第四十九話 旅立ち
続きをどうぞ。
凄まじい斬撃を放ったところでアオトは古代水竜の胸部を貫通した。
その直後竜の目から輝きが失せていく。元の輝きは魔物特有の紫に緑を混ぜたようなものだった。だがその輝きは一瞬、一瞬色を変えていくように黒く濁っていき、最後にはその目を閉じた。
「流石アオトね」
「苦戦したけどな」
「この竜の魔物はSS級にも匹敵するわよ?」
「へえ、そんな奴を吸収できない俺って不運だな」
「普通は吸収する事もできないんだけど……」
SS級と言う単語が出て来たがこれは魔物の強さを示す階級でSS級まで存在していると言われている。太古からこの階級は変更されていないのでセリアとアオトで認識がずれているなんて事は無い。何故、アオトがこの階級を知っているかだが城にいたときに本を読みあさっていたのである程度の知識は付いてある。それでもやはり実際の体験には到底及ばないので付け焼き刃ではあるのだが。
「《収納》」
アイテムボックスを発動して古代水竜を収納する。
「それにしても怖いわねえ」
身震いをしたセリアが呟いた。
「何が?」
「このダンジョンよ。普通のダンジョンなんてたかが知れてるけど魔物だけど古代竜を作っちゃうのよ? 馬鹿げているにも程があるわ」
「そっか……ふーん。って、あれ? 古代竜ってこんなのじゃないのか?」
「確かにここの古代水竜も名称はそうだけど全然違うの。魔物ということで知識がまず下がっている。普通の魔物ならそうでもないでしょうが古代竜となるとどうしても知識に差がついてしまうわ。それにどうしてもレプリカだからステータスによる劣りも出てしまうの。伝説では本家の古代竜は人の言葉どころかどんな言葉でも理解してしまうと言われているのよ?」
「へえ、でなんでそんなにセリアが自慢げなんだ?」
不思議に思った事をすぐに話してしまうのはアオトの駄目な所だろうか。
セリアが自慢げなのは「私って物知りでしょう?」とでも伝えたかったからなのだろう。
「……別に良いでしょ」
このときセリアは実感した。「こいつは鈍感だ」と。そしてこういう自慢をしても反応が返ってこないと言う事に。
「ふーん。ま、そんな事で妙な詮索をする気はないし、そろそろ戻るか」
実を言うとピスの所を出て何度か戻る事はあったが最近はあまり戻れていない。
「普通のご飯も欲しいもんね」
セリアの本心の半分はこれだ。このところはダンジョンでの飯ばかりで竜の肉を只焼いて食べるだけの簡単な飯だ。簡単ながらも竜の肉は肉汁たっぷりで美味しかったがそれを数週間ずっととなると飽きてくるというものだ。
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「どうでしたか?」
「よー、ピス」
「ただいまー」
ピスの言葉はどうしても固い所があるのだがそれが癖になっているらしいので詳しい説明は割愛する。
「返答になっていないのですが」
アオトとセリアの軽いあいさつで自分の問いかけは無駄になったと心の中で悪態付くピス。だがそれを顔に出さないのは大人の対応だろうか。
「どうだったかって言われてもお前の事だから見てたんだろ」
「…………流石です。ええ、見ていました。このダンジョンのボスを倒されましたよね?」
「えっ、あれってボスだったの!?」
「強さからしたら無くない話だな」
驚くセリア。受け止めるアオト。その反応は全く違う。
「で、どうするのですか? ここの魔物では最早あなたに勝てるとは思いませんが」
「出るさ。地上でのんびりしながら他の六柱に行く。それで良いんだろ?」
「完璧です。私達の事情に巻き込まれ過ぎて自由にできないのはこちらとしても心を痛めますのでありがたい返答です」
深く頭を下げるピス。その行動一つ一つは綺麗と言える程整っていた。
「で、頼んでいたのは?」
「はい。大方の事が分かりました」
「意外だな。分からないかと思ったのに」
「頼まれた以上は果たします」
ピスに頼んでいたのは《霊召喚魔法》と《吸収魔法》についてだ。勿論、普通の人ならば話していなかっただろうが相手はピスだ。もしかして……という期待を込めて頼み込んだのだ。すると予想通りピスは頼みを受け入れた。
それはピスができる可能性があるからだ。
《世界図書》
ピスの持つスキルの一つ。六柱の皆が持っているらしいがその効果は世界中のありとあらゆる事柄を理解する事ができるように全てを本として収納されているスキルだ。その中にはスキルの分野もあり、スキルの効果なども知る事ができる。
《霊召喚魔法》でわかったのは多数あった。流石《世界図書》といったところだろうか。
《霊召喚魔法》は死んだ者の物ならばなんでも良いと言うものではなかった。
・呼び寄せる魂の主が完全に浄化していないこと。
・呼び寄せるにはその魂の主の魔力を一定数以上持っている物でなければならない。
・魂の主の力が弱かったとき、通信が微弱だったときに召喚が失敗に終わる可能性がある。
これらの注意点を守る必要があるようだ。意外に注意事項が多い気がするがようは強い力を持った奴がこの世に留まっていて、その者の魔力を多く持っている物でなければならない、ってことだ。
《吸収魔法》でわかったのは一つだけだった。《世界図書》でもわからないのは今迄に事例がない&有り得ない効果だからだろうか。それともこれしか無いからだろうか。
《吸収魔法》で気を付けるのはこれだ。
・吸収できるのは魔物と複製した霊だけである。
「結構制約があるんだな」
少しばかり残念そうに顔の表情を冷めたがそれは一瞬で別に良いかって顔に戻った。
「そうみたいです」
「でもそれでも凄いと思うよ」
本心から褒めているのだがどうしても苦笑いが混じるのはセリアがいけないのだろうか。
「そりゃそうだけど……天地ひっくり返しそうだな」
「「…………」」
無言を肯定ととることもできるだろう。
「なんか反応してくれ!」
だがその無言をアオトが否定する。自分で言っておいてなにを今更って感じだが自分を兵器と同じだと言われているようなものと例えると否定したい気持ちも分からなくもないかもしれない。
「「…………」」
「なんで黙ってんの?」
「何故と言われても」
「ねぇ」
「はあ、ねぇっじゃねえよ。それよりも行くぞ」
「もう行くの?」
呆れから一転、きょとんとした表情に変わる。
「ああ、飯も一応食ったしもういいだろ」
「それもそうね」
持ち物は全部アイテムボックスに入れてあるので準備は完了済みだ。今いるのはピスと最初に会った部屋。
「セリアさん」
「?」
「ごめんなさい」
深々と頭を下げるピス。
「え、ええっ!! 頭を上げてください!」
理由を考える暇無く、返答を余儀なくされる。
「本当にごめんなさい。私のダンジョンにこんな長い間監禁なんて……とても苦しかったと思います」
「良いんです。ピスは優しいし、それに私全然気にしてないからっ!」
「そう言ってくれると有り難いのですが本当にご迷惑をおかけしました」
また深く頭を下げるピス。それに対しては流石に軽く流す事ができずに普通に反応する事になった。
「……いいよ。許してあげる。こちらこそ謝ってくれて……ありがとう」
最後は握手を求めるセリアにピスも応じ、仲直りを果たした。
「ピス、これが転移陣か?」
アオトが言ったのは二人がいた場所から然程距離が無い同じ部屋にある光る床だった。
「ええ、それでこのダンジョンの地上まで行ける筈です」
「そっか。なんか名残惜しいけどまたな」
「ええ、またいつか」
「また来るね」
その言葉にはまた会える確証が三人ともあるような程、澄んだ笑顔で次の再会を誓う。
「さようなら」
「ああ」
「うん」
別れのあいさつが終わったのと同時にアオトとセリアが光る床を踏み、その瞬間光が部屋中を包み込む。
「そう言えば私は―――」
そのまま消えてしまったアオトとセリアの背を見たときに思い出したかのように言葉を紡ぐが届かない。
「本当の第一代目勇者です」
届く筈の無い声が一人の空間に悲しく虚しく響く。
「まあ、いいでしょう」
またいつか会えるのだから。
なんか最近納得のいくものが書けないんですよね。
まあ、なにはともあれこれにて第二章は終了です。次は幕間を入れようと思います。出すのは二つ。ピスのとレンのです。只、レンの状況についてはあまり触れる事ができないかもしれませんのでご了承ください。
コトノ達と再会までまだ話が空きますが来るべきときは徐々に近くなっていますのでご期待を。
三章でやっと外に出られるぜ!
感想、ご指摘お待ちしております。




