テスト勉強を邪魔する者達
今回は、休憩、良美のテスト勉強の為、較が大門家に泊り込みます
「緊急事態だって事を理解して!」
較の言葉に良美がそっぽを向く。
「そう?」
較が強く頷く。
「あと期末試験まで一週間しかないのに、こんなんでいいわけないでしょうが!」
不正解がならぶ小テスト用紙を突き出す較。
「成績が悪くても、別に卒業できなくなるわけじゃないんだから、良いじゃん」
良美の答えで、脱力する較に、良美の母親、鶴美が申し訳なさそうに言う。
「本当にごめんなさいね。この底無しスカタン娘が苦労をかけて」
良美が不満げな顔で言う。
「第一、どうしてあたしの家に泊り込みで勉強するの? ヤヤの所でいいじゃん!」
鶴美が良美の前に立ち言う。
「知りたい?」
顔を引き攣らせる良美を睨みながら鶴美が告げる。
「あなたが、ヤヤちゃんが甘いのを良い事に、サボりまくるからでしょうが! 出された課題が済むまで食事も睡眠も無し、良いわね!」
「えー虐待だ!」
良美が文句を言うと、鶴美がその頭を鷲掴みにして、較達の前から消える。
戻って来た時には、良美は、大人しくなっていた。
「それで、しばらくは、この大門家を完全ガードするんですか?」
普段は、良美のガードをしている右鏡の質問に較が頷く。
「すまないけど、試験が終るまでここに泊り込みなの。家に居る時と違って、騒ぎにしたくないから、近づいた時点で知らせて、問答無用で排除するから」
左鏡が顔を引き攣らせる。
「さすがに問題ありませんか?」
較が遠くを見て答える。
「暗黙のルールでは、問題ないよ」
右鏡と左鏡が冷や汗を垂らす中、較が一万円を置いて席を立つ。
「責任は、あちきがとるから気にしないで」
較が去った後、左鏡が言う。
「本当に良いのでしょうか?」
右鏡がやけくそで答える。
「白風の次期長の言葉だ、逆らえる訳が無いだろうが」
「良いわけは、ありません」
そう言ってきたのは、零刃の幹部の一人、白水零子であった。
「次期長の手を煩わせないように、平和的に退散させないといけません」
「「了解」」
深く溜息を吐く右鏡と左鏡であった。
「でも、ここって竜夢区だから、そうそう、危険人物が入ってくる事は、無いよな?」
右鏡の希望的予測は、左鏡の諦観した言葉で否定される。
「ヤヤさんが関って、トラブルを巻き込まないわけがありません」
その言葉通りに、目の前を何かを大事そうに持った女性が通り過ぎていく。
その後をいかにも術者風な男達が追いかけていく。
右鏡は、大きく溜息を吐いて、女性の前に回りこむ。
「その物を渡しなさい」
その言葉に、女性が右鏡を睨む。
「貴方もあいつらの仲間ね」
右鏡は、肩を竦めて言う。
「違うけど、竜夢区には、そういった争いを持ち込んでは、いけないルールになってるのよ。それをやった貴女を取り押さえる権利は、あたし達には、あるの」
油断なく、拳銃を構える女性であったが、影から現れた左鏡が現れて問題の物を奪い取ると、後ろから迫って来ていた男に投げ渡す。
「竜夢区から立ち去って下さい。もしも、一時間以上居た場合、強制排除します」
男達は、戸惑うが、問題の物が手に入ったからか、その場から離れる。
「待て!」
女性が追いかけようとしたが、右鏡が肩を掴む。
「何度も言わせないで、ここで問題を起こすと言うなら、ただで済むと思わないで」
女性は、右鏡を睨む。
「あれがどんな危険な物か解っているのですか! 下手をすれば東京が壊滅するかもしれない物なんですよ!」
右鏡が肩を竦める。
「あのね、たかが都市一つ壊滅するレベルで騒がないでよ」
女性がくってかかる。
「信じないつもりですか?」
左鏡が疲れた顔で言う。
「この地区には、都市一つ壊滅させる物や人など山ほどあります。極めつけは、地球すら壊滅させかねない爆弾を抱えた人が、すぐそこの家に居ます。その人に干渉されると困るんです。貴女は、たかが東京一つの為に地球を壊しても良いのですか?」
女性が怒鳴る。
「ふざけた事を言って! こっちは、本当なのよ!」
右鏡が流石に切れたのか、襟を掴み持ち上げて言う。
「ふざけているのは、そっちだろうが! こっちの世界の住人の癖に、竜夢区に無断に潜入しているそれだけでも問題なんだよ!」
女性が呻いていると、携帯が鳴る。
右鏡が溜息を吐いて、地面に降ろす。
女性は、携帯を取り出す。
「すいません。例の物が奪回されました。いえ、何か知らない連中が邪魔をしました。ところで竜夢区で問題を起こしたら駄目というのは、本当ですか?」
答えは、直ぐ返ってきたみたいで女性が驚いた顔をする。
「はい、解りました竜夢区を出た所で、再度捕捉する様にします」
携帯を切って女性が言う。
「どういうこと? 上の人間も直ぐに竜夢区から出る様に指示してきたわ」
左鏡が溜息を吐いて言う。
「そういう場所なんです」
その時、較が現れて言う。
「そういう場所なんですじゃないよ。はい、これ貴女のでしょ? あいつ等が近くの広場で儀式をやろうとしていたから全滅させて。奪っておいた。危険物を持って、早く竜夢区を出て」
渡された物を見て、女性が引き攣る。
「全滅させたって、あの連中は、軍隊相手でも戦える戦力があった筈ですよ!」
右鏡が遠くを見て答える。
「この人が、地球を壊滅させかねない人。ついこないだも、国を一つ滅ぼしかけた」
較が眉を顰めて言う。
「酷い言いがかりだな。あちきがやったのは、軍事基地を一つ消滅させただけ。後は、お父さんたちがやったんだよ。どちらかと言うと止めたほうだよ」
「軍事基地を一つ消滅させるってどうやったら出来るんですか?」
女性の言葉に左鏡が悲しそうな顔をして言う。
「世の中には、信じられない人が居るんです。特にこの竜夢区には」
そして、女性は、問題の物を持って逃げるように竜夢区を出て行く。
その後も、大小様々なトラブルが頻発する事になる。
「なんとか赤点は、まのがれた」
良美が、疲れた顔をしてテストの答案用紙を見せる。
「今度からは、真面目に授業受けて、こんな徹夜ラッシュは、止めようね」
疲労から倒れている較に、鶴美がジュースを出しながら言う。
「本当に底辺な娘でごめんなさいね」
「酷い!」
文句を言う良美を鶴美が睨む。
「そういう台詞は、あの山の様な問題集と模擬テスト問題が半分以下になってから言いなさい!」
鶴美が指差した所には、とうてい一週間でやったとは、思えない問題集と擬似テスト問題があり、擬似テスト問題の作成と採点は、較が一人でやった。
因みにその間も右鏡左鏡の手に負えなかったトラブルの対応も行いつつである。
鶴美の説教が続く中、大門家の居間のテレビからニュースが流れる。
『この一週間で、竜夢区付近での、事件の発生率が過去最高を記録しました。銀行強盗・放火事件・危険な化学兵器の流出・某国スパイの逮捕まで、本当に様々な事件があり、当局も事後処理に……』
こうして、多くのトラブルと騒動を引き起こしながらも良美の夏休みは、護られたのであった。




