない」
エリシアも服を見る。
「……着替えたいですね」
ミーナも困った顔だ。
「体も汚れてしまいました……」
俺は周囲を見る。
川は少し遠い。
そのとき。
リリィが地面を指差した。
「ユウ」
「この下」
「温かい水あるよ」
俺は聞き返す。
「温かい水?」
「うん」
「地下」
温泉……?
俺はにやっとした。
「いいな」
本を開く。
『地下から温泉を作る』
文字が光る。
次の瞬間――
ゴゴゴッ……
地面が割れ、岩がせり上がる。
そして。
そこに出来たのは――
湯気を立てる天然の温泉だった。
アリアが目を丸くする。
「……温泉?」
エリシアも驚く。
「すごい……」
ミーナは湯気を見ている。
「……あったかい」
リリィが嬉しそうに言う。
「精霊の温泉!」
俺は笑った。
「じゃあ」
「開拓初日のご褒美だ」
アリアがにやりとする。
「最高じゃない」
迷い霧の森の奥。
誰も来ない土地。
そこに。
少しずつ。
俺たちの拠点が出来始めていた。




