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第十六話 世界は悪夢そのもの

 遅くなりました。そして今回だけ短いです。

 幽霊とは何なのか。


 あるものは思念体と言う。


 あるものは幻想と言う。


 あるものは生き物の真の姿と言う。


 思念体であるならばそれはどうやってそれ個体で存在できるのだろうか。


 幻想と言って終わらせるのならば今、目にしている透けた人型の者も只の幻想だと言えるのだろうか。


 真の姿であるのならば肉体とは何故存在するのか。


 答えは探せば必ず出てくるようなものではない。いや、もしかしたらどこかにこの答えはあるのかもしれない。それと同時に無数の答えが見つかるかもしれない。


 ……と、語っているのには勿論理由が存在する。


 アオト達はアオトのこの階にはもう居たくないという提案を強く推したのでそのまま次の階へと全速力で走った。レンは走るんじゃなくて浮いているのだが。


 いやいや、そんなことではない。何故こんな話をしたか。それはここまで来るのにレンは霊体と言う姿の筈だが普通に魔物の攻撃をくらっているからだ。こういう場合、幽霊は敵をすり抜け、攻撃が当たらないのがファンタジーではよくある事だ。


「その体解剖してみたいな」

「え! 解剖!? まずそんな事出来るのかな」

「出来るんじゃないのか? 魔物でも俺でもレンに触れたじゃん」

「……アオトは男の体を素手で解剖するような趣味でもあるの?」

「……やっぱやめた」


 そのアオトの言葉を聞いた瞬間レンは息を思いっきり吐き出し、自分の体とは言いにくいかもしれないが自分の危険がなくなったので安堵の表情を面に出した。それを見たアオトは溜め息紛れにやられた感を感じる事となった。だが、元々冗談半分で言った事でレンの言う通りそんな趣味は一切存在しないのでやる事はなかった。あくまでも最初は冗談半分だ。半分は本気だったというところもある。


「ここか」

「もう見慣れた?」

「いやいや、まだこの扉は二つ目だろ」


 前のカエルもどきのボスが出て来たボスベアの扉がアオト達の目の前にドンと構えている。それは前の扉と同じく古ぼけた感が漂い、どこか強固なイメージがある。その扉から出て来る強靭な魔物の気配は地上では味わう事の出来ない体験だ。強い気配なら地上にも居るがこの迷宮の雰囲気とも混じり合ってこの世のものではないようなものになっている。


「……今頃になって思ったんだが、この迷宮のボスってその階層の魔物をベースとした上位版になっているのか?」

「半分正解で半分不正解かな」

「どういう意味だ」

「ここから九十八層までのボスはそうだけど九十九層の最後の魔物は少し特殊な奴になっているんだ」

「……それってここのボスは幽霊系のなの?」

「あ」


 ここでアオトの感情はまた絶望に追いつめられる事となった。奈落に落ちた時とは違う意味で。

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