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第百九十三話 深海獣⇔真怪獣?

 さて……。

 パライナ祭が始まる前に、ミーアにはどうしてもチェックしておかなければならないことがあったのだ。

 それはもちろん、ホースダンスデュオのための楽団の状態! ではなく、特別初等部の声の調子! でもなく……海産物研究所の発見した深海の恐ろしくも美味しいシンカイジュウ珍味! ……でさえなく!

 言うまでもなく、ティアムーン帝国の展示会場(パビリオン)の様子である。放っておくと、にょきにょきにょっきと黄金ミーア像が生えてきそうな場所なのだ。心配するのも当然のことである。

「先に現地入りしている聖ミーア学園の面々が準備しているとのことでしたけど……実に不安ですわ」

 ちなみに、特別初等部の子どもたちもミーアたちに先んじて現地入りし、準備に参加している。

 セントノエルで常識を鍛えられた子どもたちである。

 聡明な祖母パティやしっかり者のヤナもいる。ミーアに染まらず、懐疑的な視線を向けていたカロンやミニクソメガネこと賢いローロもいる。

 さすがに、展示会前にでっかい黄金像を建てているようなことはない! とは思いたいのだが……。

「見たところ、遠くから見えるほどの黄金像は立っておりませんわね……今はまだ」

 未来永劫、安心だ! とは確信できないミーアである。

 そうして、そそくさと帝国の展示会場に向かうと……。

「あっ! ミーア姫殿下!」

 準備をしていた生徒たちが一斉にミーアのほうに視線を向けてきた。

「お疲れさま、みなさん。準備のほうはいかがかしら?」

 労うように、優しげな笑みを浮かべつつ、ミーアは手を挙げる。それから、さりげなく建物のほうに目を向けた。

 見たところ、建物自体は周りの展示会場と大差ない造りとなっている。幕屋が二十個ほど並べて建てられており、順路の番号が振られている。実に普通だ。

 建物がミーアの頭形をしていて、口から中に入っていく構造になっている、などという奇抜なこともなければ、壁にミーアのドデカイ肖像画が描かれているなどということもない。

 極めてシンプルで――否っ!!

 そこで、ミーア、発見する。

 一番手前の幕屋の前、ひっそりと、七色に輝く等身大のナニカが佇んでいることにっ!

「こっ、これ、は……」

 思わず歩み寄れば、ソレが見覚えのあるものであることに気付く。

 ルールー族から聖ミーア学園に寄贈された虹色ミーア像である。一角馬と戯れるミーアとかいう、ちょっと幻想的な感じのアレである。そう言えば、よくよく考えると、一角馬も馬と言えば馬なので、来場した騎馬王国の民が盛り上がってしまうかもしれないが……。天馬姫は,一角馬姫でもあったのか! などと言われてしまうかもしれないが!! まぁ、それはどうでもいいとして……。

 ともかく、アレと全く同じ物がそこに置いて――っ!? 否っ! 否っ!!

「こっ、これはっ!」

 ミーア、そこで気付いてしまう。それが、あの木像とは微妙に違っていることに……。

「この像……少しですけど、成長している?」

 微妙に背が伸び、顔も大人びている……ように見える。細かな年齢差まで読み取れてしまうほど、実に出来の良い像であった!

「はい。ただの模造品ではなく、今のミーア姫殿下のお姿を模した物を新たに作り、展示しています」

 ミーアの疑問に答えたのは、いつの間にやら近くにいたワグルだった。

「あら、ワグル、ご機嫌よう。お仕事、お疲れさまですわね」

「ご機嫌麗しゅう、ミーアさま。いらしていただけて嬉しいです!」

 屈託のない笑みを浮かべているワグル。しばらく見ないうちに、ちょっぴり大人びたワグルに、感慨を抱きつつも、ミーアは首を傾げた。

「それで? あの像を成長させた、と?」

「そうなんです。せっかく作るのであれば、現在のミーア姫殿下のお姿を模したものがいいだろう、とルールー族の職人が言い出しまして……ちなみに、この像の由来も、こちらに……」

 ワグルが指し示した先、像の足元にはプレートがつけられていた。

『ルールー族とベルマン子爵の和平約定締結を記念して。ミーア・ルーナ・ティアムーン皇女殿下の多大なる尽力に対する感謝を評するものとして、ルールー族より送られた像』

 っと、由来が書かれたうえに、その下には紛争の詳細と事の顛末、ミーアがいかに振る舞い、軍事力の緩和に勤め、両者を対話へと導いたかの説明が、淡々とした筆致で書かれている。

 ミーア自身ですら、なるほどー、こんなことがあったのかー、このミーアさんという人すごいわー、と感心してしまうような、実にわかりやすい説明文で、あの日、静海の森に起きた奇跡が書かれていた。

 ――ふむ、何の理由もなくわたくしが、少数部族に圧力をかけて像を造らせた、などと思われては一大事ですし。こういう配慮は大切ですわね。

 とりあえず、それらの説明書きには満足するミーアである。

「この一号館では、ルールー族や、新月地区でのミーア姫殿下の政策についてまとめられています。どうぞ、中もご覧になってください」

 ワグルに促され、一つ呼吸を整える。

 吸って、吐いて、吸って……止めると、えいやっ! っと気合を入れて、ミーアは展示会場に踏み込んだ。

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― 新着の感想 ―
ベルマンって伯爵になったんじゃないんでしたっけ? あれは未来の話だったっけ?
ミーア様のやってきたことを客観的に羅列すると偉業にしかならないんだよなぁ。ミーア様ですら認めざるを得ない。
新月地区における改革案と、ルールー族との和平政策は初期のミーア姫にとっては大英断でしたし、それを行うためにトップが現場に赴いたのは大事件でしたからね。 この二つの政策によって帝国破滅が大きく遠ざかった…
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