第三十四話 決心
アオトの昔話パート2です。そろそろ昔話も終わるかなあ。
といった感じで続きをどうぞ。
「……まだゲージ溜まんねえのかよ」
今はアオト達が異世界へと召喚される二日前の深夜。そんな中アオトは何をしているかと言うと……。
「このキャラは火力と素早さが高いかわりにゲージの回復が遅いんだよなあ」
ゲームである。アオトはコトノが家から無理矢理連れ出さない限り学校が終わると家に帰って部屋に籠る。そして籠ったら飯を食う時以外は朝まで絶対に出て来ない。
はっきり言ってゲーマーである。
何時からかアオトは外に出る事は自分の意志ではないような考えに変わり、ゲームに没頭した。あるゲームでは最強のソロプレイヤーとして名を轟かせていて、またあるゲームではランキングベスト3以内に確実に入る強者。
ゲームをしている者なら何らかの形で聞いた事があると言われているその名は―――
疾風。
MMORPGの分野において無類の才能を発揮する。世界のどのゲーマーもその名の前では迂闊に行動できないMMORPG最強の男。称号とは裏腹に群れるのを嫌い、一人で全てをこなそうとしている後ろ姿で孤高の疾風とかとも言われている。
コトノ以外の誰にも知られていないが、ゲーマーといった分野に属している者特有の浮いた感じからアオトは虐められている。勿論それだけではないが。
「さて、狩りの時間だ」
毎日学校とゲームで倒れてはいないが生活習慣が恐ろしい事になりそうだ。
「ゲージ後もうちょいか」
ぶつぶつ独り言を呟きながら両手に二つのスマホを持ち操っている。
「こっちのゲームは連続攻撃」
右手のスマホを操作してスキルを繰り出す。
「終わったか。じゃあこっちもゲージ溜まったし大型魔法でっと」
そう言って右手のスマホをベットの方へと置き、左手のスマホを先程の操作とはまた違った方法で操った。
「全滅か……。なんか今日やる気でないなあ」
左手のスマホの勝利したときのメロディが流れると左手で持っていたスマホもベットの方へと置いて天井を見た。
「……俺は何がしたいんだっけ」
正直に言ってアオトはこの世界に飽きていた。平凡でそんな平凡な世界を当たり前だと思い、自分より下の奴を見つけては見下す。吐き気が出そうな程うざい世界だった。何度か学校に行かずにのんびりと家で暮らそうと思った事もあった。
だがその度にコトノの心配な顔と悲しそうな顔がちらついた。そして学校に行った時にコトノの元気そうな顔と悲しそうな顔を見ると自分がコトノを傷つけてばかりだと言う事に胸を締め付けられた。
いっその事コトノの前から姿を消そうかと考えた事もあった。自分がいなければコトノが悲しむ事もないだろうと。だがそれは結局大失敗に終わった。アオトを迎えにきたコトノを無視して自分の部屋に籠った。コトノに申し訳ない事をしたという気持ちで心が満たされた。それと同時にその内自分のことなど忘れて楽しい日々を送ってくれるだろうという気持ちも沸き上がった。
でもアオトの母がアオトの部屋に入ってきたときに―――
「アオト、コトノちゃんが来てるわよ」
今までの自分がどれ程愚かでどれ程身勝手だったか思い知らされた。そしてこの日、改めて決心したんだ。
自分の気持ちに嘘を吐きたくないと。どうせ嘘を吐いても得など一つもないのだからと。
だがこれだけは変えることができなかった。虐めが終わるように自分で行動する事はできない。コトノを巻き込んでしまう可能性があるものは絶対にしない、と。
ん? シリアス下手?
また酷い事を……。
下手なのにそんな感じにするな?
何故かこうなったんです。悪意はない筈です(二重人格でなければ)。
次は……奈落にアオトが落ちる時ぐらいになる、筈!
ということで次回お楽しみに〜
感想、ご指摘お待ちしております。次の投稿は午後六時となります。




