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11話 迷い霧の森(修正)

朝。


宿屋の窓から柔らかな光が差し込んでいた。


「……朝か」


俺はゆっくりと体を起こす。


昨日はいろんなことがありすぎた。


町に行って。


エリシアと出会って。


奴隷市でミーナを助けて。


ティアナに治療してもらって。


そして――


アリアにすべて話した。


クリエイトブックのこと。


異世界から来たこと。


「ユウ、おはよー」


リリィがふわふわ飛びながら言った。


「おはよう」


そのとき。


コンコン


ドアがノックされた。


「ユウ、起きてる?」


アリアの声だ。


「起きてるよ」


扉を開けると、アリアが立っていた。


「おはよう」


「ああ、おはよう」


自然と部屋に入ってくる。


昨日までより、少しだけ距離が近い。


アリアは俺の肩を見る。


「……まだ慣れないわね」


リリィが手を振る。


「おはよう」


アリアは小さく息を吐いた。


「ほんとに見えるのね」


「昨日も見ただろ」


「夢かと思ったのよ」


少しだけ苦笑する。


その表情は昨日より柔らかい。


「ねえ」


「ん?」


アリアは少しだけ視線を逸らした。


「……無茶、しないでよ」


「その力」


「本当に危ないんだから」


昨日の続きのような言葉。


俺は軽くうなずく。


「分かってる」


アリアはそれを見て、小さく息を吐いた。


「ならいいけど」


完全に信用したわけじゃない。


でも――任せることは決めた、そんな顔だった。



食堂へ向かう。


エリシアとミーナがすでに席についていた。


「おはようございます」


エリシアが丁寧に頭を下げる。


ミーナも慌てて続く。


「お、おはようございます……」


「おはよう」


俺は軽く手を上げる。


ミーナの顔色は昨日よりいい。


「無理するなよ」


「……大丈夫です」


小さくうなずく。


そのとき。


アリアが自然に俺の隣に座った。


(……近いな)


昨日までは少し距離があったはずなのに。


「今日は森に戻るのよね?」


「ああ」


「町から半日くらいかかる」


エリシアが少し驚く。


「そんなに遠いんですね」


アリアが肩をすくめる。


「だから昨日は宿に泊まったの」


「暗くなってから森に入るのは危ないし」


ミーナが少し不安そうに聞く。


「森って……」


「迷い霧の森」


アリアが答える。


ミーナの目が少し大きくなる。


「迷い霧……」


エリシアが言う。


「入ると迷うって噂の森ですよね」


「そう」


アリアはうなずく。


「霧が濃くて方向が分からなくなる」


「冒険者でもあまり入らない」


ミーナが少し心配そうに俺を見る。


「そんな森に……」


俺は笑った。


「安心しろ」


「家がある」


アリアがぼそっと言う。


「それが一番納得できないのよ」


でもその声は、どこか苦笑混じりだった。



朝食を終え。


俺たちは町を出た。


街道を歩き、やがて森へ入る。


深い緑。


白い霧。


「……霧」


ミーナが小さくつぶやく。


「あれが迷い霧の森」


アリアが言う。


森の中は静かだった。


だが歩いていくうちに、霧は薄れていく。


「……変ね」


アリアがつぶやく。


「何が?」


「霧が薄い」


エリシアが驚く。


「そうなんですか?」


「昔はもっとすごかった」


アリアは眉をひそめる。


「一歩先も見えないくらい」


「でも最近、薄くなったって噂は聞いた」


俺は何も言わない。


(……多分俺のせいだよな)


そのとき。


ミーナが俺の肩を見つめていた。


「……精霊さま」


リリィが笑う。


「やっぱり見えるのね」


ミーナの目が大きくなる。


「しゃべった……」


唯一見えないエリシアは首をかしげる。


「誰と話してるの?」


ミーナは慌てて口を閉じる。


リリィが小さく言う。


「この森、精霊が多い」


「だからこの子も落ち着くのかも」



やがて霧は完全に晴れた。


目の前に広がる草原。


そして――


一軒の家。


「……家」


ミーナが息を呑む。


エリシアも驚く。


「こんな森の奥に……」


アリアは黙ってその光景を見ていた。


しばらくして。


小さく息を吐く。


「……これが」


ぽつりとつぶやく。


「昨日言ってたやつ、なのよね」


俺は苦笑する。


「まあ、そうなるな」


アリアは額に手を当てる。


「……聞いてはいたけど」


もう一度、家を見る。


「実際に見ると、全然納得できないわね」


本音だった。


「一晩で家って……」


首を振る。


「理屈は分かるのに、頭がついてこない」


その声には、疑いではなく――


“受け止めきれない現実”への戸惑いがあった。


「……ほんとに、とんでもないことしてるのよ、あなた」


呆れたように言う。


でもその視線は、もう疑っていない。


ミーナとエリシアは不思議そうにしている。


「どうしたんですか?」


アリアは軽く手を振る。


「あとで説明する」


そして小さく付け加える。


「ちゃんと理解できるかは、別だけど」


ちらっと俺を見る。


少しだけ苦笑していた。



俺は扉を開ける。


振り返る。


「ようこそ」


「俺の家へ」


小さな家。


だけど――


ここから始まる。


スローライフと建国の物語が。


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