第2話・説明を聞くだけが授業ではありません~頭を使うには栄養が必要です~
皇宮呪師学校の座学では、一単元ごとに、説明に使われたのと同じ時間の小休止がある。
「……では、アイン。今の単元に関して、知識を定着させるための時間を取ります」
「……は、はい……」
ふわりと微笑む担当教師である皇宮呪師学校の校長、ディオネラ=アムスに言われて、こくりと頷いたアインは教科書を閉じ、一旦脇へと避けた。
この時間は、今、教えて貰ったことをきちんと覚えられたかを確認する前の、重要な知識の定着のための時間。
……と、言ってアインに休息を取らせていた。
(……こんな幼い子供では、集中力も限られますし、疲労の蓄積も早いでしょう……本当は少し、眠らせたいくらいなのですが……)
そっと、内心で溜め息を吐いたのは、最初にそれをさせた結果、アインが酷く狼狽して、むしろ心理的な負担を増やしてしまったから。
まさか幼児が、お昼寝したことで罪悪感を募らせるだなどと思いもしなかった。
(……ペンティス呪師長はできるだけ早く、と仰いますが、いくら何でも休憩もなしで詰め込むことなどありえません……)
皇宮呪師長であるキプラ=ペンティスからは、「神官呪師学校での進み具合との兼ね合いもあるから。」と、できるだけ早く授業を進めるように言われている。
しかしである。
実際に子を持つ母でもあるディオネラからすれば、効率よく学習を進めるためにも休憩は必須。
いや、本来であれば、まだこんな、学校の授業を受けさせる年齢ではないのだから、そもそもの前提がおかしいのではあるが……
(……アインの様子を見るに、神官呪師学校では休憩もなしに詰め込まれているようですし……)
神官呪師学校で座学を担当している筈の校長の意図が全く分からない。
ただ、神官呪師学校側での座学に、後から始まった皇宮呪師側の授業が追い付くどころか若干追い越しがちになっているのが休憩を削らせているのではないか? という懸念もある。
「……では、アイン……まずは、お茶を飲み、甘みを体に入れなさい。集中力を高め、知識を記憶に定着させるためには、充分な栄養が必要です」
「……はい……」
香り高い紅茶には、たっぷりのミルクを入れて。
お茶請けには、甘い野菜を使った菓子を添える。
幼児の体に負担にならないよう、お茶は薄めで、砂糖も控えめ。
栄養のバランスも考えられた菓子は、好き嫌いのある子どもでも、喜んで口にするようなふんわりとした蒸しケーキ。
「……おいしい、です……」
「そう、よかった……必要な栄養です。きちんと食して下さいね」
「……はい……」
遠慮がちに、ほんの僅かに頬を緩めたアインに、微笑みかけてディオネラが言えば、アインはこっくりと、慎重に頷いた。
第2話をお読みいただきありがとうございます。
今回は、ディオネラによる「知識の定着」という名の、アインに寄り添うおやつタイムです。
早く授業を進めさせようとする周囲の要求のなか、ディオネラはアインに少しでも栄養と安らぎを与えようと、細やかな工夫を凝らしたお菓子を差し出します。
幼児に必要な休息とおやつの常識をちゃんと言葉にしてアインを包み込むディオネラと、それに応えるアインの小さなやり取り。
たっぷりのミルクを入れた紅茶とふんわりとした蒸しケーキを前に、ほんのわずかに頬を緩めるアインのいじらしい姿が愛らしいですね。
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




