↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/49

2. 蝶(ちょう)と自由(じゆう) (18)

ちょう自由じゆう (18)


 さっきの予想よそうたった。


 いまうしろについているのは、ギャングではない。


 クルックスを監視かんししていた、第一線だいいっせん監視かんしエージェントたち。


 もっとはや監視かんし情報じょうほうったぶん、できるだけ急造きゅうぞうしたのだろう。


 監視かんしメインなら、火力かりょくたいしたことないはずだが——。


「はっ。かった。つまりこの都市とし全体ぜんたいたたかってのこらなきゃならないんだな」


 ギャングよりもエージェントたちにさきくわすことになった。


 これで警察けいさつ特攻隊とっこうたいなどの正規せいき行政力ぎょうせいりょくのぞく——。


 すべての戦闘せんとう組織そしき追撃戦ついげきせんひろげることに。


〔ものすごいかず団体だんたい山分やまわけするから大金たいきんにはならないだろうが……まあな。のこったら連絡れんらくくれ〕


「なんだ。かねかせがせなかったからころしにるのか?」


〔いや。本当ほんとうすごがしだからな。あとおれ必要ひつようとき連絡れんらくしようとおもって〕


 アベルはためいきをついた。


 それでもうらみをって攻撃こうげきするというはなしではない。


 それだけでもさいわいだった。


「あー……くそっ。この都市としでの評判ひょうばん管理かんり上手うまくやってたがしたのに。こうもこじれるか?」


 愚痴ぐちきつけたのか。


 後部こうぶ座席ざせきのクルックスが、不安ふあんそうな表情ひょうじょうでアベルをつめた。


〔ハハハ!そうでもないだろ?元々(もともと)あんたはギャングと事業じぎょう領域りょういきかぶりもしないじゃないか。いまたがいの立場たちばちがうからそうなってるだけで。あんたの目標もくひょうなにかはらないが、今回こんかいけんわればそんなことでうらみをんだりはしないさ〕


「ん?それはどういうことだ?」


〔あんたは依頼いらいけただけだろ?〕


「……なるほどな。ああ。おれかねをもらったぶん仕事しごとをするだけだ。それはギャングもおなじだ。たがいの立場たちばちがうだけさ」


 アベルはハンドルをきゅうった。


 ランドル・ストリートへの進入しんにゅう


 そしてふたたび、アクセルペダルを最後さいごまでむ。


「よし。ならギャングの重役じゅうやくではなく、交渉人こうしょうにんのコーネルにたのもう。今回こんかいけんおれ評判ひょうばん台無だいなしになるなら、あんたが上手うま仲裁ちゅうさいしてくれ。着手金ちゃくしゅきんいまおくる」


〔ん?本気ほんきか?〕


「くれるときにもらっとけ。あんたのいるギャングだけじゃなく、すべてのギャングと交渉こうしょうつくってくれ」


〔ハハ。おれはそんなやすっぽくない……2まんクォズもおくったのか!?〕


着手金ちゃくしゅきんだ。いまのこれるかどうかからないが、とにかく……」


 アベルはデッカードの警告けいこくくやいなや、きゅうブレーキをんだ。


 クルックスが周囲しゅういつかみ、かたむからだささえる。


〔ガァン!〕


 トラックのまえのバンパー——。


 そこを鋼鉄こうてつもりかすめてった。


 路地ろじ待機たいきしていたやつらもいたらしい。


いま工作こうさくをしておかないと、今日きょうのこってもアスフォデルにはもどってられないからな!」


 政府せいふ行政ぎょうせい処理しょり問題もんだいない。


 どうせアベルは、この都市とし政府せいふかりもしない。


 登録とうろくされたこともないからだ。


 有栖ありす あらもそれはおなじはず。


 問題もんだいなのは——。


 この都市とし実質的じっしつてき支配しはいするギャングだ。


承知しょうちしました、お客様きゃくさま。しっかり工作こうさくしておきましょう〕


電話でんわるぞ。いまいそがしいんでな!」


 アベルはふたたびアクセルをむ。


 バックミラーで、追跡ついせきしてくるてき確認かくにんした。


 もはやSUVや乗用車じょうようしゃうしろにがった。


 わりに、大型おおがたトレーラートラックがちかづいてきていた。


 あれがよこて、コンテナのとびらひらけばわりだ。


 どうやってもふせ方法ほうほうはない。


 あのなかにいる人員じんいん集中しゅうちゅう射撃しゃげきければ——。


 防弾ぼうだん加工かこうだとしても、一瞬いっしゅんえられないだろうから。


〔アベル。ひだりタイヤに被弾ひだんです。走行そうこう可能かのう距離きょり今後こんごやく10km〕


確認かくにん


 こんなときそなえたランフラット(Run Flat)タイヤ。


 装着そうちゃくしておいたおかげで、しばらくはつだろう。


 しかし機会きかいくるまめ、タイヤを交換こうかんしなければならない。


「うわっ、れる!」


 有栖ありす あらはすりをつかみ、えながらった。


 近接きんせつ戦闘員せんとういん彼女かのじょには、この状況じょうきょう出来できることはかぎられている。


 それでもには、サブマシンガンをにぎっていた。


 まえからてきてくればつだろう。


 だが、いまのようにくるまはげしくれる高速こうそく追撃戦ついげきせん最中さなか


 からだそとすのは自殺行為じさつこういだ。


 はじばされれば、即座そくざ重傷じゅうしょうなのだから。


〔ドカン!〕


 くるまのすぐよこに、ロケット弾頭だんとう着弾ちゃくだんした。


 無数むすう破片はへんらす。


 直撃ちょくげきすれば、三人さんにんとも仲良なかよ天国てんごくばされるだろう。


「クルックス?」


「ああ!って!いてる!」


 クルックスは天井てんじょういたすりを両手りょうてつかんだ。


 をきつくじている。


 銃弾じゅうだん砲弾ほうだん状況じょうきょう


 彼女かのじょにとってははじめてなのだから、当然とうぜんだった。


もどはないんだな?」


「ない!」


 なみだながれていた。


 この状況じょうきょうおどろいたのか、それともかなしみがげたのかはからない。


 しかしクルックスはあきらかになみだながしていた。


 しばってえていた。


「なぜだ?快適かいてき安楽あんらく生活せいかつがあるはずなのに?こんな銃弾じゅうだん地獄じごくこのみなのか!?」


 アベルはクルックスにさけんだ。


 クルックスがもどったからといって、ぬことはないだろう。


 自由じゆうおおきく拘束こうそくされる。


 つづき、加害者かがいしゃ隠蔽いんぺいする仕事しごとまかされることになるだろうが……。


 とにかく、にはしないはずだった。


快適かいてきだろうね!たぶんぬまでかねもれて、快適かいてき安楽あんらく布団ふとんうえぬんだわ!」


 すでにくるまれはおさまっていた。


 うしろからっていたくるまも、再装填さいそうてんのためにしずかになる。


 しかしクルックスにはまった余裕よゆうがない。


 全身ぜんしん緊張きんちょうさせ、うであしちからめてえていた。


 まるで、蜘蛛くもかったちょう足掻あがくように——。


「でもわたしのせいでんだ、人生じんせいくずった人達ひとたちはもっとえるでしょうね!」


 一日いちにちたりとも、まともにねむれたことはなかった。


 じれば、人々(ひとびと)の悲鳴ひめいあたまなかくす。


 法廷ほうてい悪党あくとう無罪むざい宣告せんこくする。


 すると、大半たいはん被害者ひがいしゃ自分自身じぶんじしんめた。


 クルックスも自分自身じぶんじしんめた。


 そして大半たいはん被害者ひがいしゃは、しばらくして自殺じさつしたのだ。


『いっそわたしまれてこなければ……あの人達ひとたちくやしいおもいをすることはなかったのに』


 クルックスは毎朝まいあさ地元じもと新聞しんぶん訃報欄ふほうらん確認かくにんした。


 自分じぶんのせいで自殺じさつするしかなかった人々(ひとびと)。


 かれらの事情じじょうあつめ、部屋へやっておいた。


 毎日まいにち謝罪しゃざいし、後悔こうかいした。


 だが、現実げんじつわらなかった。


人間にんげんは……人生じんせいは!快適かいてきんでいくためにあるんじゃない!」


 だからさけばなければならなかった。


 脅迫きょうはくされて仕方しかたのない状況じょうきょうだったとしても。


 クルックスがかれらをころしたという事実じじつわらない。


 すくなくとも、彼女かのじょ自身じしんはそうおもっていた。


 んだりきずついたりした人々(ひとびと)には、しゃべくちすらないのだから。


 かれらをころしたクルックスが、こえげなければならなかった。


人間にんげん人生じんせい価値かちあるもののためにささげるものよ!」


 爆音ばくおん銃声じゅうせいなかでももれないように。


 こえだけでもげなければならなかったのだ。


〔アベル、機関銃きかんじゅう再装填さいそうてん必要ひつようです〕


 機関銃きかんじゅう操作そうさしていたデッカードが、弾丸だんがん不足ぶそくげた。


かった。おれって……」


「いや。そのままでいて」


 有栖ありす あらががろうとしたが、アベルはくびった。


〔ズドンッ!〕


 トラックの荷台にだい乗客席じょうきゃくせきへだてる鉄板てっぱんくぼんだ。


 鉄板てっぱん大口径だいこうけい狙撃弾そげきだんふせぎ、内側うちがわにひしゃげたのだ。


「だからわたしは!まだ出来できることがある!ほか都市としって、これ以上いじょうあの人達ひとたち利用りようされないわ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。