表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/353

第百八十五話 何もしない日



翌朝。


ゼラスが目を覚ますと。


すぐ隣で、ミテイがこちらを見ていた。


「……近えな」


『起きた』


「見りゃ分かる」


休みだからか。


ゼラスはいつものローブではなく、普段よりずっと軽い格好をしている。


ミテイも寝起きのまま。


反対側では。


リズナがまだ毛布に包まれていた。


『今日、何もしない日』


「ああ」


『じゃあ』


ミテイが少し近づく。


『したい』


ゼラスが目を瞬く。


「起きて早々それかよ」


『うん』


「ミテイ……」


毛布の向こうから声がした。


リズナが半分だけ顔を出す。


「最近ほんとに遠慮なくなったわね」


『リズナも起きた』


「今ので起きたのよ」


リズナが身体を起こす。


ミテイはまだゼラスの腕へ触れたまま。


それを見て。


リズナの目が少し細くなる。


「……朝からもうくっついてるし」


『駄目?』


「駄目とは言ってない」


リズナは寝台の反対側へ回る。


そして。


ゼラスの肩を自分の方へ向けた。


「でも、あたしもいるから」


「知ってる」


「ならいい」


リズナが先に唇を重ねた。


軽く触れるだけのつもりだったのかもしれない。


けれど。


ゼラスの手が腰へ回ると。


そのまま離れなくなった。


『私も』


すぐ横からミテイの声。


リズナが唇を離す。


「……早い」


『待ってた』


「いつから?」


『今から』


「それ待ってないじゃない」


ゼラスが笑う。


ミテイはそのまま顔を寄せ。


今度は自分がゼラスへ口づけた。


リズナは横から見ている。


最初は黙っていたが。


やがて。


「……長い」


『まだ少し』


「もう十分」


リズナがゼラスの腕を引いた。


「お前ら朝から元気だな」


「ゼラスに言われたくない」


『うん』


「何で二人ともそこだけ揃うんだよ」


また笑いが漏れる。


だが。


その空気は。


すぐに別の熱へ変わっていった。




「……ゼラス」


リズナが。


胸元へ指をかける。


「服が邪魔ね」


「お前が脱がすのかよ」


「嫌?」


「全然」


リズナが服を持ち上げる。


ゼラスも腕を抜き。


そのまま脱いだ。


ミテイがじっと見る。


「……また見てる」


『うん』


「ミテイも脱ぐ?」


『脱ぐ』


迷いがない。


ミテイは自分の服へ手をかける。


リズナも。


少しだけ頬を赤くしながら続いた。


三人の服が。


次々と寝台の脇へ置かれていく。


ゼラスが二人を見る。


「……ほんとに朝からか」


「今さら何言ってるのよ」


『ゼラスが一番嬉しそう』


「そう見えるか?」


『見える』


リズナもちらりと確認する。


「……否定できないわね」


「お前らな」


ゼラスの姿が変わる。


少年だった身体が伸び。


成人した姿になる。


リズナはその変化を見上げ。


ミテイは分かりやすく視線で追った。


「ミテイ」


『何?』


「今すごく見てた」


『見たかったから』


「ほんっと素直……」


ゼラスが二人を引き寄せる。


「ほら」


「何?」


「来るんだろ」


リズナが少し笑った。


「言われなくても」


ミテイも。


反対側からゼラスへ身体を寄せた。




最初に捕まったのは。


リズナだった。


ゼラスに抱き寄せられ。


また唇が重なる。


腕を首へ回し。


そのまま身体を預ける。


ゼラスの口づけは。


頬から首筋へ落ち。


さらに下へ移っていく。


「……ん」


リズナの指が。


ゼラスの髪へ絡んだ。


胸元へ唇が触れる。


一度。


また一度。


リズナの呼吸が僅かに乱れる。


「……そこ、好きね」


「嫌か?」


「嫌なら止めてる」


答えながら。


リズナの腕は。


むしろゼラスを離さなかった。


ミテイがすぐ近くで見ている。


『リズナ、気持ちよさそう』


「実況しないで……」


『私もしてほしい』


「待ちなさいって」


『順番?』


「……そういう言い方されると変な感じするわね」


ゼラスが笑う。


その隙に。


ミテイが反対側から抱きついた。


『次、私』


「ほんとに順番になってるじゃない」


それでも。


リズナは場所を譲った。


完全に離れることはなく。


今度は自分からゼラスの背中へ腕を回す。


ミテイが。


ゼラスへ身体を預ける。


触れられるたび。


以前より素直に反応する。


『……これ好き』


「覚えたな」


『うん』


ゼラスの手が動く。


ミテイは目を閉じ。


少しだけ身体を寄せた。


その様子を見て。


リズナがむっとする。


「……ゼラス」


「ん?」


「あたしも」


「今さっき――」


「あたしも」


「分かったよ」


ゼラスが片腕でリズナも引き寄せる。


「これでいいか?」


「……うん」


声だけは満足そうだった。




三人で寝台へ倒れ込む。


ミテイはもう。


最初の頃のように戸惑ってはいない。


ゼラスへ触れることも。


求めることも。


自然になっている。


そして。


その積極性が。


リズナには少しだけ面白くない。


「ミテイ」


『何?』


「最近、ゼラスに触る時すごく迷いなくない?」


『慣れた』


「……それがちょっと悔しい」


『どうして?』


「あたしより積極的に見えるから」


ミテイが少し考える。


『リズナもすればいい』


「するわよ」


即答。


そのまま。


リズナがゼラスへ覆いかぶさるように身体を寄せた。


「ほら」


「何がほらなんだよ」


「今日はあたしも遠慮しない」


ゼラスの口元が上がる。


「いいじゃねえか」


「嬉しそう」


「ああ」


「そこは否定しないのね」


リズナも笑った。


唇が重なる。


その横から。


ミテイも手を伸ばす。


結局。


誰か一人だけになる時間はほとんどなかった。


リズナがゼラスを求めれば。


ミテイも近づき。


ミテイがゼラスへ甘えれば。


リズナも黙ってはいない。


ゼラスも。


二人を交互に抱き寄せる。


やがて。


笑い声よりも。


名前を呼ぶ声の方が増えていった。




しばらくして。


リズナはゼラスへ身体を預けたまま。


息を整えていた。


その横で。


ミテイが。


またゼラスを見ている。


「……その目、何?」


『まだしたい』


リズナが思わず顔を上げる。


「まだ?」


『うん』


「ミテイ、ほんとにハマってない?」


『かなり』


「認めるのね……」


ミテイはゼラスへ近づく。


そのまま。


胸元へ口づけ。


少しずつ下へ移っていった。


リズナが気づく。


「あ」


『何?』


「……またそれ?」


『うん』


ゼラスが僅かに息を吐く。


「お前、ほんと好きになったな」


『好き』


ミテイはそれだけ答え。


そのまま毛布の中へ潜っていった。


リズナが。


数秒。


毛布を見る。


そして。


ゼラスを見る。


「……ねえ」


「何だよ」


「何でそんな嬉しそうなの」


「しょうがねえだろ」


「しょうがなくない」


リズナは少し頬を膨らませ。


ゼラスの顔を自分へ向けた。


「こっち見て」


「ああ」


口づける。


一度では終わらない。


リズナの方から何度も求める。


ゼラスの手が。


その身体を抱き寄せる。


「……ん」


リズナが小さく息を漏らした。


そして。


ゼラスの耳元へ。


「ミテイばっかりに夢中になったら怒るから」


「なってねえよ」


「ほんと?」


「ああ」


「……ならいい」


今度は。


リズナの方から。


もう一度唇を重ねた。




昼を過ぎても。


三人はほとんど部屋から出なかった。


少し眠って。


目を覚ませば。


また誰かが誰かへ触れる。


ゼラスがリズナを抱き寄せれば。


ミテイも当然のように混ざる。


ミテイが先にゼラスへくっつけば。


リズナは黙って反対側を確保する。


それを繰り返すうち。


いつの間にか。


三人とも。


何も言わなくても互いの場所が分かるようになっていた。




夕方。


服はまだ。


寝台の脇へ置かれたままだった。


リズナはゼラスの胸へ頬を乗せ。


ミテイは反対側から腕へ抱きついている。


「……一日終わりそう」


『うん』


「本当に何もしなかったわね」


ゼラスが笑う。


「いろいろしただろ」


「そういう意味じゃない」


『私は満足』


「ミテイはそうでしょうね」


リズナが横を見る。


ミテイは。


かなり機嫌が良さそうだった。


『また休みほしい』


「理由が分かりやすすぎるのよ」


『駄目?』


「駄目じゃないけど……」


リズナがゼラスへ腕を回す。


少しだけ強く。


「次も、あたしも一緒だからね」


ミテイが瞬きをする。


『うん』


それだけだった。


リズナも。


それ以上は言わない。


ゼラスが左右の二人を見る。


「服、着ねえの?」


「今?」


『まだいい』


リズナも少し考えて。


またゼラスの胸へ頬を戻した。


「……もうちょっとだけ」


三人はそのまま。


夕暮れの光が消えるまで。


寝台から動かなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ