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青春の被害者たちのラブソング  作者: 竹湧綺 / Take You-ki
第二楽章:アオハル・エスプレッシーヴォ
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15/33

束の間の休暇

 練習を始めてから数週間が経った。その頃には、皆の顔にも少しずつ疲れが見え始めていた。

 次の月曜日はスポーツの日で休日。つまり今週末は三連休だ。

 だからなのかはわからないが、愛歌がこんなことを言い始めた。

「チケット取ったから、みんなで行こ」

 とどこからかロックフェスのチケットを持ってきたのだ。

 そのため、朝早くから地方まで遠征することになった。アーティストの中には、よく耳にする有名な人たちもいた。

「参考に……、できるかどうかはわからないけれど、いい刺激にはなるでしょ?」

 と愛歌が言っていた。

 実際、生の音楽を摂取するのは悪くなかった。

 スピーカーの重低音が腹の底を鳴らすたびに、「音楽って、生きてるんだな」と思った。

「すごかった! ドラムって実際に聞くとあんなんなんだな!」

 特にはしゃいでいたのは陽だった。どちらかというと、能動的に自分が動くことしかやらないタイプだから、オーディエンスとして何か聴くみたいなイベントとかには、あまり行ったことなかったんだろう。

 俺を含めたみんなにとっても、すごくいい刺激になったと思う。


 フェスの後、愛歌が予約していた温泉宿に泊まった。愛歌が日本の温泉に入ってみたいと言っていたためだ。

 とはいえ、下半身が不自由な愛歌にとって、大衆浴場のような形式のところは難しい。故に、バリアフリーの旅館かつ客室露天風呂のあるところを選んだ。

 もちろん男と女は隣同士の別の部屋だ。前に陽の家に泊まった時みたいなのは、心臓に悪いから2度とやめていただきたい。

「いくらうちらが可愛いからって覗いたりしちゃダメだかんね」

 と真夏に言われた

(そもそも現実の旅館って覗ける構造じゃないだろ)

 と思った。

 しかしそれを指摘しようものなら、「へー、じゃあ、覗ける構造だったら覗くんだ」などと、からかわれること請け合いなのでやめておいた。

 部屋に入って荷物を置き、露天風呂で汗を流した。

「真夏が愛歌の体洗ってあげるのかな」

 ぼーっと茜色の空を眺めていたら、急に陽がそんなことを言い始めた。油断していたこともあり、ついその様子を想像してしまい、一瞬顔をお湯に沈めてしまった。

「っていやいや、別に足が動かないだけなんだから、体は自分で洗えるだろ」

 足先とかまで行けるのか、とかはわかんないけど。

「でも服を脱ぐのとか、湯船に浸かるまでとかは手伝うわけだよな。大変だな」

 さらにそれを想像してしまう。

「……………………そうですね」

 はあ……。おそらく陽の気質的に本気で、大変だな、という思いから言っているんだろう。

 しかし、こっちは想像するだけでも目に毒だからやめてほしい。と思ったのと同時に、胸の奥に、言葉にならないもやが残った。それを、誤魔化すように、湯気に混ぜて息を吐いた。

 風呂を出て少し体を休ませたあと、愛歌たちと合流して懐石料理を食べた。こういうの食べたの初めてなんだけど、美味しいというのと同時に、なんかすごいお高い味がしたのを覚えている。

 愛歌がここを予約してくれて、言われて渡した宿代、こんな大層な料理食えるほどの値段じゃなかったんだけど……。まあ、考えるのは野暮かもしれないな。

 その晩は、どうしても愛歌の浴衣姿が頭から抜けなかった。


 翌日からはまた、練習漬けの日々になった。

 そして気づけば、文化祭までもう一ヶ月と少しになっていた。

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