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10話 アリアの問い(修正)

宿屋は町の中心から少し離れた場所にあった。


木造の二階建て。


冒険者がよく使う宿らしく、そこそこ賑わっている。


「二部屋お願い」


アリアが受付で言った。


「男女は分けた方がいいでしょ」


「そうだな」


こうして部屋は


ユウ

アリア・エリシア•ミーナと分かれた。


夜。


宿屋の一室。


ランプの明かりが、静かに揺れている。


俺はベッドに腰掛けていた。


今日の出来事を思い返す。


町。


人。


そして――


この世界の常識。


「……全然分かってないな」


小さくつぶやく。


そのとき。


コンコン。


ドアがノックされた。


「……はい」


扉を開ける。


そこにいたのは――アリアだった。


「少し、いい?」


真剣な顔。


いつもの軽い雰囲気じゃない。


「ああ」


中に入るよう促す。


アリアは部屋に入ると、ドアを閉めた。


少しの沈黙。


そして――


「ユウ」


まっすぐ見てくる。


「あなた、何者?」


「……何者って?」


「とぼけないで」


声は静かだけど、強い。


「あなた、この世界のことを知らなすぎる」


俺は黙る。


アリアは続ける。


「貨幣の価値も知らない」


「常識も分かってない」


「でも」


少し間を置く。


「生きるのに困ってない」


図星だった。


「森の中に家」


「一人で生活」


「傷も負わない」


「……明らかにおかしい」


逃げ場がない。


完全に見抜かれている。


アリアはさらに一歩踏み込む。


「それに」


「誰と話してるの?」


心臓が一瞬止まる。


「時々、一人じゃないみたいに見える」


――そこまで見てたのか。


部屋の空気が張り詰める。


ごまかすことはできる。


でも――


「……はあ」


俺は小さく息を吐いた。


「信じるかは分からないけど」


アリアの目は逸れない。


「話すよ」


少しだけ、間を置く。


「俺、この世界の人間じゃない」


沈黙。


アリアは一瞬だけ目を見開いた。


でもすぐに戻る。


「……続けて」


「別の世界から来た」


「気づいたら森にいて」


「そのとき、これを持ってた」


俺は小さくつぶやく。


「クリエイトブック」


光が溢れる。


本が、空中に現れた。


アリアの目が大きく開かれる。


「……っ」


言葉を失っている。


俺は本を開いた。


「これに書いたことが、現実になる」


静かに言う。


「家も、これで作った」


沈黙。


ランプの火が揺れる音だけがする。


アリアはゆっくりと息を吐いた。


「……本気で言ってる?」


「見せる」


俺はペンを取る。


さらさらと書く。


『この場に小さな光が生まれる』


次の瞬間。


ふわりと光が浮かんだ。


部屋の中に、小さな光が漂う。


アリアはそれを見て――


確信した。


「……本物ね」


小さくつぶやく。


そのとき。


「やっと話したわね」


リリィが姿を現した。


光の中から、ふわりと現れる。


アリアが息を呑む。


「……精霊?」


リリィはにやっと笑う。


「正解」


「リリィよ」


アリアは目を離せない。


「……見える」


俺が言う。


「クリエイトブックで書いた」


「“見えるようになる”って」


アリアはゆっくりと椅子に座った。


頭を押さえる。


「……情報量が多い」


「悪い」


しばらく沈黙。


やがてアリアは顔を上げた。


そして言った。


「一つ、約束して」


「なんだ?」


まっすぐな目。


「その力」


「勝手に使わないで」


「……」


「何かするなら、必ず相談して」


「それくらい危険な力よ」


俺は少し考えてから、うなずいた。


「分かった」


リリィがくすっと笑う。


「監視役が増えたわね」


「うるさい」


アリアは小さくため息をついた。


でもその表情は――


どこか安心していた。


「……なるほどね」


「納得した」


「あなた、普通じゃないわけだ」


「今さらだな」


少しだけ、空気が緩む。


こうして。


俺の秘密は――


初めて誰かに知られた。


そしてそれは。


ただの秘密じゃなく。


この世界を変える力として――


動き始めることになる。

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