スターガーディアンとのバカンス
楽勝モード、宇宙人との対決です
バンコクの隣国、バンダイのリゾートビーチ。
「海は、広いな、大きいな」
良華が浮き輪で浮かびながら呟く。
「もう、嫌! 海面歩く!」
小較が、泳ぐのを諦めて、海面に手を付くと水中から体を出す。
較が慌てて頭を押さえて、海中に沈める。
「ちゃんと泳ぎの練習する」
自重を減らして、楽に浮きながら小較が言う。
「海面歩いた方が速いよ」
「海中で動かないといけない時もあるからね。動くだけならともかく、戦いになったら不利だよ」
較の言葉に、撃術を解いて、泳ぎの練習を再開する小較。
「万能の癖に、泳げないなんて、意外だね」
良美の言葉に較が肩を竦める。
「仕方ないよ、病院暮らしが長い上、体中のできものが目立たなくなったのって、ついこないだだからね」
「そういえば、そうだったな」
嫌事を思い出した顔をする良美。
「女子の体に、あんなできものを作らせて、本気で最低な奴等だった」
「昔の事は、言わない。それより、あれ何に見える」
較が指差した先に、謎の飛行物体があった。
「UFOじゃないの?」
良美は、平然と言う。
「ヨシって、少しも動揺しないね」
較も動揺した様子も無く呟く。
そんな二人を他所に、観光客達が、ざわめく。
そのなか、円盤型したUFOから、人のシルエットを持った蛙が降下してくる。
『我等の祖先は、水中と陸上を自由に活動し、天敵を打ち破る、知能を手に入れる事で、星の海に出る資格を得た、優れた生物である』
「確かに、両生類は、そういった所では、有利だね」
較が一人頷く。
『道具無しでは、地上でしか、ろくに動けぬ下等生物を支配する為に、やってきた。抵抗は、無駄である。大人しく、我等、ゲロゲロ星人に支配されるが良い』
宇宙人、ゲロゲロ星人の言葉に、良美が反応する。
「凄い、べたな侵略宇宙人。本当に居るんだ。でも学校の先生が、宇宙人と遭遇するのは、深夜のグランド端と端で同時に懐中電灯をつける位難しいって言ってたけどな?」
較が溜息を吐いて言う。
「それは、前提自体がおかしいの。こっちの視界とあっちの視界が同じって設定じゃないと成り立たないから。相手側が、夜間でも見える目を持っていたり、こっちの懐中電灯の光を察知して、即座に光を返せるメカを内蔵してる可能性もあるよ。そして、相手の方が上位の場合、一方的に発見される事が多く、何度か侵略しようって宇宙人が来てるのが現実」
「やっぱり、アメリカが秘密裏に処理してるの?」
良美が興味津々に聞いてくるので、較が首を横に振る。
「あちき達が異邪対応してるみたいに、専門の人達がいるの。今回の件も数日内に片付けて、全部ゴシップ扱いする筈だよ」
つまらなそうな顔をして良美が言う。
「それじゃあ、今回は、見学で終わり」
較が頷く。
そんな中、ゲロゲロ星人の侵略生物兵器、巨大蛙が放たれる。
『愚かな、生物、この地表の七割が水で覆われた、この星で、我等のゲロンガーZの前に無力!』
一気に、騒乱状態になる中、良美が一言。
「あれって絶対、地上だと干からびるよね?」
「一応、海岸線から攻めるつもりだろうけど、砂漠地帯なんかだと、一時間ももたずに干上がるでしょうね」
較が同意する。
常人では、驚異的な戦闘能力で、次々に建物を破壊してゆくゲロンガーZ軍団。
「お姉ちゃん、小較ちゃんが!」
良華が二人の所に駆け寄ってくる。
「逃げ遅れたか」
呑気な良美。
「呑気にしてないで、助けに行かないと!」
良華が叫ぶと良美が言う。
「って言ってるけど、どうする?」
較が悩みだす。
「うーん、あのクラスだったら、勝てないまでも、負けること無いから、ほっておいても大丈夫だけど、ここで戦闘させるのもなんだね。仕方ない、助けに行って来る」
較は、駆け出し、海に飛び込むと、水泳選手そこのけのスピードで小較の所に着く。
「お姉ちゃん、やっぱ戦ったらいけないの?」
「管轄外だしね。ほら、逃げるよ」
較が、持ってきた浮き輪に、小較を入れると、来た時と変わらないスピードで海岸に戻っていく。
その間に、良華がパニックを起こしているが、良美が抱きとめて言う。
「慌てても仕方ないよ。さて父さんと合流して、逃げるよ」
そこに丁度、熊男達が来る。
「急いで逃げるぞ!」
そして、較と小較と合流して、逃げる事になった。
ホテルのパーティー会場。
ホテルの客が集められていた。
「何時まで、ここに居ればいいんだ!」
多少、鍛えた体を持つ男が、ホテルの従業員に詰め寄る。
「解りません。安全が確認出来るまで、頂くとしか……」
「それは、何時だか聞いてるんだ!」
騒ぐ男の手を熊男が掴む。
「イレギュラーなトラブルだ。解るわけが無い。とりあえず今は、大人しくしていよう」
「黙れ! もっと遠くに逃げた方がいいかもしれないだろうが!」
男が反論した時、強い振動が会場を襲う。
一斉に逃げ出そうとする人達。
較が溜息を吐いて、出口に前に立ち、全員を受け止めて言う。
「冷静になりなよ、下手に逃げてる途中に襲われたらお終いだよ。ここは、ここみたいに強固な建物の中で大人しくしてるのが、正しい行動だよ」
さっきの男が怒鳴る。
「ここに居て安全な保障は、無いだろうが!」
較があっさり答える。
「ここを逃げ出して、あの化物に襲われたら、ほぼ間違いなく死ぬよ」
言葉に詰まる男。
そして熊男が言う。
「とにかく、地理も詳しくないうえ、相手の行動も読めない以上、逃げて逆効果な可能性は、高い。効率よく逃げられる算段がつくまでは、ここに居る方が良い。少なくともここなら水と食料の心配は、要らないからな」
手元にある飲み物を見ることで、落ち着きが広がる。
較が、元の場所に戻り呟く。
「携帯で連絡したけど、あっちの専門家が、こっちに来るまで、三時間は、掛かるって話だよ。判断能力あるみたいで、重要施設をメインに襲ってるらしいから、ここは、たぶん大丈夫」
「それって、重要施設に居る人たちの身の安全は、無視って事」
良美の突っ込みに較が肩を竦める。
「管轄外に手を伸ばしてまで助ける義理が無いからね」
「本当に目の届かないところには、冷徹だね」
良美が溜息を吐いた時、壁が崩れて、ゲロンガーZが現れる。
『女が一杯居るな! 侵略の楽しみって言えば、現地の女を食べる事だぜ!』
ゲロンガーZの背に乗るゲロゲロ星人の言葉に、恐怖が広がる。
そこにもう一体のゲロンガーZが来る。
『作戦行動が先だ! 趣味に走るのは、後にしろ!』
その言葉に、先に来ていたゲロンガーZが後退を開始し、安堵の息が漏れた。
その時、後から来たゲロンガーZに乗ったゲロゲロ星人が何か、通信を受ける。
『了解、現地人サンプルの確保ですね。丁度、色違いの現地生物が多い所に居ますので、開始します』
『グットタイミングだな!』
そして、再び、訪れた恐怖に、狂乱になり、一斉に逃げ出す人々。
較は、諦めの極致の表情で、髪の毛を抜く。
『セイレーンララバイ』
次の瞬間、一斉に眠りだす人々。
「やるんだ?」
倒れそうだった良華を支えた状態で、良美が質問する。
「しかたないよ。余分な敵を呼び出す前に片付ける」
較は、一気に詰め寄ると、掌をゲロンガーZに当てる。
『シヴァドレス』
次の瞬間、ケロンガーZの内部から無数の氷が発生して、絶命する。
『貴様、何者だ!』
乗っていたゲロゲロ星人の言葉に、較がつまらなそうに言う。
「何者でも関係ないでしょ? 一つだけ言っておいてあげる、現状戦力であちきには、勝てないよ。それは、証明済みだよね? 逃げて良いよ」
無事の方のゲロンガーZに乗っていたゲロゲロ星人が飛び降りると、腕のリングから槍を取り出すと構える。
『こっちも侵略軍だ、お前みたいな異能力者の対処のマニュアルぐらいある。生身で、強力な力を使う能力者は、高速攻撃に弱い』
残像を残して、姿が消えるゲロゲロ星人。
しかし、較は、数歩前に出て腕を突き出すと、消えた筈のゲロゲロ星人が体をくの字にして現れる。
「対処のマニュアルとしては、あってるね。でも、あちきは、元々対人戦がメインだから、機械で加速しただけの攻撃なんて、合わせるなんて朝飯前だよ」
ゲロゲロ星人の残りの一人が必死に通信機に怒鳴る。
『隊長がやられた、至急救援を求める!』
反応は、直ぐに現れた、多数のゲロンガーZが較の前に現れた。
その時、天から無数の光弾が落ちる。
「遅れてごめんなさい」
そう言って、一本の杖を持った少女が現れる。
「あなたが来たの?」
較の言葉に、その少女が答える。
「うん。海外に来られるって言うから、自分から言ったんだよ。丁度、エイリアンも集まってたから、転送が楽になってラッキーって奴?」
良美が較に近付いて、少女を指差す。
「知り合い?」
較が頷いて答える。
「さっき言った、地球外担当の人達、スターガーディアンの一人。あの杖で、地球のエネルギーを引っ張り出して、地球外の物に攻撃出来る人。侵食した右手がそれに引っかかって、対応に来た事があったの」
少女は、肩を竦めて言う。
「あの時は、怖かったよ。まさか、八刃の盟主、白風の次期長だったんだもん。殺されると思ったよ」
因みにそんな呑気な会話をしている最中も、光弾は、降り注ぎ、ゲロゲロ星人を殲滅している。
「そうだ、ここであったのも何かの縁、この後一緒に食事をしませんか?」
少女の言葉に、較が溜息混じりに言う。
「詰り、通訳が欲しいんでしょ?」
少女は、視線を逸らして言う。
「仕事の時には、力を使うからいいんですけど、私用には、禁止されてるから」
「あたしは、良いよ。色々話も聞きたいし」
良美の言葉に、較も了承すると少女が杖を振り上げる。
「そうと決まれば直ぐに終らせるね」
一際大きな光弾が生まれて、それが母艦に直撃する。
母船が大きく傾いた後、ゲロゲロ星人が撤収し、宇宙に逃げていく。
翌日のビーチ。
「全部、お祭りのイベントだったんだ」
心底驚いた顔をする良華。
「少し、不謹慎だな」
熊男の言葉に鶴美も頷く。
「海外だし、ありでしょ」
良美がフォローする中、さっきまで宇宙人と戦っていた少女が、小較と一緒に泳いでいた。
「今回の旅は、平和な旅だったな」
大門一家との旅の最後の一日をのんびり過ごす較であった。




