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第二百二十一話 ミーア姫、事前に釘を刺しておく!

「聖ミーア学園に倣う……」

「さようでございます。せっかく、すぐそばに手本とできる方がいらっしゃるのですから、積極的に学ぶと良いでしょう」

 まるで、オウラニアの手先のようなことを言い出すシャローク。つられてこちらに、熱心な視線を送ってくるクラリッサに、ミーアはちょっぴり顔を青くする。

 最悪、自分に師事するのは良いとしても、レムノ王国に不必要な金色のキラキラが伝播していくような……嫌なヴィジョンが見えてしまったからだ。

「クラリッサお……うじょ殿下……。その、そう大したことではないように思いますわ」

 ミーアは、あえて軽い口調で言った。

「シャローク殿の言ったとおり、わたくしたち国の上に立つ者には、国をどのような形にしていくかというヴィジョンが必要になるというだけのことであって……」

 それは、ミーアも認めるところである。というか、しっかり言明しておかなければいけないことだった。

 なにしろ、クラリッサは、なんというか……ちょっぴり武人的な考え方をする人だ。

 言葉を選ばずに言えば乱暴な物の考え方というか……困ったら、剣をもって説得に当たるような……そんな姿勢が、ちょくちょく見え隠れする人なのだ。

 だから、下手をすると『女性を虐げるレムノの腐った風習をぶっ壊せ!』とかなんとか言い出すかもしれない。それは、ある意味で革命と変わりはないわけで……。

 確かに、クソッたれな初代皇帝が作った盟約とか、ぶっ壊さざるを得ないものも、世の中にはあるかもしれないが……。できれば穏便に、じんわりと、良くないところをちょっとずーつ変えていってもらいたいミーアである。

 それに、蛇のこともある。シャロークの言った通り、ある秩序を取り去った後、別の秩序へ移行できないならば、そこには混沌が生じる。

 混沌をこよなく愛する、あの迷惑者たちに、クラリッサが利用される恐れもあるのだ。ここは、しっかりと押さえておくべきだろう。

「聖ミーア学園の場合には、国内の有用な人材の国外流出を防ぐこと、そして、小麦の研究の推進の二点が、はじまりの目的でしたわ」

 それは嘘ではない。セロ・ルドルフォンという小麦研究における優秀な人材を逃がさないように、というのが、あの学園の原点なのだ。

「国の将来像という切り口で考えるならば、有用な次世代の文官を国内に留めて、より強固になった国家体制を確立すること、並びに、国内で安定した小麦粉を生産できるようにし、より信頼性を増した流通体制を確立すること、みたいな言い方になりますかしら……」

 とりあえず、それっぽいことを言っておく。

 帝国の展示会場を見て、万に一つも誤解しないように、しっかりきっちりと、言っておく!

 明確に「ミーア姫殿下の黄金グッズを大量生産できる強固な生産体制を確立するための学園」じゃないよ? ということは言っておかなければならないのだ。

 あれは、あくまでも暴走の結果なのだ、ときちんと言っておかなければならないのだ!

 だから、さすがにあれを見たとしても、シャロークは感心したりもしなければ、商機を見出したりもしないのだということもわからせてやらなければならない。

 あんなものに、商機を見出す大商人シャロークではない。そのはずだ……たぶん……きっと……そう……だと、いいな?

「レムノ王国の女学園も同じですわ。一歩考えを進めてあげるだけのこと。それを作ることで、考えられる女性たち、自由を得たご令嬢たちに、その自由を用いてどのような役割を負っていってもらいたいのか? レムノ王国をどのように良い方向へと導いていくのか……将来のレムノ王国の形を、どう夢見るのか……。クラリッサ姫殿下の抱く将来像が重要になってくると思いますわ」

「レムノ王国を、どう導いていくのか……」

 ふと、クラリッサの顔に、出会ったばかりの頃の、不安げな色が浮かぶ。その瞳が助けを求めるように、アベルのほうに向くが……アベルは小さく首を振った。

「これは、クラリッサお姉さまが考えなければいけないことだから」

 そうなのだ……。これは、アベルにはどうにもできないこと。王子であるアベルが、男であるアベルが、考えを押し付けたという形に受け取られないためだ。

 あくまでも、レムノ王国の女性が……その代表者が考えなければならないことなのだ。

 共に学園を作り上げていくロタリアも、ミーアですらも口出しできないことだ。

 レムノ王国の王女だけが抱くことができる、レムノ王国の女性たちの将来像である。クラリッサ以外に、もしも、それができる者がいるとすれば……。

 ――ヴァレンティナお義姉さまが、ここにいなくって良かったですわ……。もしいたら、過激なことを言い出しそうですし……。

 蛇の巫女姫ヴァレンティナ。姿を隠している彼女の動向が、ふと気になるミーアであった。

 それはさておき、ミーアは唸る。

 ――これ、もしかすると、ベルに未来のレムノ王国がどうなってるのか、聞いておいたほうが良いかもしれませんわね……。教えてくれるかわかりませんけど……でも、あの子、割とチョロいところあるから、うっかり口を滑らせるかも……。

 孫娘の扱いに大いに自信があるミーアである。

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― 新着の感想 ―
ミーアグッズたぶん出したら余裕で売れちゃうから商人目線で見た場合アリなんですよねぇ困ったことに…
困ったら剣を持って……まぁその…レムノは武門の国でありまして多少は…その…… ヴァレンティナ:『今、呼ばれた気が』
あくまでも、レムノ王国の女性が……その代表者が考えなければならないことなのだ。  共に学園を作り上げていくロタリアも、ミーアですらも口出しできないことだ。  レムノ王国の王女だけが抱くことができる、レ…
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