第三十三話 虐め
今回はアオトが日本にいたときの話です。
……今更だって? そんな事ない……はずです。恐らく(笑)。
一応狂二話目です。前の話を見ていない方は前の話へ。それでは続きをどうぞ。
周りに靄のようなものがかかった世界。どこに何があるのかも分からない程の靄で隠された世界。
そんな中でアオトは漂っていた。自分がどこにいるかも分からない。唯、傷が自分にある事は分かる。それでも痛みは伴っていない。そんな時間が何よりの至福のときでここがどこなのかなどどうでも良くなっていた。
そんなとき程早く終わるもの。靄は自然と晴れていき、周りの風景が見えてくる。見えてきたのはアオト。
日本にいた頃のアオト。まだ平和の内に当てはまっていた頃のアオト。コトノが隣にいた頃のアオト。
何もかもが懐かしい光景だった。こんな光景を見れたのはレンとあった時以来だろうか。何処か自分を虚しく感じるところがありながらも夢の中でもう一度目を閉じた。この一時を存分に味わうために。
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「おはようアオト、元気?」
時は遡り、アオト達が召喚される三日前まで戻る。
「いつもその質問から話しかけてくるよな」
「だって体調が悪かったら心配だし……」
「そっか、心配してくれてサンキューな」
「うん!」
アオトに喜んでもらえたのをコトノはそれを満面の笑みで返した。
「なんでそんなに嬉しそうなんだか」
「この鈍感が」
溜め息紛れに愚痴をこぼすがそれを聞いたコトノは本心からの思いを口に出してしまった。
時間帯で言えば学生が学校へと行こうとする早朝。そんな中でコトノはアオトの家の前でアオトを待っていた。コトノの家はここよりも学校に近いんだからと言いたくなったのは絶対に言ってはいけない事の一つかもしれない。
そんな事があっても距離は昔から縮まるような展開もなく、とても仲が良い幼馴染の席を陣取っている。
「……行こ、学校に」
間が空いて浮かない表情のコトノは話を切り出す。
「…………うん」
アオトの返事もどこかそっけない。一言で言うと虐めを見られるのが嫌だと言う意思表示である。決して虐めに負けているわけではない。
「大丈夫、私がいるから」
自分で言っておきながら照れて赤くなっているコトノを微笑で返すアオト。
そうじゃなくてコトノに見られるのが一番嫌なのだがそこのところをコトノは理解していない。そして虐められる原因の一つに自分が入っている事にも気づいていない。
そんな自分の事を鈍感鈍感と言っているコトノの子供っぽさもアオトが惚れた理由の一つかもしれない。
時間が過ぎ、アオト達は学校に着いて自分達の教室へと向かう。そして何気なく授業が始まる。それまでにアオトが教室に入ってきたことで教室にいた全員が冷たい目線を送ったり、コトノが入ってきたことでセイイチが話しかけてきたり、二人が一緒に入ってきた事で二重で冷たい目線を送られるはめになったのはスルーしておこう。
「…………」
アオトは授業中はかなり静かな方だ。というよりも学校ではどこでも静かな方だろう。
だが周りは非情だ。そんなアオトに紙くずを投げ飛ばしたり消しゴムを投げたりシャーペンの芯を投げつけたりと……。それでもアオトは何も言わない。
「やめなよ!」
「ん? どうした、ジョウタキ」
先生に声をかけられるがそれでもアオトに嫌がらせをしていた(主にシンマ達のグループが)者共を睨みつける。まるで親の敵とでも言わんばかりに。
「コトノ、座れよ」
「……」
アオトからの注意を受ければコトノもそれに従う他ない。なにより一番辛いのはアオトの筈なのだから。それを見ていた先生は頭の中で「何を?」と思ったり虐めをしていた者共は「それで良いんだよ」と声をかけてきたりコトノが更に苛ついたりと反応は様々だった。
そんな時間が続き、昼食の時間になるとアオトは「嫌だ」と言われても引き摺ってでもコトノに連れて行かれる。どこへかって言われると屋上に飯を食いにだ。
「なあ、アオト。ちょっと来いや」
「……わかった」
「アオト!」
「物わかりが良い事で」
シンマとその連れの言う通りにアオトはシンマの後を追う。勿論、そんなところをコトノが無視する筈がないのだがシンマの連れに道を塞がれて後を追う事ができない。
「待ってろ」
アオトの角を曲がるときに口にした言葉はいつもアオトがコトノを心配させぬようにするために口にするものだった。それには他人から見れば自分勝手と思ってしまうものでありコトノからすればそれはどんな言葉よりも信用できるものだ。
「うん……待ってる」
角を曲がったアオトの口元が三日月型につり上がったのは言うまでもない。
アオトが連れて行かれたのは教室だった。何にも使われていない空白の教室。
「今日は便所じゃないんだな」
「ちっ、うるせえんだよお前はっ!」
その後は数人がかりでアオトを床に頭を擦り付けて踏んで、蹴って、顔を持ち上げられては殴られての繰り返し。ときには放り投げられて壁と激突する。そして、アオトは肺から空気を無理矢理押し出されて咳き込む。
そんな事を続けられたアオトは負傷したところを見つける方が難しい程に傷ついていた。
だが―――
「お前のなあ、その目がうぜえんだよ!」
シンマ達を貫いてしまいそうな真っ直ぐな目線。炎が円でも描いているかのような吸い込まれそうな黒い瞳。そこには恐怖など一つも見られなかった。
それから数十分に渡り、傷をつけたシンマ達はしびれを切らしアオトをそのまま放置して何処かに行ってしまった。そんな中でも恐怖など見られない目。涙など流さない目はある意味人間離れしているのかもしれない。
アオトはそのまま目を瞑り、自分でも何にかわからない状態に意識を集中させた。
「アオト!」
空気を読まない声がアオト以外誰もいない教室に響く。その声は天使とも女神とも言えるもの。
「……待ってろって言っただろ」
「でも……心配になるよ!」
「はっ、はは……俺はそこまで弱くなったつもりはないのにな」
「何言ってるのよ。ゲーム馬鹿のくせに」
「言えてるな」
最早認めるしかできない。事実でもあるのだから。
「馬鹿。否定しなさいよ」
「わりいな」
「……許してあげる」
コトノはそう言うとアオトに自分の肩を預けた。
「サンキュ」
その言葉は沢山の意味が詰まっている。
「……ご飯はどうする?」
「食うに決まってんだろ」
「ふふ、ありがと」
そのご飯とはコトノが作ってくれたものだ。ここで否定をしていたらコトノの表情は今の満面の笑顔から一転し、しゅんと小さくなっていたの違いない。今でもアオトの姿を見て涙を流しているが。
「美味い?」
「当たり前だ」
「良かった」
空白の教室は今空白ではなくなったかもしれない。まだ成熟には程遠いかもしれないし直ぐそこかもしれない。だが教室で一輪の恋の花がまた成長した。
アオトの嫌われる理由は生意気で何にも屈しない感じのオーラ。真っ直ぐな眼差し。コトノのことをなにより大切にしているところ。コトノと仲良くしているからと沢山の理由があるがアオトはそんな虐めに負ける事はないし、そんな嫌われて虐められる理由の全てがコトノがアオトに惚れた理由でもある。
シリアス下手? 作者不器用です。何事にも。
できる範囲で改善していきたいのですが果たしてどこまで器用になれるのか……。
まあ、とりあえずこれからも続きますよー(下手なりに)。
感想返しますよー(自分でできる限りで)。
ご指摘いただければ直しますよー(不器用ながらに)。
……なんか自分で書いていて虚しくなってきました。しくしく。
それでも自分のできる限りで期待に応えますので感想、ご指摘お待ちしております。




