表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/47

2. 蝶(ちょう)と自由(じゆう) (9)

ちょう自由じゆう (9)


〔アサルトスーツ強制起動きょうせいきどう。〕


 視野しや出力しゅつりょくされるメッセージ。


 リミッターによって作動停止さどうていししていた外部がいぶ義体ぎたい


 それが、強制的きょうせいてき活性化かっせいかされた。


「おい!じっとしていろ!これ以上いじょううごいたら……」


 地面じめんをしっかりみしめる有栖ありすあら。


 重心じゅうしんうしあしから前足まえあしへ——。


 完全かんぜん運動うんどうエネルギーをかし、うでばした。


 一瞬いっしゅん出来事できごと


 有栖ありすあらの左腕ひだりうでが、まともにえないほどの速度そくどされた。


限界起動げんかいきどう攻撃こうげき。』

〔メキボキッ……〕


 粉砕ふんさいされる鉄筋てっきんコンクリートのかべ


 くだった一部いちぶのコンクリートは、破片はへんとなって反対側はんたいがわかべへとぶ。


 内部ないぶ鉄筋てっきんは、有栖ありすあらがいた方向ほうこうとは反対はんたいへ——ひしゃげるようにがった。


 そこにいたのは、おおきなあな


 有栖ありすあらの胴体どうたいが、十分じゅうぶん通過つうかしてあまるほどの大穴おおあなだった。


 すこいたむのか、左腕ひだりうでをぶらぶらと有栖ありすあら。


 彼女かのじょは、ぽっかりといたそのあなからそとへとた。


「ふむ。まだよるね。」


 そとると同時どうじ復旧ふっきゅうするDNI。


 時間じかん午前ごぜん132ぷん


 当然とうぜんながら、真夜中まよなかだった。


 それでも、有栖ありすあらは満足まんぞくしていた。


 トラウマによる発作ほっさこさず、そとられたからだ。


 おおきくいきむ。


 公害こうがいちたアスフォデルの空気くうきを、むねいっぱいに。


 つつ静寂せいじゃく


 さびれかけた商店街しょうてんがいがあり、周辺しゅうへん大部分だいぶぶん倉庫そうこちか場所ばしょだった。


 どこを見渡みわたしても、住宅街じゅうたくがいのようにはえない。


 この路地ろじにいるひとは、だれもいないだろう。


 つまり——うごくものがえれば、てきだとかんがえてもつかえない。


「……有栖ありすあら?」


 路地ろじがりかど——こちらをつめる人影ひとかげ


 じゅう覆面ふくめんふくめ、完全武装かんぜんぶそうをした状態じょうたい


 かろうじて、その形体けいたいだけがれた。


「アベル?ここへはどうやって……」

「ぷはっ。」


 黒色くろいろ覆面ふくめんぎ、じゅうろすアベル。


 有栖ありすあらは状況じょうきょう理解りかいできず、みずからのほおをつねってみた。


『ちょっといたくないかも?』


 なぜ、アベルがここにいるのか。


 どうやってったというのか。


 それに——戦闘せんとうさずにさがしにるほど、ふかなかだっただろうか。


怪我けがはしてないか?突然とつぜんしていってすごおどろいたんだが。は……おまえのじゃないんだな?」

「え?わたししていったって?」


 誘拐ゆうかいではなく、みずかしていったらしい有栖ありすあら。


 どんなはなしをどうしたから、彼女かのじょしていったのだろうか。


腕枕うでまくらをしてくれとうからしてやったら、ねむりにつくころ突然とつぜんがって地下室ちかしつってからすぐそとていったじゃないか?どこにくのかってくれというおれ言葉ことば無視むしして。」

わたしが?」

「ああ。おまえが。」


 おかしいというように、くびかしげるアベル。


 脇腹わきばら拳銃けんじゅうホルダーのボタンを、しずかにはずした。


 ——本当ほんとう有栖ありすあらで間違まちがいないのか。


 そんな疑念ぎねんが、かれなかはじめていた。


「あ、ごめんね。わたしめたのは記憶修正士きおくしゅうせいしだったの。今日きょう依頼いらいしようとしていたんだけど、わたしたちがいえかえっちゃったからすごくイライラしたみたい。どんな方法ほうほう使つかったのかからないけど、がついたらここだったの。」

記憶きおくされたのか?」

「うん。わたし最後さいご記憶きおくはラジオをきながらデッカードにおやすみとったことだったから。」


 曖昧あいまい記憶きおくいやなのか、かおしかめる有栖ありすあら。


 アベルはとりあえずじゅう仕舞しまい、ふたた周辺しゅうへん警戒けいかいした。


「ひとまずいえかえろう。いまおそすぎるし、てきがどんなわな仕掛しかけているかもからない。」

「ふむ。わたし外部がいぶ義体ぎたい作動さどうするんだけど。」

「ん?」

大抵たいていわなならわたし一人ひとり処理しょりできるとおもうよ。それに……」


 ちかくに駐車ちゅうしゃしておいたトラックへ——。


 もどろうとしたアベルだったが、有栖ありすあらはくびった。


わるいけど今回こんかいけんけられないとおもう。」

「どういうことだ?」

「このひと絶対ぜったいころしたいんだけど。」


 照準装置しょうじゅんそうちからはなし、有栖ありすあらをつめるアベル。


 四方しほう警戒中けいかいちゅうには、けっしてしてはいけない行動こうどう


 だが、そんなことにしないほど——かれすごおどろいていた。


かえるなら一人ひとりかえって。わたし処理しょりしてかえるから。」


 有栖ありすあらのこえは、普段ふだんとあまりわらない。


 高低こうていおなじで、抑揚よくようたようなもの。


 さらに、その表情ひょうじょう——。


 アベルになにかをたずねるときや、提案ていあんするときおなじだった。


 いかっているとるには、あまりにもいた様子ようす


 かとって平常時へいじょうじだとうには、はっする言葉ことば過激かげきすぎた。


なにがあったんだ?まあ穏健おんけんはなうつもりなら監禁かんきんはしなかっただろうが……」


 とにかく、有栖ありすあらが心配しんぱいになるアベル。


 外傷がいしょうはなくても、なにをされたかからないからだ。


 なにより、有栖ありすあらのうであかまっていた。


 いままさに——何人なんにんかをつぶってきたかのように。


「ただ、部屋へやなかいていただけよ。しろかったわ。」


 ふか溜息ためいきくアベル。


 有栖ありすあらにとっては、それだけでも最悪さいあく気分きぶんだったはずだ。


わたしはそのしろ部屋へや一番いちばんこわい。』


 以前いぜん、そんな悪夢あくむたとっていたから。


 もちろん、ころ理由りゆうにしてはすこかるもするが。


「ふむ……」


 すこなやみ、ふたた銃口じゅうこうげるアベル。


「それならおれ手伝てつだうよ。」

「え?」

記憶修正士きおくしゅうせいしふたたおなことをして記憶きおくばしてしまうかもしれないし。作業場さぎょうば機械きかいたちがすでにハッキングされていることもありる。」


 アベルをつめ、しずかにくびかしげる有栖ありすあら。


「でもここへはどうやってたの?」

上手うまく。」


 適当てきとうにごし、眼鏡めがねなおすアベル。


 かれは、有栖ありすあらが使つかっていた手斧ておのわたした。


 すこうたがわしい表情ひょうじょうかべる有栖ありすあら。


 それでも手斧ておのり、虚空こくう一度いちどるってみせた。


「あの……」


 うえからこえてくるはなごえ


 アベルは素早すばや銃口じゅうこうけ、対象たいしょうねらった。


 ガラスまどからかおしていた人物じんぶつ


 銃口じゅうこうけられると、すぐになかへとかくれてしまった。


たないで!わたしはクルックスよ!」


 路地ろじひびく、悲鳴ひめいちかこえ


 周辺しゅうへんひく建物たてものばかり。


 ひとこえ程度ていどでも、じつによくひびわたった。


だれだ?てこい。」

「わ、わたしはただ依頼いらいをしたかっただけなの!わたし監視役かんしやくもそこにいるおんな全員ぜんいんころしたのよ!わたし戦闘能力せんとうのうりょくはないわ!」

かったからそとてこい。」

ころさないで!」

てこいとっているんだ。」

とく攻撃こうげきするはなかったのに……」

まった口数くちかずおおおんなだな。クルックスとったか?』


 かおしかめるアベル。


 閃光手榴弾せんこうしゅりゅうだんのピンをく。


 そして、をしっかりとにぎりしめた。


〔チン〕


 投擲とうてき準備じゅんび完了かんりょう


 かれしずかに、はなした。


かったからてこい!」

「い、いやよ。ていったらつじゃない!」


 すこくびかたむけ、合図あいずおくるアベル。


 たいして有栖ありすあらは、溜息ためいきいてからうなずいた。


「ああ、そうか。絶対ぜったいにそこにいろよ。」

〔ドーン!〕


 部屋へやなか炸裂さくれつする閃光弾せんこうだん


 はなたれる凄まじい爆音ばくおん閃光せんこう


 ガラスまどがガタガタとふるえるほどの威力いりょくだった。


「うあああ!わたしが!」


 さえ、部屋へやなかころまわてき


 そのすきに、ビルまえ街灯がいとうのぼるアベル。


 かれはすぐさま、2かいいたまどへとんだ。


 距離きょり維持いじしたまま拳銃けんじゅうし——てきねらう。


わたしのめええ……が……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ