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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
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呪殺ゲーム

すごろくを使った呪殺。そこに秘められた思いわ

 今年も文化祭の季節がやってきた。

 去年の体育祭の惨劇から、今年の体育祭の競技は、一般的な競技に絞られて、平穏無事に終わり、そのストレスが爆発していた。

「去年のリベンジ、今年は、メイド喫茶で一番取るわよ!」

 良美の主張に智代が言う。

「甘いわね、今の流行は、ツンデレ喫茶なんだからね」

 男子の一人が手を上げる。

「ジャンルを決めず、コスプレ喫茶って言うのは、どうだ!」

 騒ぐクラスメイト達に委員長の優子が言う。

「皆さん静かにして下さい。意見がある人は、一人ずつお願いします」

 何とか静かになった教室で、再度、加熱する前に較が手を上げる。

「ぬいぐるみ販売で良いと思います。売るのは、あちきが作った物で、全員参加とする為に、あちきが簡易セットを用意しました。作れる人は、それを作って、作れない人は、当日に店番をするというのでは、どうでしょうか?」

 良美が猛烈に反対する。

「そんな手抜きな企画は、絶対駄目!」

 それに対して較が冷たい視線で答える。

「ヨシ、あちき達が受験生だって気付いてる?」

 その一言にクラス全員のボルテージが一気に下がるのを確認してから較が続ける。

「元々三年は、不参加でも構わないって事になってるんだからね。受験の事を考えたら、これだってキツイ人も居ると思うから、あくまで協力は、自由にした方が良いかも」

 優子が言う。

「でもそれだと白風さんの負担が大きすぎませんか?」

 較は平然と答える。

「あちきは、もう推薦の特別枠入試で合格して、入学決めてますから」

 周囲が驚く。

「何時の間に?」

 絶対に知っていないといけない良美の呟きに較が呆れた顔をして言う。

「二週間前の土曜日に入学試験受けに行くって言ったよ。問題の学校には、あちきの家が多額の寄付しているし、成績での推薦も通って居て、落ちるほうがどうかしていたから、合格祝いとかしてないけどね」

 雷華が立ち上がって指差す。

「それって裏口入学じゃないのか!」

 較は笑顔で答える。

「合格に十分な成績と頭を持ってますから問題ありませんよ」

 雷華の隣に座っているエアーナが溜息を吐く。

「学年主席で、全国模試でも百位以内だったもんね」

 ダウンな空気が流れる中、較が手を叩き言う。

「そういうことで、今回の文化祭の準備は、あちきがメインで行うから、皆、特にヨシは、受験勉強を頑張ってね」

 クラスメイトからは、元気ない返事が返ってくるのであった。



 放課後、優子と較は、二人で細かい打合せをしていた。

「委員長は、受験勉強は、大丈夫なの?」

 較の質問に優子が苦笑をしながら答える。

「正直きついけど、これも気分転換になるから丁度良いの」

 較が、希望があったぬいぐるみセットの数を確認しながら言う。

「国立を狙ってるんだよね?」

 優子が頷く。

「そう、今日も帰ったら家庭教師の先生が来る予定」

 少し頬を赤くする優子に較が釘を刺す。

「多少の恋愛は、活力になるけど、嵌りすぎて本命の受験に失敗しないようにね」

 優子が手を大きく振って言う。

「先生とは、そんな関係じゃありません」

 初々しい態度に較は、窓の外を見る。

「夢斗(ユメト)さんに会いたいな」

「何々、それってヤヤの恋人!」

 机を並べ、復習をしていた智代が飛んでくる。

 較があっさり答える。

「昔風に言えば書生。今で言うとツバメ。あちきの家がパトロンしてる様なもんだね。どっちにしても夢斗さんが撮る写真は、あちきは、大好きだよ」

 智代が溜息を吐く。

「ロリのヤヤまで恋人が居るなんて。どうしてあたしには、恋人が居ないの?」

「達樹って奴と付き合ってたんじゃないのか?」

 良美の言葉に智代が肩をすくめる。

「駄目駄目、あいつは、根性無しで竜夢区に入るのだって嫌だと言って、デートの迎えにも来ないのよ。恋人としては、失格ね」

「そういうレベルの問題じゃないんだけどね」

 苦笑する較であった。



 家に帰った優子を待っていたのは、家庭教師の大学生、長谷川(ハセガワ)良一(リョウイチ)であった。

「優子ちゃん、お帰り」

「すいません」

 頭を下げる優子に良一が笑顔で答える。

「気にしないで、勉強を始めようか」

「はい」

 そして二人が勉強を開始する。



「今日の授業は、ここまで。この調子だったら国立も十分に狙えるよ」

 良一の言葉に優子が頭を下げる。

「ありがとうございます」

「ところで、今日は、何で遅れたんだい?」

 良一の質問に優子が答える。

「文化祭の打合せで遅れました。でも、もう合格しているクラスメイトが殆どの準備をしてくれるので、これからは、大丈夫です」

 良一が微笑を浮かべて言う。

「もうそんな時期なんだね。去年の文化祭での格好は、可愛かったよ」

「馬鹿な事を言わないで下さい」

 顔を真赤にする優子。

 反対に暗い顔になる良一。

「今年は、行けそうも無い」

 優子は、残念そうな顔を一瞬するが、直ぐに無理やり笑顔を作る。

「気にしないで下さい。今年は、ぬいぐるみを売るだけの自由参加ですから。あたしも店番もしないかもしれませんし」

 良一が難しい顔をして言う。

「優子ちゃんは、名前を書いただけでその相手が死ぬノートなんて信じるかい? ほら映画にもなった漫画の話しだけど」

 優子が手を横に振る。

「あたしは、そういうオカルトは、信じないんですよ。以前に学校に幽霊が出たって話がありましたが、結局人間でしたし」

 良一が辛そうに言う。

「そうだよね、まさかゲームで人の運命が変わるなんて事無いな」

 優子が心配になって質問すると、良一が話し始めた。

「そのゲームを手に入れたのは、一週間前なんだ。元々は、オカルト好きな友達、土谷(ツチヤ)が手に入れたいわくつきのゲームで、そのゲームをやった人間には、そのゲームの中で起こった事が実際起こるらしいんだ」

 優子が首を傾げる。

「ちょっと信じられませんね」

 良一も頷く。

「僕もそうだった。でも、起こったんだ、ゲームに書かれて居たように宝くじで百万円当たった。それだけじゃないんだ、一緒にゲームをやった土谷がゲームと同じ様に交通事故にあって入院している。そして、ゲーム通りなら、僕は、一ヶ月以内に事故死してしまうんだ」

 暗い表情をする良一に優子は、必死に言う。

「そんなのは、偶然に決まっています」

 良一も無理に笑顔を作りいう。

「そうだよね」

 どこか暗い雰囲気を背負いながら帰っていく良一であった。



「そんな話があると思う?」

 翌日、優子は、良美に相談すると、良美は、文化祭用の簡単ぬいぐるみセットを配布していた較の方を向く。

「実際、そんなゲームあるの?」

 較は、肩をすくめて言う。

「中国の仙人がそれに似たような物を作ったって話だったら聞いた事あるけど、宝貝(パオペイ)って呼ばれる貴重品だから、普通の大学生の手に渡る事は、無いね」

 智代が手を上げる。

「因みに、デスノートって実在するの?」

 較が頷く。

「死神の持ち物じゃないけどね。元々名前は、その人をあらわす物だからね、寿命なんて曖昧なものでなく、名前を書いて生命力を奪い取る道具なら腐るほどあるの。少し違うけど、名前を使って相手を操る有名なのは、西遊記に出てくる金角銀角が持つ、瓢箪なんかが有名だね」

 納得する一同を尻目に優子が言う。

「それじゃあ、大丈夫なんだよね?」

 較が頬をかきながら言う。

「悪魔の契約って知ってる?」

 雷華が渡されたぬいぐるみセットを凝視しながら答える。

「魂の変わりに願いを適えるって奴だろ? それが何か関係してるのか?」

 較が頷く。

「あれってある種の呪殺の一種なの。基本的に人は、術に対して抵抗する能力があるの、それを低減されるのが願い事。願い事が叶ったから、術に掛からなければいけないと、自己暗示で術に対する抵抗を弱らせ、その上で、相手を殺す術を発動させる。俗に言う呪殺なんて言うのは、そういった一連の行動を指す言葉だね」

 首を傾げるクラスメイト達の中で、エアーナが手を叩く。

「解った、そのゲームが呪殺のシステムになっているって言うんだね?」

 較が頷く。

「ここでの重要点は、三つ。自分がそのゲームを行い、自分の意思であった様に思わせる事、友達も事故にあっている事、最後に宝くじに当たる事。それぞれに意味があるの。強制的な術で無いことでの抵抗力の低減、自分ひとりで無い事により、効果の現実感を高める、プラスにも働く事に因る、自分からの術の完成の要望だね」

「そんな冗談だよね?」

 優子が心配そうな顔をすると較が答える。

「今回の一番の問題は、術者が誰かって事。ここまで用意周到に仕組まれた呪術の術具だったら、専門家が見逃す可能性は、皆無だから、どっちかと言うと、このゲームを術具とし呪殺を行おうとしている人が居ると思った方がいいね」

「そんなオカルト的なことが実際にあるなんて思えない!」

 パニックを起こす優子の両手を掴み良美が言う。

「大丈夫、ヤヤがどうにかしてくれるからな」

 優子が較の方を向く。

「白風さん、本当にどうにかできるの?」

 較は諦めた表情で言う。

「まあね、あちきの関係者に関わる人間に手を出したからね」



 竜夢区の一角にある病院、そこには、良一の友達、土谷が交通事故で入院していた。

「もう直ぐだ、もう直ぐ目的が達成される」

 一人部屋で、深夜、土谷が呟いた時、入り口が開き、良一が言う。

「理由を聞いて良いか? どうして僕に呪殺をしようとしたんだ?」

 土谷は、ひきつった笑みを浮かべて答える。

「なんの事だ、全ては、あのゲームの所為だ。呪いが掛かっていたとしたら、あのゲームに呪いが掛かっていたんだよ」

 それに対して、良一の隣に居た較が紙袋を土谷に投げ渡す。

「面白いものを作ったね。ルーレットを回す行為と駒を動かし、盤上の文字を巡る行為で、呪術契約を行うなんて。回りくどすぎて、本職の人間ならまずやらない方法だよ。でも、このゲームの制作費と当たり宝くじを買い取るお金を考えたら、普通に呪術者を雇った方が安いけどね」

 土谷は、舌打ちする。

「闇の世界の住人が出てくるなんて、長谷川、お前の交友関係にそっち関係の人間が居ない事は、確認ずみだったのに、何処で知り合ったんだ!」

 良一が辛そうに言う。

「家庭教師をやっている子のクラスメイトだ。まさか、あんな愚痴から、優子ちゃんが本気で調べてくれるなんて思わなかった」

 後ろで良美と隠れていた優子が顔を赤くし、良美にからかわれるが、あまり関係ないことなので、話を続ける。

 較が頬をかきながら言う。

「それにしても随分効率の悪い呪殺を選んだね。それだけの知識があれば、もっと効率の良い方法があったと思うけど」

 すると土谷は、苦笑する。

「賭けだったんだよ。こいつの運がどれだけ良いのかって」

 良一が首を傾げる。

「どういうことだ、運がどういう関係があるんだ?」

 較が解説をする。

「相手の術に対する抵抗力を奪う、前提条件が、長谷川さんが良いマスに何度も止まり、それが達成される事にあったんです。だから、ルーレットの目が悪かったら、この呪殺は、成立しなかった。それに、良いマスの事象を再現するのにも限界があるから、よっぽどの幸運が長谷川さんにあったと思うよ」

 土谷が頷く。

「そう、同じ相手を好きになって恋人になったのや、同レベルの論文を上げて、トップになったのが、幸運のおかげじゃ無かったら発動しない様にしてあったんだよ!」

 その一言に較は、全てを察知して溜息を吐く。

「術は、あちきが解除しておきました。後は、二人で話して下さい」

 その場を離れ、良一に恋人が居るって事実に呆然としている優子を背負って良美と一緒に病院を出て行く。

 完全に二人っきりになった後、土谷が言う。

「俺だってずっと偶然や実力の差だと思おうとした、だけどどうして、何時もお前が一番で、俺が二番なんだよ。俺達の論文にそんなに差があったのか!」

 良一が答えられないで居ると土屋が睨みつけて言う。

「だからこんな事までして確かめたかったんだよ。結果がこれだ! 運なんてもんで負けるなんて、俺は、納得いかないんだ!」

 良一は、覚悟を決めた顔で言う。

「確かに俺は、幸運なのかもしれない」

 土屋が忌々しげに言う。

「だろうな、家庭教師の教え子のクラスメイトが偶々、闇の世界の住人だったなんて、幸運過ぎるぜ」

 良一が頷く。

「それもそうだが、一番の幸運は、お前が友達って事だよ。お前が傍に居たから、彼女にも会えたし、良い論文も書けた。お前が居なかったら、僕もここまで出来た気がしない」

 意外そうな顔をする土谷。

「まさかまだ俺を友達だと思ってるのか?」

 良一が真摯な目で言う。

「僕は、友達で居たい。でも、土谷は、幸運な僕とは、友達で居たくないかも知れないな」

 少し悲しそうな顔をする良一を見て土屋が頭をかいて言う。

「俺の負けだ。しかし、本当に良いのか? またお前の幸運を恨んで、呪殺するかもしれないぞ?」

 冗談交じりの言葉に良一が笑顔で答える。

「その時は、また幸運で助かるはずだよ」

 爆笑する二人が、やってきた看護師にこっぴどく怒られたのは、言うまでもない事である。



「あのキスは、全部偽りだったの?」

 呆ける優子を見ながら良美が言う。

「ヤヤは、実際どう思う? 幸運だったから優子の家庭教師がトップを取っていたと思うか?」

 較が苦笑する。

「もっと単純な理由だよ。あの二人の担当教授って女性なの。同じレベルの論文の場合、顔が良い、長谷川さんを選んでたの」

「くっだらねー!」

 良美の言葉に較も頷くとようやく少し落ち着いたのか優子が言う。

「今回の事は、ありがとうございます。でも、白風さんって何者なんですか?」

「闇の世界の住人で、三百万ドルの賞金が掛かってる有名人」

 良美の言葉に優子が青褪める。

「まさか、クラスメイトに犯罪者が居たなんて!」

「ヨシ!」

 較が怒鳴ると、良美は、逃げていく。

 その後、詳しく事情を説明して優子に納得して貰うのには、数日を要した。

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