不老不死の本質
今回は、次からの話の為、ヤヤのクラスメイトがメインです
学校からの帰り道、いきなり智代が質問する。
「みんな、不老不死ってどうおもう?」
「そんなの化物と一緒じゃん」
即答したのは、雷華だった。
その後、エアーナが少し考えて言う。
「でもあこがれるな、永遠に若いままっていうのも」
それに対して、良美が首を横に振る。
「あたしは、少しでも早く大人に成りたいよ」
較が質問を返す。
「智代は、いまのまま、ずっと変わらなくても良いの?」
智代は、自分の体、主に胸を見て言う。
「それは、いやだね。でも、成長した後だったら、良くない?」
良美が拳を握り締めて断言する。
「あたしは、あたしの限界なんて認めない。明日の自分が、今日の自分より劣っているなんて思えないもん」
智代が頷く。
「そうだよね、不老不死なんて意味無いよね」
一人納得する智代。
それは、極々普通の下校風景であった。
その日だけを見れば。
「叔母さんが、永遠教って宗教に入信したの」
翌日、落ち込んでいるのに気付いて、良美が問い詰めると、智代が辛そうに答えた。
「なるほどね、昨日の質問は、そんな所から来たんだ。前々から前兆があって、昨日の夜、入信したって連絡があったんだ」
較が、納得したように纏めると、雷華が反応する。
「直ぐに救出に行くぞ!」
立ち上がり、智代を連れて、教室を出ようとする。
「赤芽さん、もう直ぐ授業が始まります。席に戻って下さい」
委員長の優子が注意するが、雷華が取り合わない。
「クラスメイトの知り合いの一大事だ。授業に出ている暇は、無い」
強引にひっぱっていこうとする雷華に智代も戸惑う。
「場所、解っているの?」
較の突っ込みに雷華が止まる。
「知らないのに、何処に行こうとしてたのよ?」
エアーナが呆れた顔をする中、雷華が智代の肩を掴む。
「場所、知ってるよね?」
智代は、視線を外す。
良美が雷華の肩を叩き言う。
「こういう時は、ヤヤに任せましょう」
較が溜息を吐いて言う。
「放課後まで待って。それまでに情報を調べておくから」
雷華は、渋い顔をするが、頷く。
「放課後になったら、直ぐ行くよ」
「それで、どうして嘘を吐いたの?」
昼休み、屋上で、較が作ったお弁当を食べながら良美が言う。
「即座に問題にならないのが、解っていたからね」
較は、携帯のメールを見せる。
「あの時点で調べが、終了していたんだ」
一緒に食事をしていたエアーナが言うと較が頷く。
「クラスメイトの関係者が変な宗教に入ったのに、ほっておくと思った?」
良美が肩を竦める。
「だろうね。無理な利息を取っていた闇金の体中に、金の延べ棒を差し込んで、ビルの壁にめり込ませたとかやったヤヤが、黙ってる訳無いね」
エアーナが顔を引き攣らせる。
「ヤヤって絶対、手加減という言葉を知らないでしょ?」
較は、笑顔で答える。
「安心して、誰も死んでないから」
「闇金の奴は、病院でうなされ続けてるって聞いてるけど」
良美のチクリに、較の頬に冷や汗が流れる。
「そういえば、雷華って、あそこまでむきになるのかな?」
これ以上、怖い話を聞きたくないエアーナが無理やり話を変える。
「雷華は、元ヴァンパイアキラーだからだよ。不老不死を謳う宗教なんて、ヴァンパイアが得物を集める餌としてよく使う手。多分、嫌な思い出が山ほどある筈だよ」
良美が苦虫を噛み潰した顔をして言う。
「どうして、子供に無理させる、大人が多いのかな?」
「素質や才能なんて、下らない物に頼ろうとしてるからだよ」
較が呆れた顔をする。
「それって大切じゃないの?」
エアーナの言葉に較は、首を横に振る。
「自分の素質や才能を知る事は、大切だけど、それは、やり方が決まるだけ。本当にやらなければいけなかったら、どんな方法でもいいからやれば良いの。決まりきったやり方、楽な方法を選ぶから、やれる人間を限定してるだけだよ」
較が辛辣な言葉を投げ捨てる。
チャイムが鳴り、午後の授業が始まる。
放課後、較達は、問題の教団の本部に向かった。
「それでどんな宗教なの?」
当然の如く居る良美の質問に、較が答える。
「一応は、キリスト教の一種と言ってるけど、教祖の薬と催眠術を使ったマインドコントロール。自分が若返った風に思わせて、信者を縛りつける、悪質な連中。性質が悪い事に、周りの人間には、忠告をするんだけど、それを悪魔の囁きだと、無茶な事を言って信者を孤立させ、更に深みに嵌らせる」
元からやる気が全開だった雷華が、教団の本部施設の扉を開く。
「邪教集団! 大人しくしろ!」
中から御香の煙が漏れてくる。
『ガルーダ』
較が手を振り、突風を起こして御香の煙を散らすと、そこには、目の焦点が合っていない信者達が突然の事態に戸惑っていた。
「なんですしょうか? 我が教団は、真っ当な宗教団体です」
教祖と思われる、小太りの男が、人の良さそうな笑顔で答えるが、雷華は、問答無用に近付き、手に持った木刀を振り上げる。
「止めなさい! 天罰が下ります」
教祖が首から提げた、中央に宝石の付いた十字架をかざす。
すると、十字架の宝石が輝く。
教祖の口元が妖しく吊り上る。
しかし、雷華の木刀は、振り下ろされ、教祖は、あっさり気絶する。
そして、智代の叔母さんを無事回収して、騒ぐ雷華を宥めて帰る良美達。
較は、一人残り、後始末を開始した。
「ここは、何処だ?」
教祖の意識が回復して周りを見回す。
そこは、較の家の庭であった。
その前に立つ較が、教祖の下げていたペンダントを見せ付けて言う。
「中央の宝石の輝きで、催眠誘導を行う、まさに神の御技だね」
嫌味たっぷりの言葉に教祖の顔が引き攣る。
「何の事か解らないな?」
較は、全く相手をせず言葉を続ける。
「そこそこ強力な催眠術だけど、元々精神力が強い雷華には、催眠状態を作り出す御香の前準備が無いと駄目だね」
「そうだったのか、それで……」
呟いてから慌てて口を塞ぐ教祖だったが、そこに至り、自分が不自然な状態に置かれている事に気付き、自分の体を確認する。
「拘束されていない?」
「これから貴方を不老不死にするよ」
較の言葉に教祖が引き攣りながら答える。
「私は、元から不老不死ですよ」
較は、肩を竦めて言う。
「好きに言ってて、貴方を不老不死にするのには、変わらないから」
教祖は、唾を飲む中、較が呪文を唱え始める。
『偉大なりし、八百刃の介助を持ちて、我が求める。新名が司る時の流れを、金海波の力で止め給え』
教祖の体が強く輝いた後、較は、出口を指差す。
「出口は、あっち。公衆電話だったら、近くのコンビニにあるよ」
較は、小銭を投げ渡すと、そのまま家に入っていく。
教祖が首を傾げながらも、庭を出て、公衆電話を探し、迎えを呼んだ。
迎えを待つ時、頭上から鉄骨が落ちてくる。
避ける前に直撃する。
「誰か助けてくれ!」
教祖は、必死に助けを呼ぶと、周囲の人が集まり、鉄骨がどかされるが、誰もが教祖の死を確信した。
教祖は、胸は、潰れて、大量の出血をしているのだから当然である。
「何、この人!」
周りに居た、女性の一人が叫ぶ。
その声に釣られる様に他の人間も教祖の体を凝視して、悲鳴を上げる。
血が巻き戻り、傷が塞がっていくのだから。
自分の体の現象に驚く教祖の所に、迎えに来た信者が駆け寄る。
「凄い、不老不死は、やはり本当だったのですね?」
教祖は、その言葉に少しだけ戸惑ったが直ぐに頷く。
「当然です。永遠教の教祖である私を殺す事は、誰にも出来ません」
どよめくギャラリーを尻目に、迎えの車に乗る教祖であった。
そして車の中で口の中で呟く。
「何者か知らないが、感謝しないといけないな」
二十年後、較の元に、姿の変わらない永遠教の教祖が現れた。
「お願いだから、私の時を返して下さい!」
較は、相手にしないと、教祖は、ひたすらしがみ付く。
「もう嫌なんだ、こんな孤独な人生は!」
良美が現れて言う。
「孤独って、多くの信者が居るって聞いてるけど?」
教祖は、空虚な笑みを浮かべる。
「信者など、所詮、その他大勢でしかない。私と同じ位置に立ち。生きてくれる人間が居ないのだ」
較が冷たい眼差しで言う。
「それが、貴方が選んだ道。どうしても開放されたかったら、誰か他の人に殺してもらいなさい」
教祖は、頭を地面にこすり付ける。
「白風較の名は、誰でも知っている。そして、見せしめとして、私を不老不死にした事も。誰も白風較に逆らってまで、私をころしてくれない! 何でもするから、時を返してくれ!」
「貴方には、何も望みません。それでは、失礼します」
去っていく較に良美が言う。
「残酷な罰だな」
「でも中途半端な恩情は、余計な争いを生むからね」
較の答えに、良美が、絶望の底に居る教祖を見る。
「自業自得。自分の望んだ物の本質も知らなかった男の末路だね」
その後、永遠教の教祖は、自分の力で死を得る為に、行方不明になるのであった。




