第二話 ~追放~
第2話を読んでいただきありがとうございます!
今回はレインの人生が大きく動き出します。
絶望の先に待つ"最初の一歩"を、ぜひ見届けてください。
教会を出たレインは、重い足取りで村の道を歩いていた。
先ほどまで聞こえていた祝福の声は、もう自分には向けられない。
「聖騎士様、おめでとう!」
「エリシアちゃんは村の誇りだ!」
笑顔に囲まれる幼なじみを横目に、レインは静かに視線を落とした。
(……やっぱり、ハズレ職業なんだな。)
胸が苦しい。
母や妹に、何と言えばいいのだろう。
その時だった。
「おい、レイン。」
低い声が背後から響く。
振り返ると、村長と数人の大人が立っていた。
村長は腕を組み、険しい表情でレインを見る。
「少し話がある。集会所まで来なさい。」
嫌な予感しかしなかった。
集会所には村の有力者たちが集まっていた。
重苦しい空気の中、村長が口を開く。
「レイン。お前には期待していた。」
「……はい。」
「だが、《鑑定士》では村を守ることも、発展させることもできない。」
その言葉は分かっていた。
だからこそ、何も言い返せない。
「今年は魔物の被害も増えている。」
「食料も足りない。」
「働けない者を養う余裕はない。」
次々と飛ぶ言葉。
レインは拳を握り締める。
「待ってください!」
扉が勢いよく開いた。
飛び込んできたのはエリシアだった。
「レインは努力家です! 職業だけで決めるなんて___!」
「エリシア。」
村長は静かに首を振る。
「君は聖騎士だ。」
「これから王都へ行き、村の未来を背負う存在になる。」
「情だけでは村は守れない。」
エリシアは唇を噛む。
「でも……!」
「決定事項だ。」
村長はレインへ一枚の革袋を差し出した。
中には少しの銀貨と、干し肉。
「これで村を出なさい。」
「今日限りで、お前をフィルド村から追放する。」
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
「……え?」
追放。
その二文字が、何度も頭の中で反響する。
家も。
家族も。
思い出も。
全部、今日で終わるというのか。
母は涙をこらえながらレインを抱きしめた。
「ごめんね……。」
「母さんは謝らないで。」
妹は声を上げて泣いている。
「お兄ちゃん……行かないで……!」
レインは笑おうとした。
最後くらい、家族を安心させたかった。
しかし、笑顔はうまく作れなかった。
夕日が村を赤く染める。
レインは振り返らず、村の門をくぐった。
その時__。
視界の端に、再び青白い文字が浮かぶ。
《世界改変システム 起動》
《初回チュートリアルを開始します》
レインは思わず立ち止まった。
「……また、この文字だ。」
誰も気づいていない。
見えているのは、自分だけ。
そして、新たな文字が静かに浮かび上がる。
《最初の対象を鑑定してください》
レインは戸惑いながらも、周囲を見回した。
街道の脇には、踏み捨てられた古びた短剣が一本転がっている。
刃は欠け、柄もひび割れ、今にも折れそうだった。
「これを……鑑定しろってことか?」
半信半疑で短剣に触れた瞬間、青白い文字が視界いっぱいに広がった。
__________
【鉄の短剣】
品質:粗悪
攻撃力:3
耐久値:2/20
効果:なし
改変可能:YES
__________
「……見えた。」
レインは息を呑む。
今まで聞いたことのない情報が、まるで本を読むように理解できる。
すると、さらに新しい文字が浮かんだ。
《改変を実行しますか?》
《成功率:100%》
《消費魔力:1》
「改変……?」
恐る恐る「はい」と念じる。
すると画面が切り替わった。
__________
【変更可能項目】
・品質
・攻撃力
・耐久値
・効果
__________
「全部……変えられるのか?」
試しに品質へ意識を向ける。
《粗悪→普通》
さらに攻撃力を「3」から「10」へ。
耐久値も「20」へ戻す。
「これで……!」
短剣が淡い光を放った。
欠けていた刃は元通りになり、くすんでいた鉄も鈍く輝きを取り戻していく。
レインは思わず目を見開いた。
「本当に……変わった。」
もう一度鑑定する。
__________
【鉄の短剣】
品質:普通
攻撃力:10
耐久値:20/20
効果:なし
__________
「……すごい。」
その瞬間だった。
ガサッ。
近くの茂みが大きく揺れる。
「グルルル……。」
姿を現したのは、灰色の毛並みを持つ魔物、ストーンウルフだった。
「なんで街道の近くに……!」
レインは短剣を構える。
その時、視界に再び文字が浮かんだ。
__________
【ストーンウルフ】
危険度:E
弱点:右前脚
状態:空腹
改変可能:YES
__________
「魔物まで鑑定できるのか……!」
そして、ある文字に目が止まった。
《状態:空腹》
(これも……変えられるのか?)
レインは魔物へ向かって手を伸ばした。
「頼む……!」
世界を書き換える力が、初めて魔物へ向けられようとしていた。
第2話を読んでいただき、ありがとうございました!
ついに《世界改変》の能力が明らかになりました。物だけでなく、魔物にも使えそうなことが分かり、レインの冒険が本格的に始まります。
次回、第3話「森で一人」では、レインが初めて《世界改変》を戦いで使い、その力の可能性と危険性を知ることになります。
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