第百八十九話 ふたりだけの時間
扉が閉まる。
外の気配が遠ざかり。
部屋には、ゼラスとリズナだけが残った。
リズナはまだ繋いでいた手を離さず。
少しだけゼラスを見つめる。
「……昨日、ほんとに嫉妬したんだからね」
「ああ。悪かった」
「うん」
それだけ。
今日はもう責めなかった。
代わりに。
リズナが手を引く。
「だから、いっぱい甘やかして」
ゼラスが笑った。
「任せろ」
唇が重なった。
最初から。
昨日までとは違った。
三人ではない。
誰かの順番を待つことも。
横から手が伸びてくることもない。
今ここにいるのは。
二人だけ。
リズナは何度か唇を重ねたあと。
ゼラスの胸へ手を置いた。
「大人になって」
「ああ」
少年だった身体が伸びる。
成人したゼラスを見上げ。
リズナは嬉しそうに笑った。
次の口づけは。
ゼラスからだった。
そのまま腰を抱かれ。
寝台のそばまで下がる。
リズナの手がゼラスの軽装へ伸びた。
ゼラスも彼女の服へ手をかける。
一枚ずつ。
互いの衣服を脱がせていく。
やがて。
床には二人分の服だけが残った。
ゼラスの視線が。
リズナの身体をゆっくり辿る。
「……何?」
「綺麗だなと思って」
リズナが少し頬を赤くする。
ゼラスの手が。
肩へ触れ。
腕を滑り。
腰まで撫で下ろした。
「肌もすべすべだな」
「そんなに?」
「ああ」
もう一度。
今度は背中へ手を回す。
「ずっと触ってられそうだ」
リズナは照れながらも。
嬉しそうにゼラスへ身体を寄せた。
「じゃあ、いっぱい触って」
「ああ」
肌と肌が重なった。
寝台へ座ったゼラスに。
リズナが身体を預ける。
頬。
首筋。
鎖骨。
ゼラスの唇がゆっくり下りていく。
胸元へ届く頃には。
リズナの呼吸はもう少しだけ速くなっていた。
「……ん」
ゼラスの手が。
柔らかな胸を包む。
片方をゆっくり揉みながら。
もう片方へ口づける。
唇が敏感なところへ触れると。
リズナの指がゼラスの髪へ入った。
「……ゼラス」
小さく名前を呼ぶ。
ゼラスは離れない。
舌先と唇で丁寧に可愛がり。
時折。
軽く吸い上げる。
「っ……」
リズナの背中が反った。
髪を掴んでいた指へ。
少しだけ力が入る。
「そこ……好き」
「知ってる」
「じゃあ……もうちょっと」
ゼラスはそのまま。
時間をかけて応えた。
反対側も。
手だけで済ませることなく。
同じように口づける。
リズナはもう。
恥ずかしそうにしながらも隠そうとはしなかった。
むしろ。
自分からゼラスを抱き寄せている。
今は。
全部自分だけに向いている。
それが嬉しかった。
やがて。
ゼラスの手が腰へ下りる。
滑らかな腹部を撫で。
その先へ。
リズナが僅かに身体を強張らせた。
けれど。
止めない。
「……そこも」
ゼラスを見る。
「ちゃんとして」
「ああ」
内腿をゆっくり撫でられ。
リズナはゼラスの肩へ顔を寄せた。
さらに触れられると。
短い吐息が漏れる。
「……っ」
ゼラスの首へ腕を回す。
「ゼラス……」
「ああ」
その声へ応えるように。
抱く腕が強くなる。
急ぐことなく。
リズナが心地よさそうに身体を預けるまで。
ゆっくりと可愛がった。
少しして。
今度はリズナがゼラスを押し返した。
「次、あたし」
「何が?」
「ゼラスばっかりじゃ不公平でしょ」
リズナは笑って。
胸元へ口づける。
首筋から。
胸。
腹部へ。
少しずつ下へ移っていく。
ゼラスが意味を察した。
「……リズナ」
リズナが顔を上げる。
「嫌?」
「まさか」
「じゃあ、大人しくしてて」
少し楽しそうに言って。
そのまま。
さらに下へ。
やがて。
ゼラスの視界から姿が隠れた。
「……っ」
身体が強張る。
リズナは戻ってこない。
しばらく。
部屋には。
ゼラスの乱れた呼吸だけが響いた。
やがて。
大きく身体が強張り。
そのあと。
ゆっくりと力が抜けていく。
少しして。
リズナが戻ってきた。
妙に満足そうな顔をしている。
「……気持ちよかった?」
「聞かなくても分かってんだろ」
「ちゃんと聞きたいの」
ゼラスは少しだけ息を整え。
リズナを抱き寄せた。
「最高だった」
「ふふ」
リズナが嬉しそうに笑う。
「ならよかった」
今度は。
ゼラスから唇を奪った。
それから。
どちらが先に求めたのか。
もう分からなくなった。
リズナが腕を回せば。
ゼラスが抱き寄せる。
ゼラスが唇を離せば。
リズナが追う。
胸元へ。
腰へ。
背中へ。
何度も互いの手が触れる。
そして。
二人で寝台へ沈み込んだ。
三人の時とは違う。
今夜は。
ゼラスの視線も。
腕も。
声も。
全部。
リズナだけのものだった。
長い時間。
二人は何度も身体を重ねた。
夕暮れ。
リズナは。
成人したままのゼラスの胸へ頬を乗せていた。
背中を撫でる手が。
ゆっくりと行き来している。
しばらく。
何も言わなかった。
やがて。
「……ゼラス」
「ん?」
「今日は、ちゃんとあたしだけだったね」
「ああ」
リズナが笑った。
「もう許す」
「やっとか」
「うん」
ゼラスも笑い。
リズナを抱き寄せる。
少しして。
「リズナ」
「なに?」
「俺も、お前と二人だけでたくさんしたい」
リズナが顔を上げた。
「ほんと?」
「ああ」
ゼラスは迷わなかった。
「今日だって、埋め合わせだけで来たわけじゃねえ」
「……うん」
「俺がお前としたかった」
リズナの表情が明るくなる。
そして。
続いた言葉に。
さらに嬉しそうに目を細めた。
「一番したいのは、お前だよ」
「……嬉しい」
そのまま。
ぎゅっとゼラスへ抱きつく。
少しして。
リズナが顔を上げた。
「じゃあ、もう一回しよ」
「まだやるのか?」
「あたしとたくさんしたいんでしょ?」
「ああ」
「なら決まり」
リズナから唇を重ねる。
「今度は埋め合わせじゃないよ」
「分かってる」
「あたしがしたいの」
ゼラスの腕が。
またリズナの腰へ回った。
二人だけの時間は。
まだ終わらなかった。




