1. アスフォデルのまともな一日 (1)
1.
アベルはシーツに染み込んだ古い潤滑油の匂いの中で目を覚ました。習慣的に差し上げた旧式スマートフォンの画面の数字は、すでに真昼の正午をぎりぎり過ぎようとしていた。
昨日はひどく割に合わない夜だった。急に降ってきた逃走依頼のおかげで、脊椎を伝って押しつける疲労が重くじっとりとしていた。
瀬戸際をさまよっていた連中を無免許医師の手術台に下ろし、痕跡を消す作業が夜通し続いた。CCTVのDNI監視を逃れるため、契約した闇市場の整備工場にトラックを押し込んで、車のナンバープレートを偽造した。
万が一企業の監視に引っかかると思い、荷台をずっしりと占めていた不法迫撃砲と重機関銃も取り外して作業場に置かなければならなかったし。
その代わりに、車輪を失った体は正直に歩かなければならなかった。アスフォデルの崩れた外環状道路をしばらく歩いて宿の扉を開けた時、背後では情け容赦なく青みがかった朝日が昇っていた。だから今目を覚ましたのは怠惰な寝坊ではなく、生存のための最低限の稼働停止に過ぎなかった。
「あー……目が覚めない。」
眼鏡をかけ直したアベルは乾いた息を吐きながらコーヒーポットのボタンを押した。加熱される鉄製やかんの悲鳴が部屋を満たすと、彼は卓上の古いラジオのダイヤルを回した。
〔おはようございます。3月4日の朝の放送をお届けします。私は進行を担当した……〕
21世紀ももうその10分の9を大きく過ぎて、終幕へと走っていた。人類はこの世紀が終わる前に自らを絶滅させたくて焦っている存在たちのように、ブレーキが壊れたジャイロドロップのごとく底へと落下していく最中だった。
富める者はより富み、貧しい者はより貧しく——。環境汚染、資本の不平等、そして生体人間の労働価値の低下という大げさな言葉が、地獄の歯車のように噛み合ってアスフォデルという魔景を完成させた。
昼夜を問わない銃声はこの都市から流れる機械的な白色雑音で、資本を握ったガラス壁の向こうの富裕層は徹底して外の血の臭いを排除し、自分たちだけで寄り集まって安楽を貪っていた。
〔キイン……〕
作業場のサーバーに電源を入れると、旧式モーターが悲鳴を上げながら冷却ファンを回し始めた。
アベルはこの巨大な死体のような都市のど真ん中で、機械と肉片が奇怪に混じり合った強化身体のソフトウェアを弄ることで口に糊を塗った。
質屋を狙って生存のための副業をしようとしているスパイクの火器管制システムをチューニングしてやったように、異なる大企業たちが勝手気ままにリリースした義体のOSをスムーズに互換させて効率を極大化すること。
それが技術者アベルが持つ唯一の飯の種だった。
実のところ今や、技術者という言葉もほぼ死語になりつつあったが。
〔ドンドンドン!〕
調整が終わる前に、古い鉄製シャッターが荒々しく鳴った。アベルはため息をついて端末の画面で外部カメラを確認した。画面に映ったユニフォームの規格を確認して、初めて彼は錠前を解除した。
「早く開けるな。最近商売繁盛か?」
「忙しかったらシャッターを上げもしなかったよ。警官さんみたいにぴしっとした警察のユニフォームを着た人間が裏路地の作業場を出入りするのを見たら、犯罪者のお客さんたちが四方八方に逃げ出すから。」
アベルの冷めた返しにも、訪ねてきた男は気にしなかった。男の左腕は人間の標準規格をはるかに超えて、工業用油圧プレスのように分厚かった。胸にはアスフォデル南部警察署のマークと正式警官任命バッジがぞんざいに輝いていた。
「そうか。今日は俺は運が良いな。」
警察の服を着た客は慣れた様子で、全身を拘束する診断用カプセルチェアに体を滑り込ませた。彼の首の後ろに埋め込まれたDNIチップがぷるっと震えながら、アベルのモニターと同調を開始した。
「今日のご要望は?」
アベルが端末のキーボードを叩きながら、乾燥した調子で聞いた。警官は不思議そうにDNIを点滅させた。
「来る前にDNIで要望書を送ったけど。俺のDNI信号が拾えない?」
人間の脳下垂体にチップを埋め込むDNI技術が商用化されて以来、人類はマウスやキーボードのような旧時代の入力装置をかさばるゴミとして扱った。考えた瞬間に電波を通じて機械が動く世の中だったから。
「ちょっと待って。昨日ちょっと忙しくて確認できてなかった。」
アベルは当たり前のように、ポケットから四角くて無骨なプラスチックの塊——「スマートフォン」を取り出した。半世紀前に博物館に直行すべきだった旧時代の遺物を操作するアベルを見て、警官はまるで生きた恐竜を見たかのような奇妙な表情を浮かべた。
「でも『腕と脚の調整』とだけ書いておくだけでは……私は医者でもないし何をどうしろと言うのか分からないんだけど。」
公務員が変な目で見ようとかまわず、アベルは旧式画面をスワイプした。相手が誰であれ、金を払う客の欠陥を見つけることが優先だった。
「あ、それが……射撃角度を取る度に腕と脚の反応速度が微妙にずれる感じがするから。精密点検をお願いしたくて。」
〔カチャ〕
警官が意志を込めると、彼の左前腕の装甲パネルが縦に割れながら、冷たい鋼鉄の銃口が滑らかに露わになった。肉を削り取って埋め込んだ、非常用発砲装置だった。
「22口径……オルフェウス3世代モデルか。帳簿の予算を横領する時に使う古い鉄くずだけど。」
「え?見ただけで分かるの?」
「アスフォデルの巡査たちが支給品の代わりに闇市場で大量に買い込む非常用弾丸発射機だから。軍需課の連中がとても気に入っているラインナップだよ。」
アベルは警官の脳神経網の数値を見るために、診断プログラムを起動した。
「でも最近、裏路地に『黒髪の幽霊』という物騒な噂が出回っているけど、それって何?送ってあったメッセージにも『黒髪の亡霊に遅れを取らないようセッティングしてくれ』と書いてあったけど。」
空にはギャップ企業役員たちの飛行艇が飛び回り、可視光線を超えて熱映像と周波数を視覚化する人工眼球が幅を利かせている時代だ。そんな最先端ハイテク都市で「幽霊」とは。
アベルはプログラムがロードされる短い空白を埋めるために質問を投げかけた。
「ああ、強行犯係から降りてきた保安文書だよ。黒い髪を持つ正体不明のテロリストが都市に現れて、手当たり次第に焼き殺しているとか。パトカーが通報を受けて出動すると、現場には煙とともに血の固まった蛋白質の塊だけが散らばっているらしい。
カメラのセンサーには燃えるような赤い残像だけが映るそうで。」
「蛋白質の塊?」
アベルが眠そうな目を細めて呟いた。奇妙な言葉のせいか、今日目を覚まして今まで一粒の人工肉も胃袋に入れていないという悲しい事実が、いまさら腹時計を鳴らした。
「ああ。技術部の連中によると、高出力の極超短波で細胞を内側から調理したらしい。家で使う電子レンジあるじゃないか、あれだよ。」
アベルは顔をしかめた。でなくてもエネルギー消費が激しくて熱効率も最悪な極超短波を、人間の体に照射して殺害する。たった数グラムの22口径鉛弾なら、ずっと安くきれいに命を止めることができるのに——。司法機関のフォレンジックを逃れるための目くらましだろうか。
人間の残酷さはときとして、機械の合理的な効率性を超えて奇怪になることがあった。
「食欲が失せた。」
人間の体が電子レンジの中の冷凍ピザのように膨れ上がって破裂した惨状を想像したアベルは、首を振った。人間はときに余計な想像力が豊かすぎて困った。
「とにかくあの幽霊のせいで、署長からラインの幹部まで全員パニックボタンが押された状態だよ。おかげで俺たち末端が実績のプレッシャーにさらされながら、不法居住者を掘り起こして回ってる最中だ。」
「あら怖い。じゃあ不法入国者の私も警察のお世話になりますか、警官さん?」
「いやあ、安値で義体を触ってくれるありがたい縁の下の市民を誰が連行するんだ。凶悪犯罪さえなければ俺たちはいつでも歓迎だよ。後で警察署の装備が老朽化したら出張でも一度来てくれよ。」
冗談を言い合いながらくすくす笑っている間に、モニターの上に診断数値が完了したというオレンジ色の通知が出た。
結果は予想通り雑然としていた。警官の右腕は軽く防弾装甲板を足しただけの生体肉片だったが、左半身は丸ごと機械軸に改造されていた。
一方、脚は重心を合わせるためにイカロス社の旧型下半身義体を不法に移植した状態だった。任務遂行中の緊急突入や回避のために、出力を無理やり引き出す構造だった。
「姿勢制御システムのコードが完全に狂っている。脚はイカロス2世代だよな?しかも防火壁を強制的に剥ぎ取ったコピー版だし。」
「巡査の給料では正規ライセンス費用を賄えないから……」
公務員の情けない言い訳に、アベルは黙ってため息をついた。根本的な原因をたどれば、資本が不足して人間の体を鉄くずの屋台にしてしまった都市の構造が問題なのだろう。
「一旦椅子から立ち上がってみて。たぶん手のオルフェウス発射機だけじゃなく、他の銃を使う時も同じような問題があるはずだから……」
「もう終わったのか?他の内部回路は見てくれないの?」
「欠陥はいつも最も正直な場所で壊れるものだから、一つずつやろうよ。」
言葉を遮ったアベルは、作業台の上の工具箱を横に押しのけながら警官が動く空間を確保した。
「照準反応がずれるのは、左腕のオルフェウス銃口を展開しながら上半身が前に傾く時だろう。こんな感じで?」
アベルが床を転がっていた鉄のダンベルを持ち上げながら、射撃姿勢を真似た。




