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必滅少女伝  作者: 鈴神楽
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消滅する基地

今回は、ホワイトファングの特殊な使い方編です

「とにかく、南の基地の研究施設に潜入させて」

 較の言葉にスミソンが困った顔をして言う。

「しかし、武装をした人間をノーチェックで入れさせるのは、無理です」

 較が笑顔で答える。

「大丈夫、武装は、してない。それにちょっと恥をかいてもらえば、疑われないから」

「恥を?」

 首を傾げるスミソンであった。



 南の基地の入り口、門番がスミソンの運転する車にストップをかける。

「スミソン様、お疲れ様です」

「ご苦労。入らせてもらう」

 スミソンの言葉に門番が慌てて制止する。

「お待ちください。チェックを行います」

 そして、特殊なカメラでスミソンの車を撮り、危険物が無い事を確認する。

 較が居る事に気付き、門番が質問する。

「その娘は、何者ですか?」

 較が、スミソンの下半身に絡みつき、妖しい笑みを浮かべ、スミソンが小声で言う。

「察しろ。それとこの事は、他言するなよ」

 門番は、少し怪訝そうな顔をしたが、直ぐに卑しい笑みを浮かべて言う。

「スミソン様は、随分と若い娘がすきな様で」

 スミソンの頬が引き攣るが、較がその顔を隠すようにキスをして、小声で言う。

「潜入の為の工作なんだから、割り切ってよね」

 スミソンが必死に笑顔を作り言う。

「頼むから誰にも言うな。私にも世間体って物があるからな」

「解っております。流石に小学生を相手にするのは、問題ですからね」

 門番の言葉に、較の顔が引き攣る。

「潜入の為の工作だから、割り切れ」

 さっきのお返しとばかりにスミソンが小声で言う。

 二人は、見事に潜入を果たしたのであった。



 研究施設に入り、目的地がわかっているように較が進む。

 その後を追うようにスミソンが続く。

「ここは、父の直轄で、私も詳しいことは、解らないのだが、大丈夫なのか?」

 較は、近くの窓を指差して言う。

「その奥で、キメラ化途中の人が隔離されてるよ」

 スミソンが慌ててみると、そこでは、人の姿の崩壊を開始している人間が悲痛な叫びを上げていた。

「彼等を助けなければ」

「ここで騒いでも、貴方の父親の直轄施設、何も出来ないでしょ。写真でもとって、後で議会かなんかで問題にして、一気に救う方法を考えて」

 スミソンが悔しげに、隠し持っていた小型カメラでその風景を撮る。

「目が良いのだな?」

 較が首を横に振り、答える。

「微妙な気を周囲に放出して、その返りで探索してるの。今向かってる先に、あちきの親友が囚われている。ヨシを救ってから、本格的な証拠の確保だよ」

 スミソンは、意味不明な単語に、戸惑いながらも較の後についていく。



「放しなさいよ!」

 良美が問答無用で暴れている。

 研究員達がその様子にへきへきし、その中の一人がぼやく。

「いっその事、この娘もキメラの材料にしちまうか?」

 それに対して、良美の隣に囚われていたツバサが言う。

「そいつは、アースオブウエイトだ。誘拐するだけでも危険なのに、危害を加えれば、お前達は、破滅させられるぞ」

「そうね、それにこの子は、実験材料とするのには、危険すぎる。体内に八百刃獣の肉片があるのと同じだから。下手をすると暴走して、この周囲を完全に消滅させかねない」

 魔磨の言葉に、冷や汗を垂らす研究員達。

「理解してもらえて助かる。ついでに、大人しくしているから、俺も除外しておいてくれ。さっきも言ったように、重要な機密は、持たされていない、単なるメッセンジャーボーイなんだ」

 魔磨が苦笑する。

「貴方の事は、よく知ってるわ。なんせあの最強の鬼神と接触できる数少ない人間の一人。あたしの仲間が貴方に強い興味を持ってるの。貴方に侵食すれば、あの最強の鬼神を暗殺するチャンスが出来るって」

 小さく溜息を吐くツバサ。

「見逃してもらえないんだな?」

「当然。さっき言った仲間がもうすぐ引き取りに来るから。そちらに引き渡すわ」

 魔磨の答えに、ツバサは、内心安堵の息を吐く。

『直ぐに殺されたり、何かされる心配は、無いって事だな。後は、ヤヤがどれだけ早く動けるかだ。頼むぞ』

 そんな事を内心に考えながらも落胆の表情を浮かべるツバサであった。



「ツバサの残した暗号から六頭首が関ってるのは、解ってたけど、実物見ると、辛いな」

 研究室にあっさり潜入した較が隠れ所で呟く。

「あの娘は、強いのか?」

 スミソンの質問に較が答える。

「あちきは、あいつと同クラスの奴等と何度かやりあったことあるけど、あちきの本来の能力じゃ勝てなかった。今回も居る事が判明したし、その証拠も手に入れたから、上手くヨシを助けて、逃亡するつもり。研究の方は、本隊の方がなんとかしてくれると思うから安心して」

 スミソンが言う。

「それは、仕方ないが、幾つか具体的な証拠が欲しい。それには、協力してもらいたい」

 較が頷き、隙を窺って居ると、魔磨が何かを察知したように言う。

「到着した、見たいね。迎えにいきますか」

 そして、魔磨がその場を離れる。

「グットタイミング、魔磨の気配が完全に離れたら、突っ込むよ。その間に、適当な研究員を掴まえて、そいつを連れて、逃げ出すよ」

「それがベストだな」

 スミソンも同意したので、タイミングを見計らい、較が良美に向かって駆け出す。

「貴様、何者だ!」

 研究員が叫び、警備兵が銃を乱射する。

『アテナ』

 銃弾を弾きながら、較が良美を確保する。

「お待たせ」

「遅いぞ!」

 良美が文句を言う中、ツバサが叫ぶ。

「急げ、六頭首がもう一人来たみたいだ、逃げられなくなるぞ」

 較が舌打ちをして、腕をふる。

『ヘルコンドル』

 カマイタチがツバサの束縛を外す。

 そして、較が証拠を撮った機械を投げ渡す。

「先に逃げて、時間稼ぎは、あちきがするから」

 ツバサは、あっさり頷くと、一目散に魔磨がいった方向とは、逆に向かって走り出す。

「逃げ足だけは、速くなったね」

 良美の言葉に較が言う。

「危険に対する嗅覚も鋭いみたい。見事に、危険な場所を避けて、廃棄施設から脱出企んでるよ」

 その間にも、スミソンは、研究員の中の一人を掴まえていた。

「この男は、表向きにもそれなりの地位に居る人間だ。証言させるには、丁度良い」

 較が舌打ちする。

「強い気、魔磨がこっちに向かってる。今からまともな出口に向かったら面倒だね」

 近くの壁に手を当てる。

『ツインテール』

 強力な二連撃で、本来なら戦車砲すら耐える壁を粉砕して、道を作る較。

「急いで逃げるよ!」

 スミソン達を先に逃がして、較が魔磨と相対する。

「必殺の白手、散々我々の作戦を邪魔してくれたみたいね。ここで、仕留めてあげる」

 魔磨が自分の血をキメラが入っている水槽に垂らしこむ。

 それと同時に、キメラが異常発達し、周囲の研究員を吸収して、更に巨大化していく。

 較が舌打ちする。

「混在しちゃったら、元には、戻すのは、不可能。倒すしかないね」

 襲ってきた鳥の羽と恐竜の体を持ったキメラに向かって地を這うように進み、足払いを入れる。

 バランスが崩れたたキメラの腹に拳が当る。

『バハムートホーン』

 腹に大きな穴を作りながらもキメラは飛び上がると、急降下して較に迫る。

「避けてもいいけど、その下は、発電プラントがあるから、大惨事よ」

 魔磨が牽制を入れてくる。

『ミノタウロスマント』

 較は、落ちてくるキメラを触れた所から、慣性の方向を変更して横の壁にぶつける。

「この程度でどうにかなると思ってないですよね?」

 較に言葉に、魔磨が頷く。

「当然よ。こっからが本番よ」

 ただでさえ大きなキメラが、くっつき更に巨大化し、建物を破壊して、近くにあった兵器を取り込み始める。

「これが、この国の研究成果よ! 化学兵器を取り込むことで、その戦闘力を格段にアップする。凄いでしょ?」

 サイレンが鳴り響き、軍人達が必死に抵抗するが、被害が広がる一方であった。

 較は、呆然としていたスミソンを掴み言う。

「急いで、全員避難させて」

「あんな化物をどうすると言うのだ!」

 感情的になっているスミソンに淡々と較が答える。

「この基地を消滅させる。地下の発電プラントを爆発させれば可能でしょ?」

 唾を飲み込み、スミソンが戸惑うが頷く。

「解った。二十分だけくれ」

 そして、近くの将校を捕まえて、準備を開始するスミソンを尻目に較は、巨大になった化物を見て言う。

「あれ相手に時間稼ぎか、面倒だね」

 そんな時、良美が声をかけてくる。

「ヤヤ、もう一人の幹部って何処行ったんだ?」

 較が慌てて気配を探る。

「やばい、ツバサの方に行ってる!」



「逃げ切れるか?」

 ツバサが基地を抜け出した時、基地のほうからサイレンが鳴り響く。

「やっぱり大事になってるな」

 ツバサが勘だけで横に飛び退く。

「いい勘をしてるわね」

 そこに現れたのは、六頭首の一人、メイダラスであった。

「全然、おびき寄せてないじゃないかよ!」

 文句を言うツバサにメイダラスが微笑む。

「あたしの目的は、最初から貴方。この国での作戦がどうなろうと関係ないのよ」

 にじり寄る、メイダラスにツバサが大きく溜息を吐く。

「空港まで逃げられたら、儲けが大きくなる筈だったんだけどな」

 その一言にメイダラスが眉を顰める。

「何を言ってるの? 逃げられると思ってるの?」

 ツバサが胸から下げていたペンダントのスイッチを押す。

「自力で、戻る方が報酬は、高かったのにな」

 メイダラスが舌打ちして、近寄るが、ツバサは、拳銃を連射する。

 メイダラスは、それを見て、慌てて飛び退く。

「普通の弾丸じゃないわね!」

 ツバサが頷く。

「当然。こっちだって命が掛かってる。それ相応の装備くらいしてる」

 その間にも空間がゆがみ、霧流の長の奥さん、八子が現れる。

「お待たせ。日本に帰るわよ」

「逃がさない!」

 メイダラスが腕を触手の様に伸ばして八子達に襲い掛かるが、何故か、その手は、八子達を避けて進んでいく。

 そのまま消えていく八子。

「新名(ニイナ)の巫女、八刃の奴等も面倒な奴を味方にしている」

 メイダラスが悔しそうにするのであった。



「いざって時の事を考えて、八子さんコールを渡しておいて正解だったね。まあ、予算オーバー分は、あちきが出す事になるんだろうな」

 較が、次から次へと放たれる戦車砲の余波を受けながら呟く。

「まさか、新名の巫女を引っ張り出してくるとは、思わなかったわ」

 魔磨が悔しそうにすると較が言う。

「まあね、本来なら、何処でもいける八子さんの能力は、八刃の中でも奥の手、どこかの馬鹿親じゃないとそうそう使う訳には、いかないけど、一般人のツバサさんの安全には、代えられないからね」

 遠くから良美が声をかける。

「ねえ、ヤヤ、さっきから気になってるんだけど、何で戦車砲が一発も当らないの!」

 較が肩を竦めて言う。

「戦車砲や戦闘機は、対人兵器じゃないの。だから、人間を標的にするのは、難しかったりするの。一応対人装備もあるけど、そんなのは、食らっても平気だしね」

 キメラが取り込んだ軍事ヘリのマシンガンの弾丸を平然と受けている較であった。

 魔磨が大声で宣言する。

「遊びは、ここまでよ、大きなのを食らわせてやりなさい!」

 キメラの両腕から、凶悪な破壊力を秘めたミサイルが放たれる。

 較は、慌てて良美の傍に行き、手をあげる。

『フェニックス』

 炎の鳳凰を生み出して、ミサイルに打ち込む。

 大爆発と共に、基地の地上部が炎に包まれた。



「避難は、完了したか?」

 スミソンがそう質問した時、基地から爆発音が聞こえ、そして目の前に居た将校が複雑な顔をして言う。

「もしも、生き残りが居たとしても、あの爆発では、生存は、絶望的です」

 スミソンは拳を握り締めて言う。

「避難が完了していた事を祈ろう」

 将校も頷くしかなかった。

「もっと早く、父の計画を止めるべきだった」

 スミソンの悔しそうな呟きに、将校達は、何もいえなかった。



「地獄絵図って感じだね」

 良美の言葉が示すように、そこは、炎に包まれ、一時間前までは、人が居た事を否定するように、炎が視界を覆っていた。

「ここでの研究は、お終いね。しかし、貴女の命だけは、貰うわ!」

 そう宣言をしながらも、魔磨は、基地から離れていく。

「負け犬の遠吠え?」

 良美が首を傾げた時、較が舌打ちをする。

「やられた、キメラに発電プラント取り込まれた。暴走させて、完全に消滅させるつもりだよ」

 良美が聞き返す。

「逃げられないの?」

 良美の質問に、較が答える。

「基地の人も知らなかっただろうけど、核もあるんだよ。あちきは、核だけは、放射能とか漏らさないように結界張ってから爆発させるつもりだったけど、このまま暴走されたら、この周囲が死の灰に覆われる事になる。少なくとも逃げた軍の人は、被爆するよ」

 良美が較の表情から何を考えてるのか察知して言う。

「あたしの危険度は、考えなくて良い。ここは、おもいっきりやって。あんな奴等の思惑通りにすすませてなるもんですか!」

 較が笑顔で言う。

「ありがとう」

 較の右手から、白い光が漏れる。

『ホワイトファング』

 上空に全てを滅ぼす白い光が放たれた。

 光が消えない間に較がもう一度叫ぶ。

『ホワイトファング!』

 上空の光と二発目の光がぶつかった時、その力の大半は、相殺された。

 本当のちからの何億分の一の力が基地を襲った。



『謎の南方基地消滅についての続報ですが……』

 問題の事件をテレビで見ながら、スミソンが言う。

「何をやったんだ? 一つの軍事基地をクレータに変えるなんて、たんなる発電プラントの爆発じゃないだろう?」

 ホワイトファングの連発の影響で呻いている良美の看病をしながら較が答える。

「企業秘密。それより、そっちは、どうなってるの?」

 スミソンが不服そうな顔をしながら答える。

「父が最高権力者の地位を追われるのは、明白だ。人体実験を行った上、軍事基地一つを無くしたのだ。全責任をとらされて、処刑されるだろう」

 較が頬をかいて言う。

「何て言えば良いのか解らないけど、良いの? 協力してもらったんだから、逃がす手伝いくらいだったらするよ?」

 スミソンが首を横に振る。

「仕方ない事だよ。父は、それだけの事をしたのだから」

 重い空気の中、較に電話が来て出て暫く話していたが、表情が急変する。

「冗談でしょ? 幾らなんでもそんな事を国連が認める訳無いじゃん!」

 較の予想とは、異なる返答に較が苦々しい顔をして頷き電話を切る。

「大変な事になったよ。今さっき、八刃からポルポドに正式な通達があった。オーフェンに関する全ての研究の即時廃棄。了承が出来ない場合、実力行使に移るって言ってる」

 スミソンも驚いた顔をする。

「何の冗談だ。国連軍でも動かすつもりか!」

 較が首を横に振る。

「もっと大変だよ。八刃の上層部が直接動く。最悪なのは、あちきのお父さん、霧流の長に神谷の長の三人が残った軍事基地を直接潰す段取りになってる。もし実行されたら、この国の軍隊が壊滅するよ」

 唾を飲むスミソン。

「冗談だろう?」

 較が真剣な顔をしてスミソンを見る。

「軍事力がなくなるって事は、無防備になるって事だよ。一刻も早く、オーフェンの研究の破棄を認めさせないと、この国が滅びる」

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