2. ガラクタ機械(きかい)の存在価値(そんざいかち) (12)
ガラクタ機械の存在価値 (12)
「いやあ、本当に見つけられたんですね。」
大きなワゴン車から降りたアルファ。
アベルはロボットが横たわる荷車を引き出しながら頷いた。
ロボットの頭には、赤い仮髪が被せてあった。
「あ。金額は今振り込んでいただければ?」
「その言葉をいつ言うかと思っていましたよ。荷車を受け取るまでお金の話を出さなかったら、爆弾に火をつけるつもりでしたけどね。」
「まさか、冗談でしょう……」
アルファが笑いながら軽くいなそうとする。
だが、アベルは本当に荷車の底に手を入れた。
そして取り出されたのは——爆弾。
アベルの胴体の半分ほどの大きさの爆弾が、起爆管ごと持ち上げられていた。
「では楽しい精算の時間にしましょうか?」
再び営業用の笑顔をまとったアベル。
彼はアルファを見つめた。
アルファは背中を伝う冷や汗を隠そうとする。
そしてアベルに合わせるように、引きつった笑みを浮かべた。
「お約束いただいた金額に、少々(しょうしょう)追加分が発生しそうですね。無力化は基本的に要員の皆さんが担当されると言っていたのに、結果的にロボットの追跡から制圧まですべてわたしたちがやることになりましたから。」
アベルは荷車をアルファの手に押し付けた。
アルファは想定外の状況に硬い笑みを浮かべている。
かろうじて、彼は頷いた。
「どれほど……」
「いえ、わたしも職場で働いた経験はあります。予算というものが決まっているのはわかっていますから、無理な金額は要求しません。いくつか質問をするだけです。」
「どのような質問ですか?」
アルファはやや防御的な姿勢でアベルを見た。
アベルは携帯電話を操作し、録画の無力化を試みる。
しかし、アルファは何の反応も示さなかった。
——まあ、無理もない。
こんな場面は企業の立場からしても問題になる。
何としても隠さなければならないだろう。
「強人工知能をロボットに搭載してはならないという倫理準則があると認識していますが、どうやって搭載したんですか?」
「このロボットに搭載されているのは強人工知能ではありません。」
アルファは荷車の中に横たわるロボットを指した。
その言葉がアベルの神経に障ったのだろうか。
彼の営業用の笑顔が、すっと消えた。
「それなら追加金額をいただきましょう。全報酬の50%なら妥当な線ではないですか?」
「いや、それはどういう……」
「さもなければ、この都市での作戦は二度と夢にも見ないでください。」
アベルはアルファを見つめる。
これ以上の交渉は受け付けない——そう言わんばかりに、表情を引き締めた。
「はあ。そうですね。強人工知能の搭載は違法です。しかし法律を迂回する方法があります。」
「具体的にはどんな方法ですか?」
「わかりません。それは別の会社の役割ですから。」
アベルは小さく頷いた。
法律を回避した強人工知能を作ったのはプラトン社。
ジェネラル・テクニカではないのだ。
営業機密である以上、彼らが知らない可能性もある。
それに、このロボットは最初から外部に公開される予定がなかった。
強人工知能を搭載しても、誰かが取り締まる方法はなかっただろう。
——こうして脱走さえしなければ。
「そうですか。少なくとも質問できる状況にはなったようですね。では次の質問です。
もともとこのロボットが移送されていたルートは、この都市からかなり遠いです。そしてこの赤い仮髪……この都市にいる『赤髪の幽霊』は、このアンドロイドではないですか?」
「まったく違います。この仮髪はわたしどもも初めて見るものです。」
「ロボットがここに到着した推定日はいつですか?」
「会社の機密ですのでお答えできません。今アベルさんが企業の移動ルートを知っているだけでも、かなり一線を越えています。」
アベルはもう少し押し進めようかと思った。
だが、少し間を置いて頷く。
「そうですね。わたしも命は惜しいので。
コンソーシアムの構成会社リストはどうなっていますか?」
「非公開コンソーシアムですのでわかりません。ただロボットに搭載された部品とソフトウェアから推測するだけです。」
「え? ということは、その製品を組み込んでいるのが別の会社という可能性もあるんですか?」
「そうです。自社製品を搭載しない可能性もあります。」
アルファの言葉に、アベルはわずかに眉をひそめる。
もちろん当然ながら、部品リストは出せるだけ出した。
しかし、当該会社が必ずしも自社の部品を使うとは限らない。
そういうことか。
この点はアベルも盲点を突かれ、言葉を失ってしまった。
「では失礼します。他に連絡事項があれば……」
荷車をトランクに積み込んだアルファ。
もう十分ではないか——。
そう言わんばかりに、彼は会話を打ち切ろうとした。
「最後にひとつだけ。コンソーシアムに参加したオルフェウス社について、何かご存じでしたら教えてください。」
「コンソーシアムに参加していたという保証はないのでは? あの腕はオルフェウスの製品ではありませんし……」
「いいえ。参加していたはずです。」
アベルは静かにアルファを見つめるだけだった。
根拠はある。
だが、わざわざ口に出すつもりはない——そういう意味だった。
「ロボットが使っていた武器は……」
そこまで言うと、アルファは手を上げて制した。
わかった、とでも言わんばかりの態度。
アベルの予想通りだった。
これが彼らの逆鱗だったのだ。
「オルフェウスはこのコンソーシアムに最初から入っていました。その会社が持っていたいくつかの案件のようなのですが、戦闘的で攻撃的な装備を多く生み出す会社でしょう。もともとコンソーシアムの原案は『オルフェウスが開発した一体型武器を搭載するアンドロイドの開発』でした。」
アベルが武器について話そうとする。
するとアルファは顔をしかめた。
怒っているのだとあからさまに示しながら、そう言った。
「オルフェウスが武器を決めて、他の会社が補助する形だったと?」
「そうです。ジェネラル・テクニカもその過程で声をかけられました。」
アベルは純粋に驚いた。
自尊心が高いことで知られる企業たち。
彼らが、オルフェウスという同業他社に頭を下げてコンソーシアムに参加したというのか?
「……金があるんですね。」
「そうですね。」
アルファはため息をついてエンジンをかけた。
「そのまま帰るつもりのようだが……あなた、役員なのに今回が初めての戦闘だったでしょう?」
エンジンをかけるのも忘れ、アルファはアベルを振り返った。
顔をしかめたまま、彼を睨みつける。
その表情には、屈辱感すら漂っていた。
「オルフェウス。それに関する情報をすべて渡してください。さもなければ、わたしもこの情報を他の情報屋や仲介人たちに売り渡します。」
この人物が要員ではないことは、すでにバレている。
だからこそ、ジェネラル・テクニカのある役員は——。
一度も戦闘を経験しないほど、戦闘に不慣れだという噂が広まるだろう。
結果、役員級への攻撃がより激しくなる可能性がある。
これだけでも、企業の株価は下落するはずだった。




