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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
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滅びの名を付けられた塔

現代に蘇るバベルの塔。その塔の目的とは?

「ねえ、折角の観光なのに単語帳を覚えるのって変だと思うぞ」

 良美の言葉に較がきつい目で言う。

「そういう言葉は、一次試験を全部失敗した人には、言う権利は、ありません」

 智代が苦笑する。

「ものの見事に全部落ちたのには、笑ったな」

 優子が肘で突き言う。

「言い過ぎです。とにかく、次に二次試験に受かる為にも少しでも勉強しておくのは、正解ですよ」

 嫌そうな顔をする良美。

 この日、較達は、学校の行事で、バスである建物を目指していた。

「随分中途半端な時期の行事だよな」

 雷華の言葉に較が答える。

「イベント関係者が、うちの学校の理事の一人らしいよ。受験が終わり、疲れた受験生へのご褒美らしいけど、未だに合格できていない人が居たのは、想定外だったんだろうね」

 良美が口を膨らませて言う。

「それじゃあ、あたしが悪いみたいに聞こえるよ」

 エアーナがはっきり言う。

「受験に失敗した良美が悪いに決まってるよ」

 良美が他のメンバーに救いを求める視線を向けるがだれも視線を合わせない。

「ヨシは、馬鹿だからな!」

 良美の幼馴染、大山オオヤマ良太リョウタがあっさり言う。

「スポーツ推薦で合格したあんたには、言われたくないよ!」

 良美が怒鳴る。

 雷華が首を傾げる。

「そういえば、何でスポーツ推薦の話ないんだ? 確か全国大会出場経験者だろう?」

 較が遠い目をして言う。

「楽勝って甘く見て、推薦の簡単な試験で落第点とったんだよ」

 雷華が呆れた顔をして言う。

「救いが全く無いな」

 そんな時、智代が窓の外を指差す。

「あれが、これからいく所でしょ」

 バスの中の視線がこれから較達の行く完成したばかりの建物に集中する。

 較が頬をかきながら言う。

「正直、あまり行きたいと思う名前じゃないんだよね」

 智代が首を傾げる。

「でも、タワーオブバベル、どっかで聞いた事あるようなメジャーな名前だよね」

 較が頷く。

「悪い意味でメジャーなの」

 良美が手をあげる。

「知ってる超能力少年が住んでるんだよね」

 較が睨む。

「アニメの事だけは、ちゃんと覚えてるんだね」

 エアーナが言う。

「違うんですか?」

 較が少し困った顔をして答える。

「アニメのその塔も同じ塔を元にしているから間違っていないよ。旧約聖書に出てくる塔で、天に届くなんてばかげた事を考えて立てた挙句、神の怒りに受けて崩れたと言うのが俗説。細部が色々と異なる場合があるけど、出来ない計画の代名詞と言われるほど、縁起が悪い名前だよ。その名前を建物につけるのは、悪趣味としか言えないよ」

「確かに悪趣味ですけど、船にタイタニックとつけるとかよくある話しですよね?」

 優子の言葉に較が頷く。

「絶対の自信から、最悪の名前をつける傲慢な人が多いのは、確か。でも悪い結末が付きまとう。バベルの塔もロシアで実際同名の塔が建てられようとしたけど結局、完成しなかった」

 そんな会話をしている間にも、目的のタワーオブバベルに到着する。



「このタワーオブバベルの完成祝賀イベントへの参加、感謝する。私が、このタワーオブバベルの主、覇道グループ総帥、覇道ハドウ龍一リュウイチだ」

 強い覇気を感じさせる髭の濃い男、覇道龍一の挨拶を斜め聞きしながら、立食形式になっている食事を食べる良美。

「偉そうだけど何もんだ?」

 較が溜息を吐いて言う。

「面接とかに出るんだからちゃんと新聞を読んでって言ったのを守ってないね?」

 良美が首を傾げるので較が答える。

「覇道グループって言えば、日本でも有数の多国籍企業で、製鉄から自動車製造まで行う、製造業の雄だよ」

「それは、表向きで、裏に回れば軍事兵器の製造販売を行っている。特にテロ組織にそれを回している事でアメリカから睨まれている存在だ」

 その男性の声に較がふりかえると、一見すると普通そうだが、その瞳の奥に強い野心を秘めた男、雨林ウリン十斗ジュットが居た。

「貴方が居るって事は、この建物もただの建物じゃないって事?」

 較の質問に十斗が頷く。

「そうです、裏業界では、覇道龍一がこのタワーオブバベルを使って大事を起こそうとしているらしいと情報が流れています。今回の目的は、それに関係する技術の入手です。その一番のターゲットは、覇道の隣に居る男性ですよ」

 十斗が指差す先には、眼鏡をかけた中肉中背の覇気をあまり感じられない、所謂学者タイプの人間が立っていた。

「彼の名前は、大道ダイドウミノル、このタワーオブバベルの設計を任された人物。極秘裏に手に入れた設計図をそっちの連中にみせたら、彼の才能をべた褒めしていましたよ」

 小さく溜息を吐き較が釘をさしておく。

「裏業界には、洒落にならない化け物が隠れているから気をつけてよね」

 十斗が不敵な笑みを浮かべて答える。

「大株主の貴方に損をさせません」

 そのまま、行動を開始する十斗の後姿を見て良美が言う。

「あれをほっておいて良いのか? 正直、かなり危険な香りがするぞ」

 較も頷く。

「それでも、あれは、止まれば死ぬ回遊魚。無理やり止めたら最後、それまでのつけが一気に来て本人を押し潰す。何かを本人が掴むまでは、どうしようもないよ」

「そんな過去に負けない何かをか?」

 良美の言葉に較が頷く。

「あちきにとってのヨシみたいな存在が出来れば良いんだけどね」

 重い会話をしている所に智代達が来る。

「良美にヤヤ、こっちに面白いアトラクションがあるよ!」

「本当か! 今行く!」

 良美はすぐさま切り替え、智代の方に向っていく。

「あの性格があちきを助けてくれてる」

 較も呟き、後を追った時、すれ違った男を振り返る。

 その男は、外見上は、普通に映るが、ヤヤの気を感じる感覚には、強い殺意の気配を察知させた。

「腕前は、そこそこだけど、殺気の先は、覇道龍一。一筋縄では、行かない相手だよね」

 人事なので、較は、そのまま良美達と合流するのであった。



「面白かった!」

 良美が嬉しそうに背伸びをし、他のメンバーも同感と頷く。

 一人、較だけが周囲をキョロキョロ見回す。

「白風さん、どうしたんですか?」

 優子の言葉に較が答える。

「建物が密閉された。窓一つ開いてない」

 首を傾げる智代。

「それがどうかしたの? 呼吸が出来なくなるわけじゃ無いでしょ?」

 較は、周囲の特に知人の気配を確認しながら言う。

「さっき知り合いからこの建物が特別だって聞いてから確認してたんだけど、この建物は、一種の魔力装置、流石に効果までは、詳しく調べてないから解らないけど、万が一にも起動に巻き込まれたら面倒な事になる。急いで出よう。知り合いに声をかけて」

 立ち上がる較だったが、遅かった。

『お楽しみの所、失礼する。これより君達には、この覇道龍一が神になる為の生贄となってもらう』

 いきなりの覇道龍一の声にざわめく来客者。

「ふざけるな!」

「付き合ってられるか!」

「扉が開かないぞ!」

「こっちもだ!」

 ようやくとんでも無い事態になった事に気付き騒ぎ出す。

 優子が慌てふためく。

「どうしよう、大変な事になってる!」

 しかし、他のメンバー特に良美は、平然と言う。

「今時、神になるなんて恥ずかしい台詞を言えるあのおじさんの根性に拍手したいな」

 雷華も乗ってくる。

「そうだよな。この時代に神だって、笑わせてくれるよな」

 智代が思案顔で言う。

「でも実際神様になって何するんだろ?」

 雷華が手を大きく振って言う。

「駄目駄目、そういう奴は、神になることしか考えてない馬鹿が多いから。あたしも昔、吸血鬼に憧れて居た馬鹿と何度か会った事があるけど、吸血鬼になった後、何するかなんて全然考えて無かったもん」

 落ち着いた雰囲気に戸惑う優子の肩をエアーナが叩く。

「トラブルメーカーのヤヤの傍に居ると、こういった事態に慣れっこになるみたい。優子さんもそのうち理解できるよ」

「そうでしょうか?」

 優子の質問に悟った様子のエアーナが頷く。

 較は、大きな溜息を吐いて言う。

「あまり落ち着いてないでよ、流石に今回は、学校の人間全員を助けないといけないから大変なの。混乱してないんだったら、学校の人間に声をかけて、落ち着かせて来てよ。その間に対策を考えるから」

「了解。皆、行こう」

 智代があっさりそういうと、雷華とエアーナ、優子と一緒に学校の人達の所に行く。

「それで、どうするんだ?」

 良美の質問に較が答える。

「単純に学校の人間を助けるだけだったら、壁に穴でも空けてそこから脱出しておしまい何だけど、この騒動を放置したら、智代達が責任を感じるかも」

 良美が頬をかいて言う。

「相変わらず身内優先だな。いっそのこと解決しちまえば良いんじゃないか?」

「八刃の不干渉のルールに抵触するからあまりやりたくないんだよね」

 その時、天井が割れて、巨大な頭が三つある犬が現れる。

『われは、ケロベロス、地獄の番人。お前等は、地獄に行く事が決定した。我がそれまでお前等を見張る事になるであろう』

 少し驚いた顔をする良美。

「あれがゲームとかでは、有名なケロベロスなんだ」

 較が手を横に振る。

「作り物だよ。神話で語られるケロベロスと同じ物じゃないよ」

「証拠あるの?」

 良美の質問に較があっさり頷く。

「伝説に語られる化け物の場合、時代を感じさせる濃い気が流れているもんだよ。それなのにあのケロベロスは、よくて一ヶ月、その程度の気の成熟度しかない」

 因みにそんな会話をしている間に、腕自慢の格闘家や剣道の達人、はては、警備員がケロベロスに向っていき、倒されて居た。

「あれは、どのくらい使えそうな物ですか?」

 いつの間にかに現れた十斗の質問に較が答える。

「製造コスト次第だけど、一億を切るんだったら商売になるレベルだよ」

 十斗が満足そうに頷いて動こうとした時、較がその手を掴む。

「情報をあげたんだから、少し手伝って」

 十斗が少しだけ考えてから即答する。

「何なりと仰ってください」

 較が笑顔で言う。

「何、ちょっと代理人をやってもらいたいだけ」

 そして較は、十斗にいくつかの事を告げる。

「了解しました。その役目、任せて下さい」

 そのまま、十斗は、ケロベロスの前に移動する。

『次の身の程知らずの愚か者は、お前か?』

 ケロベロスの言葉に十斗は手を横に振る。

「違いますよ。私は、単なる代理人。この会場に来ている、八刃の一つ、白風の次期長からの伝言だ」

 その一言にケロベロスも動きを止める。

 そして十斗が伝言を開始する。

「この会場に自分が居る。そちらの計画の邪魔をする気は、無いが、このまま計画を実行すれば、自分と自分の知り合いに危害が及ぶ事が考えられるので、抵抗する。もし計画を中止するのであれば、その際に発生した損害については、保証する用意がある。詰り、今回は、計画を中断し、別の機会に仕切りなおせば、損害は、補償するが、どうしても続行する場合は、自己防衛の為に計画を粉砕するって意味ですよ」

 それに対して、会場に再び覇道龍一の声がする。

『神になる我が、人外など恐れぬ。邪魔をしたければ邪魔をすれば良い。神である我が手で打ち滅ぼしてくれようぞ!』

 十斗が肩をすくませて言う。

「そうですか、了解しました。私は、伝言が終わったのでこれで失礼します」

 そのまま人混みに紛れる十斗。

 良美が笑みを浮かべる。

「これで戦えるね」

 較が少し嫌そうに言う。

「学校の人間にばれないようにするのは、大変だよ」

 そういいながらもケロベロスに近づく。

『小娘、なんおつもりか知らぬが、近づけば食らうぞ!』

『バハムートホーン』

 較の気の篭った拳がケロベロスを打ち上げ、本人ごと上の階に移動させる。

『たかが人間が、死ね!』

 ケロベロスが炎を吹き出す。

『カーバンクル』

 あっさり弾き較が近づく。

「作られた命でも、命令違反してでも生き残りたいなら言いなよ。見逃してあげるから」

『人間なんかに情けを掛けられたくない!』

 その三つの口で襲い掛かるケロベロス。

 しかしケロベロスが口を開き、自ら死角を作った瞬間に較が近づき、胸に手を当てる。

『インドラ』

 一撃で感電死させる。

「もう終わったの?」

 階段から上がって来た良美に較が振り返る。

「智代達には、断ってきた?」

 良美が頷く。

「うん、ここのラスボスを退治しに、タワーアタックするって言っておいた」

「OK。それじゃあ行きますか、魔力の流れからして、敵は、最上階だよ」

 較の言葉に良美が興奮する。

「やっぱりラスボスは、最上階か、最下層に居るもんだよね」

 こうして、二人は、崩れる事を約束された名前を引き継ぐ塔の主の下に向うのであった。

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