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青春の被害者たちのラブソング  作者: 竹湧綺 / Take You-ki
第三楽章:アッチェレランドの果てに
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朝の図書室

 二つほどの台風が近づいている。その影響でしばらく雨が続きそうだと、天気予報がそう告げていた。

 珍しくはあるが、東京近郊のこの辺に来る頃には、たいてい逸れるか、消えているだろう。

 そんな風に思っていた、雨の日のことだった。

 放課後はバンドの練習で行けなくなったが、朝だけはまだ図書室に通っていた。

 図書室には自分以外、誰もいなかった。ページをめくる音と、自分の呼吸だけが、やけに大きく聞こえた。

 本を借りても読む時間がないから、一人でゆっくりする時間はここくらいだ。それに、こうして言葉に触れていたら、歌詞のインスピレーションが湧いてくるかもしれない。

 そう思ってゆっくり本を読んでいたというのに……。

「あ、やっぱいた! 青鏡《あおみ》!」

 と、静かな朝は儚くも終わってしまった。

「お前、最近、瀬里賀さんと仲良いって噂なんだけど」

 と是視《これみ》が爆弾を持ってきた。

「まあ仲はいい、と思ってるけど」

「まじかよ! すっごい綺麗な人だったよな! 今度、紹介してくんね?」

「嫌だよ」

 少し苛立ちを覚えてそう返した。

「なんでだよ。あ、お前! 彼女は作らないって言ってたじゃんか!」

 何を勘違いしたのか、そんなことを言ってきた。

「……彼女じゃないけど」

「ならいいじゃん」

「あいつ、そういうの嫌がるの」

「えー、お嬢様だしそうなのか……」

 ……はぁ……。なんで俺こんな嘘ついた?

「じゃあさ、瀬里賀さんが文化祭で出しものするって話は?」

「本当だよ」

 面倒臭いので、とりあえず短く返事をしていく。

「まじか。これも当たってんだ。じゃあ、それに青鏡も一枚かんでるの?」

「一枚というか、一緒にやるよ」

 それを聞いた是視が、大袈裟にうなだれる。

「くっそぅ。俺が色のねぇ、むさ苦しい学校生活を送ってる間に、そんな青春しやがって……」

「青春って……。バンドだよ。ずっと練習してるだけ」

 青っていうより、スタジオ色だ。

「バンド?! くっそ青春ど真ん中じゃねぇか!」

 じゃあナイ音入れば良かったじゃん……。なんでサッカー部の副キャプテンやってんの?

「お前ずっと何言ってんの?」

「気づいてないバカに、青春真っ只中にいるんだぞって教えてやってんだよ」

 バカってお前。

 ……なんだその押し付けがましい優しさ。

「青春、なんてのは大人たちが勝手に、子どもたちに押し付けてるだけの希望にすぎないの。もしくは、創作物で消費するためだけの売り文句」

「相変わらず、冷めてんなー、お前」

 呆れたように言われた。

「まあいいや。友達も誘って見に行くわ。楽しみにしてるよ」

「そりゃどうも」

 その辺で予鈴が鳴った。

「あ、やっべ、先生んとこ行かないと。じゃな」

 そういって是視が出ていった。なんだったんだ。

 図書室はまた、ガタガタと風が小さく窓を揺らすだけの、静かな空間に戻っていた。

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