第三話 ~森で一人~
第3話を読んでいただきありがとうございます!
今回はレインにとって初めての戦いです。
《世界改変》の能力が、どこまで通用するのかお楽しみください。
「グルルルル……。」
ストーンウルフは低く唸りながら、一歩ずつレインとの距離を詰めてきた。
鋭い牙。
岩のように硬そうな前脚。
逃げようにも、背後は森だ。
「落ち着け……落ち着け……。」
レインは震える手で短剣を握り直した。
だが、まともに戦えば勝てない。
そう理解していた。
その時、再び青白い文字が浮かぶ。
__________
【ストーンウルフ】
危険度:E
弱点:右前脚
状態:空腹
改変可能:YES
__________
(状態……。)
レインは一点を見つめた。
「空腹……。」
試しに、その文字へ意識を集中させる。
《変更可能》
《変更先を入力してください》
頭の中に文字が流れ込む。
レインは思いつくまま念じた。
(満腹。)
次の瞬間。
《改変を実行します》
《魔力を3消費しました》
ストーンウルフの身体が一瞬だけ淡く光る。
「グル……?」
さっきまで敵意をむき出しにしていた魔物が、不思議そうに首をかしげた。
そして。
「クゥン……。」
大きくあくびをすると、くるりと向きを変え、森の奥へ歩き始めた。
「えっ……。」
レインは呆然と立ち尽くす。
本当に成功した。
戦わずして魔物を退けたのだ。
「これが……世界改変。」
だが、その安心も長くは続かなかった。
ガサガサッ!
今度は茂みの奥から三つの気配。
「グルルルッ!」
「ギャウッ!」
「ウォォン!」
三匹のストーンウルフ。
しかも先ほどより大きい。
「うそだろ……!」
一匹なら能力を試せる。
しかし三匹では魔力が足りる保証はない。
レインは急いで短剣を構える。
すると、画面の端に小さな表示が現れた。
__________
魔力 7/10
__________
「残り七……。」
考える時間はない。
一匹目が飛びかかってきた。
「うわっ!」
間一髪で避ける。
だが、二匹目が横から襲いかかる。
鋭い爪が服を裂いた。
「くっ……!」
血がにじむ。
痛みが走る。
それでもレインは逃げなかった。
足元には、さっき改変した短剣がある。
(武器も変えられるんだった……!)
短剣を鑑定する。
__________
【鉄の短剣】
品質:普通
攻撃力:10
耐久値:20/20
改変可能:YES
__________
(攻撃力……もっと上げられないか!)
《警告》
《現在の魔力では攻撃力30まで改変可能》
「十分だ!」
レインは迷わず数字を書き換えた。
__________
攻撃力
10 → 30
__________
短剣が銀色の光を放つ。
その瞬間、一匹が飛び込んできた。
「はあああっ!」
レインは夢中で短剣を振るう。
ザシュッ!
手応えがあった。
ストーンウルフは悲鳴を上げながら地面を転がる。
「倒せた……!」
自分でも信じられない。
普通の短剣ではあり得ない威力だった。
残る二匹は仲間が倒れたことに警戒したのか、少し距離を取る。
「今だ!」
レインは全力で街道を駆け出した。
魔物たちの唸り声が背後から聞こえる。
必死に走る。
肺が焼けるように苦しい。
それでも止まれない。
やがて森を抜けると、小さな街道が見えてきた。
その時だった。
「そこで何をしている!」
鋭い声が響く。
振り向くと、革鎧を身につけた男女が五人。
腰には剣や杖を携え、胸には同じ紋章が刻まれている。
冒険者だ。
一人の大男が倒れているストーンウルフを見る。
「この魔物……お前がやったのか?」
レインは息を切らしながら答えた。
「……はい。」
冒険者たちは顔を見合わせる。
Fランク職業の少年が、一人でストーンウルフを倒した。
誰も信じられないという表情だった。
そして、リーダーらしき女性がゆっくり口を開く。
「君……名前は?」
レインは短剣を握りしめたまま答えた。
「レイン・アルトです。」
その出会いが、彼の運命を大きく変えることになるとは、まだ誰も知らなかった。
第3話を読んでいただきありがとうございました!
レインが初めて《世界改変》を戦いで使い、その可能性を実感する回でした。
次回、第4話「冒険者との出会い」では、レインが街へ向かい、冒険者ギルドへの道が開かれます。
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