第二十九話 絶体絶命
ワタシハダレ? ココハドコ?
……はい、ふざけるのはここまでにして最新話です。どうぞ。
「セツナさんはお前の恋人だろ!?」
「そんな関係あの時以来断ち切ったさ」
そんな事を平然とした態度で言い切るジンはどこか理屈で動いている感じがしなくもない。
「それよりもさあ、そろそろ始めようぜ? おしゃべりはもう飽きた」
「始めるって何を」
「決まってんだろ? 第二ラウンドだぜ!」
「レン、下がってろ。こいつヤバい」
無表情のまま真剣に語りかけてくるアオトの目はジンに向いていて本気だと分かる。
「え? でも……」
「俺はお前があいつに完全に飲み込まれてから召喚できるという保証はねえ。お前があいつに飲み込まれた時点で恐らく終いなんだ」
「じゃあ僕も一緒に居た方が……」
「まだ分かんねえのかよ! お前にはサーシャさんの墓を守る役目がある。こんなところで消えて良い存在じゃねえんだよ!」
無表情が一変し、怒り混じりの感情丸出しの表情へと切り替える。
「御託は良いからさっさとしようぜ? 退屈過ぎて全てを破壊してしまいそうだ」
「望み通りにしてやるよ」
レンを押さえ込んだアオトはジンへと肉薄する。最初に先制したのは飛び込んできたアオトだった。“雷狼”を引き抜き、右から左へと斬り裂こうとする。だが、鎌で威力を止められたことで隙が生じた。
それにいち早く察したアオトは大きく後ろにジャンプして追撃を回避する。
「これなら! 炎は風を纏いて豪炎となった ……《炎竜巻》!」
詠唱とともに炎でできあがった竜巻がアオトの手の中から発生し、ジンの方へ。
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能力獲得条件をクリアしました。
スキル“合成魔法”を自動的に獲得します。
……スキル“合成魔法”を解放しました。
“合成魔法”のスキルをオンにし、“合成魔法”をアクティブしました。
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そんなログが流れている事にアオトは一切気づかない。戦いに集中したらまわりが見えなくなるタイプのようだ。
だが、この通知は見る必要はない。魔法の属性を合成するのにスキルは要らず、スキルは言わば補助系の者もののような存在なのだから。
そんなアオトの炎と風の攻撃は―――
「剣の使い方もそこそこ、魔法の威力の高いな。だが魔法とはここ一番といったときに使うものだ。それともお前は魔法使いだったのか?」
「くっ、黙れ!」
「そうかっとなるなって、魔法ってのはなこういう風に使うんだ。炎には炎を持って制する 風には風を持って制する ……《炎風制撃》」
ジンの詠唱が唱えられた瞬間にアオトの《炎竜巻》とは異なり逆回転する《炎竜巻》が発生する。それによりアオトの魔法は意外な方法で止められる事となった。
「どうだ? お前は確かに強い。だがなあ、経験がなさ過ぎるんだよ。特に対人戦にはな!」
今度はこちらの番だとばかりに巨大な鎌を振り下ろしてくる。逃げ切れないと悟ったアオトは“雷狼”を使い、真上から来る鎌を右へ受け流そうと試みる。だが、考えが浅はかだった。
「くっ」
“雷狼”はここぞとばかりに踏ん張り、刃こぼれには至らなかったが鎌のあまりにもの大きさにアオトの顔に傷が入ってしまった。そして極めつけは鎌の重さに地面が耐えられず、若干ではあるが陥没してしまったのだ。
「守りは中々。お前二代目勇者メンバーのどの奴らよりも強いぞ? 勿論、俺を抜いてだがな」
「ふっ、それは光栄、だな」
ジンはまるでお遊び気分で戦っているのに対し、アオトは精一杯やってこれなのか!? と自分に問いたい気分だ。
「なあ、俺はまだ本気の半分も出してねえぞ?」
「なに!?」
「だって俺この戦いでスキル使ってねえだろ?」
「くっ」
まるで赤子とはいかないが、子供の手を捻る程度の実力だと言われたらアオトとて無視するわけにはいかない。だが、これは相手の感情を怒りで押しつぶそうと言う罠だ。
「うっ」
「……くひっ、ジン様。こちらは完了しました。くひっ」
「なに!?」
「よくやったソルド」
後ろを振り返るとそこには倒れたレンがいて……その後ろに漆黒のフードを被ったソルドと呼ばれた者とその傍らにソルドよりもフードを深く被った体型は女の子がいた。
まさに絶体絶命の大ピンチへとアオトは突き落とされたのである。
絶体絶命の大ピンチ……です。どうなることやら。
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