表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1616/1625

第二百十七話 ソワソワする乙女心

 さて、試食会での大役(来た人が食べたくなっちゃうぐらい、美味しそうに食べるという任務)を見事果たし、その後、ミーアはアベルと共に祭り会場を練り歩くことになった。

 試食会によって、そのお腹が八分目と言ったところなので、甘いデザートの出店があれば、それをゲットし、食べ歩きデートと洒落込もうという算段だ!

 ――歩いて運動しながら、食べるわけですし、むしろ、先ほど食べたカニ鍋の分も消化できてしまうかもしれませんわね。

 そんな(カニの)(から)算用なのだ!

「ふふふ、楽しいお祭りデートですわね。嬉しいですわ」

 ニッコニコ微笑みつつ、隣に目を向ければアベルが優しい笑みを浮かべていた。

「君は、このところ、ずいぶんと忙しくしていたからね。今日は存分に気晴らしに付き合うよ」

 それから、アベルは芝居がかった仕草で、

「では、姫君、美しいお手をどうぞ」

 っと、ミーアの手を取った。実にスマートなエスコートである。

「まっ! アベル、実に手慣れておりますわね。何人の女性をお相手に練習したのかしら?」

 冗談めかしてそう問えば、アベルは大げさな様子で目を剥いて、

「それは心外。我が忠誠は、愛しき姫君にのみ向かうものでございます」

 そうして、深々と頭を下げる。チラ、っと上目づかいで見つめてくるアベルと目が合い……、顔を見合わせて笑い合う。

 ちょっぴり離れたところで、ベルが、ふぉおおおっ! っと拳を握りしめているのであるが、まぁ、それはさておき……。そして、当然のことながら、ベルのそばにはアンヌとシュトリナ、さらに護衛としてディオンと何人かの近衛も見ているわけだが……。

 そんな面々の前で、なんとも言えぬイチャイチャを楽しんでから、ミーアとアベルは歩き出した。

 ソワソワ……アベルの顔を見つつ、その精悍な横顔に、ほわぁっとなりつつ……。ちょっぴりウキウキ。足取り軽く歩くミーア。

 気持ちが通じ合っていれば、言葉などいらない。なぁんて、恋愛小説の一文が頭に浮かぶが、ミーアは思う。

 ――だけど、お話しするのだって、楽しいですわ!

 っということで、ミーアは早速、口を開く。

「アベルはどこか行きたいところはございますの?」

「ん? そうだね。いろいろ興味はあるけど、とりあえず、一通りは回りたいかな」

 それから、ふと思いついたという顔で、

「そういえば、帝国の展示会場はすごかったな……特に、あのお土産売り場は圧巻だった」

 ミーア、その言葉に、うぐっと呻く。

 できれば、あのトンデモネェ金色空間は、見られたくなかったミーアであるが、アベルの顔からはマイナスの感情は見られない。引くような様子もなければ、馬鹿にする様子もない。憐れむような様子もない。ただただ、純粋な笑みを浮かべて……。

「君が民に慕われていることがよくわかったよ」

 そんな彼の様子に、ホッとするのと同時に、ふと思う。

 ――いえ、でも、あれを自然と受け入れられてしまうのも、それはそれで……複雑なものがございますわね。

 ミーアの複雑な乙女心(?)なのである。

「それはそれとして、レムノ王国の展示会場はいかがですの?」

「正直、そこまでではないかな。一応、王国と王家の歴史を取りまとめたものと、伝統料理の情報をいくつか出しているけど、やっぱりメインではないしね」

 メインではない。そうなのだ。

 クラリッサ王女が一番力を入れているものこそ、レムノ王国女学園構想なのだ。

 世界会議にやってくる宰相ダサエフ・ドノヴァンの支持を取り付け、レムノ王国の貴族令嬢に向けた教育機関を作ること……。それこそがレムノ王国の前進だと、彼女は見定めているのだ。

 ――その前に、シャロークさんとお会いして、金銭的な条件を整えたいところですわね。今日の内に捕まえて、お話を通してしまおうかしら……。

「こっちは盛況みたいだね」

 不意に言われて、顔を上げる。っと、アベルの視線の先にはペルージャン農業国の展示会場があった。

 商人ばかりでなく、護衛を連れた貴族も集っているからだろう。会場はかなり込み合っていた。

 ソワソワ……一瞬、自分が食べる分のスイーツがなくなってしまうのでは? っと不安になってしまうミーアであったが……。

「あっ、ミーアさま、こっち! こっちです」

 手を振る令嬢たちの姿があった。

 一足先に試食会会場から戻っていたラーニャとクロエだった。彼女たちは、ペルージャン農業国の展示スペースの中にあるミーアネットの展示を担当していた。

「ご機嫌麗しゅう、ミーア姫殿下。お越しいただきありがとうございます」

 ちょこん、とスカートを持ち上げるラーニャに、ミーアも礼を返す。

「大盛況ですわね。ペルージャンの展示会場は」

「はい。ミーア二号小麦を呼び水にして、たくさんの方が来てくださっています。ペルージャンの農作物をアピールして、良い契約を結べれば良いのですけど……」

 帝国の属国扱いを脱するべく、魅力的な農作物の育成に積極的なペルージャンである。そのアピールの場として、このパライナ祭を生かそうというのだろう。

「あ、もちろん、ミーア姫殿下の飢える者のいない世界というお考えを軽視して、自国のことを優先しているのではなく……」

 ちょっぴり慌てるラーニャに、ミーアは笑みを浮かべつつ、首を振り、

「無論、わかっておりますわ」

 参加する国々には、もちろん、思惑があるだろう。

 ミーアとしては、自分たちの方針に反対するものでない限り、余力でどんなことをしていても、細かいことは言わない。

「それに、わたくしもペルージャン産の果物には興味がございますわ。今日も、実食できるのかしら?」

 ラーニャとのお友だち特権を用いて、スイーツの確保に乗り出したミーアなのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ペルージャンの展示は美味しそうなものが多そうですから楽しみですねw 流石のミーア姫もアベル王子の前では、多少は食べる量を加減してくれるでしょうし、 アンヌも安心でしょうね。
>ベルが、ふぉおおおっ! っと拳を握りしめているのである ベルが楽しそうでなによりw 再び過去に来た意味探しのことを少しでも覚えているのでしょうかw >君が民に慕われていることがよくわかったよ …
「大盛況ですわね。ペルージャンの展示会場は」 「はい。ミーア二号小麦を呼び水にして、たくさんの方が来てくださっています。ペルージャンの農作物をアピールして、良い契約を結べれば良いのですけど……」  帝…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ