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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
39/52

国を滅ぼす力

大暴れの八刃の長達、それを止めらるのか?

 ポルポドの中枢部に向かう車の中、較が苛立ちながら言う。

「本来ならこんな事は、ありえないんです。以前にもオーフェンの大きな動きがあった時があったけど、長二人動くにも、国連の大反対を食らったんですから。こっちから提出した資料だけで、長三人が動けるなんて異常事態なんです」

 スミソンが唾を飲み込みながら言う。

「よく解らないが、それが異常な事なのか?」

 較が頷く。

「本来は、八刃の長の行動は、国連への報告が必要であり、まとまった動きに関しては、承認が無い限り駄目ですし、動くに値するだけの証拠の提出が必要なんです。あちきのお父さんなんて、娘のデートの監視をする為に自国に戻っただけで、ペナルティーを食らったぐらいです」

 不可解そうな顔をして、スミソンが言う。

「どういうことだ? 何で今回だけ、そんなイレギュラーが通ったのだ」

 較が申し訳なさそうな顔をして言う。

「あちきが送った資料の中に核ミサイルの情報があったからです」

 スミソンの顔に驚きが浮かび、直ぐに苦虫をかんだ顔になる。

「噂では、聞いていた。しかし、それが、今回の決定にどう繋がるのだ?」

 較が嫌そうに言う。

「国連、正確に言えば、列強国がポルポドに介入する為に八刃を利用して、ポルポドの軍事力を消耗させようとしているんですよ」

 スミソンが怒鳴る。

「そんな無法が通るのか!」

 較が溜息を吐く。

「表のルールだったら、確証があった上で、複雑な手続きを踏まえない限り、不可能ですね。しかし、今回は、八刃の持つ特殊ルールに国連が便乗した。今回の事件は、全部、適当に誤魔化される事になります」

 スミソンが車のハンドルを叩きながら言う。

「何か手は、無いのか!」

「だからこそ、中枢に向かってるんですよ。オーフェンの研究を破棄する決定を八刃に出せば、八刃が干渉する理由が無くなり、国連も便乗できなくなる。後は、表のルールで交渉していけばいい事です」

 較の答えにスミソンが舌打ちする。

「結局は、そこにたどり着くのか。どうにか時間を稼げないのか? 数日あれば、父は、処刑される。その後ならば確実に声明を出せる」

 較が首を横に振る。

「八刃は、他所の国の事情なんて考えません。国連の反発も無いので、希代子さんも強く出れない。遠糸と神谷の長が少し強引だと反対意見をあげたみたいですが、オーフェンの六頭首が二人も動いていた実績がある以上、出来るだけ早い対処には、反対しきれなかったみたいです」

 アクセルを踏み込み、スミソンが言う。

「今は、一刻も早く議会に向かわなければ!」



 ポルポドの中枢、議会本部。

 ここでは、ゴッラー将軍派の人間が、必死に対応に追われていた。

 四方に存在する基地のひとつを失い、防衛の隙間に対する対応と、人体実験に対する反発を抑える工作、同時進行で、ぴりぴりした雰囲気が辺りを覆っている。

 そこにスミソンが来て怒鳴る。

「ゴッラー将軍は、何処に居る!」

 兵士の一人が慌てて答える。

「奥の司令室に居ます」

 スミソンが較と一緒に司令室に入ると、そこには、ポルポドの重鎮達が揃っていた。

 敵意に満ちた視線がスミソンに集まる。

「何しに来た!」

 一番奥で、殺意に近い視線を向ける太った男、ゴッラー将軍の言葉にスミソンが答える。

「今すぐ八刃からの要求に答えてください。そうしなければ、この国が終ります。ここに居る八刃側の人間から情報をリークしてもらいました。貴方が核を持っている事実が国連に発覚し、国連が、列強国が八刃の強制力を利用して、こちらに介入するつもりです。それに対抗するには、現行の軍事力が必要です!」

 ざわめきが起こる中、ゴッラー将軍が机を叩き、黙らせる。

「お前が、その者を使って調べさせた結果だろうが! お前がこの国を滅ぼすのだ!」

 周囲の全ての視線がスミソンに突き刺さるが、スミソンは、怯まない。

「処罰は、覚悟の上です。しかし、いま躊躇すれば、本当にお終いなのです。早く、あの研究の放棄を決定して下さい!」

 しかし、ゴッラー将軍がメインスクリーンにキメラを映し出して言う。

「まだだ、このキメラさえあれば、まだ巻き返しは、可能だ! 傲慢な大国どもも、核で牽制すれば良い! キメラの力は、凄いぞ! 暗殺のし放題だ! 正規の軍隊には、組み込めないが、内乱を起こしている愚か者達を掃討するには、十分な戦力になる」

 そのスペックに軍部の人間が感嘆を挙げるが、較が肩を竦めて言う。

「制御出来ない物でどうするの? それに、未来の事を気にしてるだけの余裕があると思ってるの?」

 ゴッラー将軍が言う。

「八刃の噂は、よく聞いている。オカルト紛いの力で、アメリカですら逆らえないみたいだが、そんなオカルトに屈する我々では、ない」

 溜息を吐く較。

「もしかして、呪いかなんかが八刃の力だとでも思ってるの? あのねー、八刃の長が直接動くんだよ、化学兵器なんて無意味なんだからね! 直撃さえしなければ、核ミサイルだって平気な人達なんだから」

「冗談は、止めておけ、核ミサイルを食らって平気な人間等いるか!」

 ゴッラー将軍の言葉に、周囲の人間も頷いた、その時、警報と共に、画面に残った基地の映像が出てくる。

「何が起こっている!」

『襲撃です、地上部隊が壊滅状態に陥っています!』

 基地からの連絡に、青褪める司令室。

「敵は、どれだけの戦力を投入してきたのだ!」

 ゴッラー将軍の言葉に、各基地の通信士が戸惑いながら答える。

『『『……生身の人間が一人です』』』

 スミソンも驚いた顔をして言う。

「ちょっと待て、八刃の長が動いていると聞いていたが、部下の人間も一緒じゃなかったのか?」

 較が深い溜息とともに言う。

「だから、余計に面倒なんです。余計なフォローしなくて良い場合、長クラスの人間が動いたら、通常兵器じゃ止められない。国連の連中だったら、術に長けた人間を数百人単位で投入してくる。どんな兵器持ってきても、攻撃が当る前に、意志力で無効化できますから」

「基地に被害を出しても良い! 全力で潰せ! 所詮、生身の人間だ!」

 ゴッラー将軍が叫ぶと較が肩を竦める。

「無駄なのになー」



 東のポルポド海軍基地、そこには、霧流の長、霧流六牙ムガが居た。

 その後方には、ドラゴンサンダーで、コンピューターが破壊され、鉄くずになった戦車の山がある。

「電子化が進んで、コンピューターだけ壊せば戦闘不能に出来るから、被害が少なく済んで助かる」

 意外と人的被害には、八刃も気を掛けている。

 その時、戦艦から、戦闘機が離陸し、次々と主砲が火を噴く。

「被害を広げたいみたいだな」

 霧流の長の証たる刀、竜魂刃リュウコンジンを振り上げる。

『ドラゴンフィールド』

 一般常識が捻じ曲げられ、戦艦の砲撃、艦載機の爆撃が全て、無力化されてしまう。

 砂煙が消えた後、竜魂刃が振り下ろされる。

『ドラゴンスラッシュ』

 立った一撃で、戦艦が切り裂かれ、沈没していく、それに巻き込まれ無い様に、周囲の戦艦は、逃げていくしかない。

『ドラゴントルネイド』

 突き上げられた竜魂刃から放たれた竜巻は、容易に戦闘機を墜落させていく。

「さて、基地の動力を破壊するか」

 防衛の戦車も、主戦力の戦艦や艦載機が潰された海軍基地に六牙を止められる戦力は、無かった。



 北のポルポド空軍基地、そこには、神谷の長、神谷夕一が居た。

 周囲を山に囲まれた基地を守備していた、自走砲は、全て砲門を潰されて居た。

「主砲さえ潰せば、諦めてくれる。これで余計な死人を出さないで済む」

 そんな事を言っている間に、上空には、対戦車ヘリの大軍が居た。

 戦車を一撃で破壊するミサイルが連射されるが、夕一は、気合を周囲に放ち、上空にあるうちに爆発させる。

 それによって生み出された爆風は、ヘリを撃墜していく。

 大量の戦闘機が飛び立とうとするのを見て夕一が言う。

「飛び立ったら面倒だな」

 夕一が滑走路に向かって意志力から生み出された剣、神威カムイを振り下ろす。

千里斬センリザン

 滑走路に巨大な割れ目が生まれる。

 次々と割れ目が発生し、戦闘機が離陸できない状態になる。

「燃料タンクでも潰せば、終了だな」

 離陸も出来ない戦闘機では、夕一の歩みを止めることは、出来ない。



 西のポルポド陸軍基地、そこには、白風の長、白風焔が居た。

 地面に大きな亀裂が無数に発生し、戦車を始めとする陸上兵器が仕えない状態になっていた。

 そして、悲壮な顔をして、歩兵部隊が突入する。

「怯むな! 相手は、たった一人だ!」

 バズーカーが、対戦車ライフルが、ロケットランチャーが焔に直撃する。

 しかし、火傷一つなく、兵士達の間を進んでいく焔。

「これ以上は、進ませない!」

 対人地雷を抱えた兵士達が最後の特攻を仕掛ける。

『ラフレシア』

 催眠ガスで、次々に倒れていく兵士達。

 そんな中、パワードスーツを装備した兵士達が、立ち塞がる。

 最新型パワードスーツのみに装備された最新型レーザー、電子レールガン、小型ミサイルが放たれるが、当然の様に無傷な焔。

『オーディーンカタナ』

 焔は、全てのパワードスーツの脚部を切り落として、行動不能にし、敵の中を平然と歩いていく。

「この基地の司令官を抑えれば、兵士達の抵抗も終るな」

 全ての攻撃が無意味な焔に抗おうとする者は、居なかった。



「もう手遅れの気もするけど、被害は、小さい方が良いと思うよ」

 司令室で、各基地の状況を見ていた中で唯一冷静だった較の言葉にスミソンが頷く。

「これではっきりしました。もう、抵抗するだけ無駄です。被害が増えるだけです。人的被害が少ない今のうちに研究の放棄を宣言して下さい」

 誰も反対できそうもない雰囲気のはずだったが、一人だけが狂気に取り付かれていた。

「核を爆発させれば良い。その娘も言った、核ミサイルだったら、直撃させれば有効な筈だ! あの距離なら爆発を避けられる訳が無い!」

 ゴッラー将軍の言葉に較が頭を押さえながら言う。

「本末転倒って言葉を知ってる? こっちを倒す為に基地を使えなくしてどうするの?」

 周りの重鎮達も較の言葉に同意するが、一人、ゴッラー将軍だけは、狂気のまま、発射装置に近づく。

「我等に敗北と言う言葉は、無いのだ!」

 核のボタンを押そうとした時、銃声が響く。

「父は、死んだ。父の全ては、私が引き継ぐ」

 父親を射殺したスミソンが較の方を向いて言う。

「ポルポドは、キメラの研究を全て放棄する」

 較が戸惑いを感じながらも頷き、携帯を取り出す。

「希代子さん、ポルポドが研究を放棄した。お父さんたちを止めて」

 こうして、八刃によるポルポド軍事基地壊滅作戦は、途中で中止された。



「結局、どのくらいの被害が出たの」

 ようやく、まともに喋れる様になったベッドの上の良美に、見舞いに来ていたスミソンが答える。

「十数年分の国家予算クラスだ。外部に向ける軍事力が完全に奪われた。兵士の被害が少なかったので、内部の鎮圧行動に人員を振り分けられるのが、不幸中の幸いだった」

 花瓶に花を生けていた較が言う。

「今、武力行動をとれば、八刃を利用した事になるって、周辺諸国に対しては、圧力を掛けておいた。向こう一年は、大丈夫だと思うけど、それ以上は、保障できないけど大丈夫?」

 スミソンが立ち上がり言う。

「無理でもなんとかするのが、父の暴走の犠牲になった人たちに対する贖罪だ」

 ドアに手をかけてスミソンが顔を向けずに言う。

「最後に言って良いか?」

「恨み言くらいは、聞くよ」

 諦めを含めた較の答えにスミソンが憎悪を籠めた目を向けて言う。

「お前等みたいな化物が居るからこんな事になって、国連の奴等が攻めてこないのもお前等が怖いからだ! 神様気取りで上から見下すお前達を絶対に認めない!」

 そのまま出て行くスミソン。

 何も言えない顔をする較に良美が声をかける。

「罪を責められた方が良かったって顔をしてるよ」

 較が苦笑する。

「まあね、責められるのは、慣れてる。化物扱いもね。でも見下してると思われるのは、辛いね」

 良美が頭を掻きながら言う。

「他人に理解されたいからやってるの?」

 較が首を横に振ると良美が微笑み続ける。

「ヤヤは、自分の目的を達成して、その上で被害を最低限に抑えようとした。それをあたしは、知ってる。それじゃ不十分?」

 較が微笑を浮かべる。

「ヨシが居て本当に良かったよ」



 病室で、較と良美が和やかな雰囲気になっている時、廊下では、一人の男がスミソンと会っていた。

「譲っていただきたい物があります。これは、その見返りの一部です」

 男から渡された物を見て、スミソンが驚くと同時に疑心を込めた視線を向ける。

「これだけの兵器の代わりに成る物など無い。核は、国連との交渉に必要だからな」

 男は、苦笑して言う。

「核なんて使い辛い兵器には、興味は、ありません。私達が欲しいのは、研究員です。キメラの研究をしていた彼等が欲しいのですよ」

 苦笑をするスミソン。

「キメラの研究は、徹底的に抹消されましたよ」

「でも、研究を行った実績があります。私たちが欲しいのは、オカルトを含めた兵器の開発を行える人材なのです。優秀なブレインが居るので、その手足になる人材が必要なのですよ」

 男の答えにスミソンが思案し、答える。

「即答は、出来ないが、我々には、キメラの研究員を有効に使う資金も場所も無い。前向きな検討を約束しよう」

 男が頭を下げる。

「ありがとうございます」

 スミソンが立ち去ろうとした時、思い出したように振り返る。

「名前を聞いていなかったが、名前を聞いても大丈夫か?」

 男が答える。

雹見ヒョウミ十三ジュウゾウと申します。以後お見知りおきを」

 スミソンがその名前を心に刻み、その場を後にするのであった。

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