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Re:incarnation of Fate   作者: ヴィシュヌ
1章:ようこそ異世界へ

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シーン1:死して尚、続く世界

意識が漆黒の底から浮上した瞬間、冬夜を包んだのは冷たい泥の匂いだった。


(……生き、ている……?)


ゆっくりと目を開ける。見慣れた天井も、線路を照らす街灯もない。

視界に広がっていたのは、黒く 歪んだ巨木と、紫色に淀んだ空が広がる見知らぬ路地裏だった。建物はどれも幾何学的にねじれ、まる で悪夢の中の街並みだ。


「なにがあった……僕は……死んだはずだ……!」


冬夜は跳ね起きようとした。夏芽のいない世界になんて、一秒だって息をしていたくなかった。それ なのに、なぜ自分は五体満足で生きているのか。体を改めようと手元を見下ろし――冬夜は息を呑んだ。



カバンがない。制服のポケットにあったはずのスマホも、生徒手帳も、何一つない。まるで「佐々木冬 夜」という人間が持っていた過去の証明だけが、綺麗に削ぎ落されたかのように。


その時、路地裏の奥から重苦しい足音が響いた。


グルルル……と、鼓膜を揺らす不快な唸り声。闇を押し開いて姿を現したのは、人間など遥かに凌駕す る巨躯を持った異形だった。黒い硬質化皮膜に覆われた筋肉、幾重にも裂けた口から垂れ落ちる腐食 液。目が合った瞬間、冬夜の全身の毛穴が収縮した。



「あ……」


死を望んでいたはずだった。だが、目の前の怪物が撒き散らす本能的な死の気配は、冬夜の精神を恐 怖で麻痺させた。逃げられない。足が竦んで動かない。怪物が腕を振るった。太い丸太のような爪が、 空気を切り裂く。


――ガツンッ!


「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」


鋭い衝撃の直後、冬夜の口から人間とは思えない絶叫が迸った。激痛。焼かれるような、引きちぎら れるような圧倒的な激痛。視界が真っ赤に染まる。見下ろせば、自分の左肩から先が――腕が、根元から 丸ごと消し飛ばされていた。地面に散らばる大量の鮮血。


「あ、あ、あああああッ!」


死にきれず、放り出された謎の世界で、ただ怪物に喰われて惨死する。そんな理不尽があるか。夏芽を 理不尽に奪われ、自分までこんなところで、ゴミのように踏みにじられて死ぬのか。


「ふざけるな……ふざけるなよッ!」


地面に倒れ伏し、激痛に狂いそうになりながら、冬夜は右手で泥を掴んだ。胸の奥底で、冷えていた 絶望が激怒へと爆発する。妹を殺した世界への怒り。自分をこんな目にあわせる運命への殺意。



「返せ……夏芽を返せ! 僕の腕を返せぇぇぇぇッ!」


その瞬間、冬夜の左肩の切り口から、血を押し返すように激しい赤熱した炎が噴き出した。続いて、 バリバリと鼓膜を破る音を立てて紫色の雷撃が迸る。


炎は肉となり、雷は骨となるように編み込まれていく。欠損した左肩から、メラメラと燃え上がる火炎 とバチバチと放電する紫電で形成された、異形の元素の腕が再構築されていく。


怪物が出し抜けの威圧に怯み、後退った。冬夜はゆらりと立ち上がった。瞳からは光が消え、ただ右 目には紅蓮の炎が、左目には紫の雷光が宿っている。


「消えろ」


冬夜が覚醒した左腕を突き出す。火の爆炎が怪物の巨体を包み込み、同時に雷の貫通光線がその心臓 部を正確に撃ち抜いた。二重発動――超高熱のプラズマが路地裏を眩しく照らし出し、怪物は叫び声をあ げる間もなく灰すら残さず蒸発した。



静寂が戻る。残された冬夜は、メラメラと燃え、バチバチと放電を続ける自分の左腕を見つめていた。


「ここは……どこだ……」


肉体の痛みと、体内を巡る圧倒的な魔力の感覚。冬夜の、鏡像世界「ミラージュ・エデン」での泥臭い 抗いの物語が、今スタートしたのだった。


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