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酔わなかったクラスメイト

読んでいただいてありがとうございます。

遠くから見ていただけのクラスメイト編です。

おまけは時系列がちょっとバラバラなので、わかりにくくてすいません。キャシーが両親に怒られたのは、クラスメイトに叩かれた後です。休日の間は何も知らず、国王陛下の宣言に驚いていたら、まさかのきっかけが自分の娘だったと知って青ざめました。

 うちのクラスには、『美しくて儚い恋』とやらをしている恋人たちがいる。

 いつもクラスの中心にいる華やかな連中の、そのまた中心にいるザカリーとキャシーだ。

 あいつらを中心に、このクラスは回っていると言っていい。

 そんな渦の端っこに追いやられているのが、地味な自分たちだ。

 地味仲間は、きっと華やか組には名前も覚えられていない。

 でも、別にそれが悔しいとかは思わない。


「絶対に話とか合わないし、下手に巻き込まれるのも嫌だからなー」

「うん。そうだね。あの人たち、ちょっと怖いんだよね」


 地味仲間男子五人衆の一人が、何となく小声で言った。

 今は昼休みで、地味な自分たちはカフェでも隅っこの方に陣取っているから、中央付近でわいわいしている華やか組に聞かれる心配なんて一切ない。けど、何となく小声で話をしていた。


「どうしよう。親に言っておいた方がいいのかな?」

「何て言うんだよ。うちのクラスで……恋愛?が流行っています、って報告するのか?馬鹿にされるだけじゃないか?」

「恋愛……一応、そうなるのか?」

「というか、婚約者がいながら別に恋人を作るのは、普通、浮気って言わないか?」

「でも、彼らは『美しくて儚い恋』って呼んでるじゃん」

「どんな呼び方してても、浮気には違いないじゃん。……なぁ、なんで俺たちまだ学生なのに、こんな馬鹿みたいな浮気の話をしてんだ……?」


 学生の身でありながら、昼間に学園のカフェで浮気を連呼する自分たちに、ちょっと嫌気が差してきた。


「完全なる他人事だったら僕たちも浮気なんて言わないけど、微妙に巻き込まれてるから?」

「あいつらの言う、『クラス皆で秘密の恋を応援している』、の中に俺たちも入っているのかな?」

「あいつら、俺たちの名前も知らないじゃん、って言いたいけど、あいつらは入れてなくても、その言葉を聞いた他の人間は俺たちも入れてくるんじゃないかな。だって、同じクラスだし」

「うわー。嫌だなー。クラス全員とか言わないでほしい」

「だから、親に言うかどうかの相談をしてるとこだろ」

「あいつらの浮気を親に報告したところで、どう影響してくるんだ?」

「……さぁ?静観するしかないのかな」

「同じクラスにいる限り逃げられない気もするけど、親に言ったところで、他家のことに首を突っ込むな、って言われて終わりそう」

「あぁ、そうだな。小言を言われるだけなら、報告しなくてもいいか……」

「面倒くさいもんね」

「なるべく関わらないようにしておけば、まだ何とかなりそうだな」


 まさか、教室の片隅にこそこそ存在していただけだったのに、同じクラスというだけで浮気推奨派に入れられるとは、この時は全く思っていなかった。

 オリビアのクラスで緊急のクラス会議が行われた後の週末、ザカリーのクラスメイトの内、婚約者がいた者たちは、突然、相手の婚約者ご一家の訪問を受けた。

 各家での話し合いの末、華やか組は婚約破棄された。

 地味組は、保留だ。

 婚約者なしの人間は華やか組にも地味組にもいたのだが、華やか組の人間は親からしっかり絞られたらしく、週明けは抜け殻状態だった。

 地味組は、もうちょっと情報収集をしっかりやって報告しろ、と怒られた。

 でも、あんたら、報告したらしたで、他家のことに首を突っ込むな、って怒るだけじゃん、と言いたかったが、諦めて怒られるままにしっかり怒られた。

 頭下げとけばそれで済むなら、もうそれでいいや。

 何で静観してたんだ。それだって悪いことだろう。とか言われたけど、地味な自分たちには何の影響力もなくて、華やか組だけが騒いでたんだし……。友人でも何でもなく、ただクラスが同じっていうだけだったのに、どうしてこっちの存在を認識していない連中のせいで怒られなくてはいけないのだろう。

 それに、他のクラスのやつらだって、見てたじゃん。


「……聞いたか?うちのクラス、まとめて浮気推奨派って言われてるらしいぞ」

「止めてくれ。俺たちは除外してくれ」

「俺たちを見て浮気推奨派とか言われるのは、すごく心外だよな。そもそも、浮気以前に俺たちに恋人が出来ると思えるのか?」

「婚約者はいるじゃん、一人だけだけど」

「他クラスの婚約者に釘を刺されました。でもその後、そんなことはやれないか、って言われて、理解されていることを喜ぶべきか、気骨がないと思われているのを悲しむべきか、ちょっとだけ悩みました」

「理解されてることを喜ぶべきだ。やらない、じゃなくて、やれない、と思われてるところがポイント高いな」

「くっ!友人にも理解されてるぅ」


 地味五人衆はその程度で済んだのでまだ平和だった。

 けれど今やクラスの華やか組のほとんどが、顔に疲れが出ているか青ざめるかしている。

 女性の中には泣いている者もいる。


「……あっちはほとんど婚約破棄されたそうだ」

「中心にいたやつらは、完全に浮気推奨派だと確定されたんだろうな。俺たちだってされたくらいだし」

「地味女子たちは、お前と一緒で釘を刺されただけで済んだらしい」

「見てただけの罪、か」

「正直、見たくもなかったけどな。浮気するならもっと上手く隠してやってほしかった。あんだけ周囲を巻き込んだ浮気って珍しいだろ」

「なんで華やか組は、あんなに協力的だったんだろ?」

「自分たちも一緒にやってる気分になってたんだろ」

「……やってたのは浮気だぜ?」

「『美しくて儚い恋』だ。輝いて見えてたんだろ」

「……そっか。俺には理解不能だ」

「そうだな」


 華やか組が沈んでいる姿を、地味女子が遠くから眺めていた。

 ただ、一人だけ、いつもと変わらず本を読んでいる女子がいた。


「……あの子も婚約破棄したらしいけど、いつもと変わらないな」

「ん?あぁ、あの子か。そうだな。いつもと変わらないな」

「……俺たちも、あんな風に見られてるのかな」

「いつもと変わらないって?そもそも、俺たちを見てる人間なんていないだろ」

「俺たちの存在を認識していないなら、アレと一緒のクラスというのも認識しないでほしい」


 そこだけは何故かしっかり認識されているのは理不尽だ。

 そんな風に地味男子五人衆は思ったのだった。


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― 新着の感想 ―
まぁ怒られても先に報告しておけば、 「だから報告しといたのに放置したのそっちじゃん」が使えるからな……
地味でもせめて頭脳派なら良かったのにそうですらない……。 でも現実で子供が親に相談できないことって色々あるので、この子たちをただ批判するのも。 一般人と貴族では立場が違うのはそうなんですが。 じゃあ貴…
保身力が足りないな 婚約者と交流していてその性根を理解されているから他人事のままで終われたけど 「そんなことはやれないか」と言われた地味メンの一人が婚約者とお腐れ縁の幼馴染関係 でお互いに好意がある関…
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