虐げられるものの反抗
ロボットとの対決ですが、楽勝です。ナナカレイが発生する為の重要なエピソードだったりします
バンコクの隣国、バンダイの展示場。
「凄い! 大きな機械が一杯!」
「ホントだね!」
小較と良華がはしゃぐのを見ながら、良美がつまらなそうな顔をして言う。
「なんで、工業ロボットの展示会を海外に来てまでみなくちゃいけないの?」
隣でパンフレットを見ていた較が答える。
「仕方ないでしょうが、おじさん達が夫婦水入らずで、マリンスポーツに出かけたんだから。二人とも楽しんでるみたいだし、問題ないよ」
良美が口を膨らませる。
「あたしも、マリンスポーツが良かった!」
そんな良美を見て、良華が溜息を吐く。
「お姉ちゃんって、本当に我侭だね」
強く頷く小較。
「なによ、皆して、理解ある子供して! 子供は、我侭が仕事だぞ!」
猛反発する良美に、較が近寄り言う。
「おばさんの監視が無い今だけ、奢ってあげるから、気分を直しにご飯を食べよう」
「それだったら仕方ないわね」
良美が妥協したので、四人は、展示場内に儲けられた、レストランに向かう。
『ご注文は、以上ですか?』
「はい。よろしくお願いしますね」
注文確認用のロボットの質問に、較が答えると、そのロボットが次のテーブルに向かう。
「凄いロボットだよね」
良華の言葉に、小較が言う。
「でも、どうしてこんな小国でこんなイベントがあるの? 日本みたいに工業国だったら解るけど」
較が大型工業機械を指差して言う。
「先進国だと、ああいう大型工業機械を展示するスペース取りが難しいの。こういった発展途上国だと、まだ、国際空港から短時間で移動できる範囲に、展示可能スペースが確保できるって寸法なの」
納得したように頷く小較と良華。
「残念だけど、正解とは、言い切れないな」
その突然の声に、良美が顔を向けると、そこには、二人の日本人男性が居た。
「表向きは、工業ロボットの展覧会だが、裏では、軍事兵器の展示、実演もやってる。その為、金で国を黙られる、この国を選んだのだ」
男の説明に、良美が睨む。
「あんた誰よ!」
説明した男性の向かいに居た、目付きが鋭い男性が答える。
「お気楽な、日本人に名乗る必要は、感じないな」
もう一人の男性が苦笑しながら言う。
「声をかけたのは、こっちだ。名乗ろう。私は、雨林十斗で、こっちが雹見十三。金の匂いがしたから来た、起業家だ」
較は、呆れた顔をして言う。
「今更、軍事産業に、割り込む隙があると思えないけど?」
十三が不敵な笑みを浮かべて、答える。
「割り込む必要なんか無い。油断をしている奴等と取って代われば良いんだ」
較が溜息を吐いて言う。
「その結果が、周囲の黒服って訳ね?」
十斗が驚いた顔をする。
「気付いていたのか?」
較が小さく頷く。
「関係ないからほっておいたけど、どっかの大企業の荒事専門セクションでしょうね。金に直結してるから、下手なヤクザより、えげつない真似する奴等だよ」
十斗が肩を竦める。
「そこが問題でね、本当だったら、公的機関を動かせるような所を相手にしたいが、資金不足でね。あと十億でもあれば、CIAの専門部署に囲まれていたんだけどな」
十三も平然と続ける。
「無いものは、仕方ない。今回は、このクラスで我慢するしか無い」
良華が戸惑っている間に、料理が届き、なし崩しの中、食事が始まる。
「ご馳走様!」
嬉しそうにする良華。
「まあまあね」
横柄な態度の良美。
「小較、良華ちゃんと一緒に先に行ってて」
較の言葉に小較が頷いて、良華と一緒に店を出ると、較が立ち上がり宣言する。
「あちきの関係者に手を出したら、容赦しないからね。あんた等もこっちの人間だったら、白風較の名前位知ってるわよね?」
その言葉に周囲の黒服が動揺し、一部の人間が、逃走を開始する。
「情け無い連中」
良美が呆れた顔をし、十斗が驚いた顔をする。
「君が、あの有名な白風較か。噂は、色々聞いているよ」
流石に戸惑った顔をする十三。
「どこかの企業に雇われて、私達を狙っているのか?」
較は、首を横にふり、懐から小切手を取り出して、書き込むと、十斗の前に置いて言う。
「さっきの台詞は、本気? もし本気だったら、これを投資してあげるけど?」
十斗は、金額を見て口笛を鳴らす。
「豪気ですね。見返りは?」
「特に無いよ、ただ、無謀な事に挑戦する人間に賭けるのが、うちの教え見たいなものだって事かな」
較の答えに、十三が躊躇する中、十斗が平然と小切手を懐にしまう。
「後で、株券を送ります。三年で、百倍になるね」
立ち上がり、行動を開始する十斗。
「これで、計画が早められるぞ」
その一言に、十三の躊躇が消える。
「そうだな、感謝します」
十三は、頭を下げて、十斗の後に続く。
較が頬をかき言う。
「あの二人、少し危険な目をしてたな」
良美が普通に言う。
「そう? あたしには、やり遂げようとする強い目に見えたけど?」
較が頷く。
「それは、そうだけど、あれは、復讐者の目だよ。目的の為なら、何でもするような」
シリアス雰囲気の所で良美が言う。
「ところで、あたしは、デザートのドリアンアイス食べたいんだけど良い?」
「待たせてるから、却下」
較の答えに、不貞腐れる良美であった。
色々な機械を見て回る中、小較が動物を見つける。
「なんで、工業ロボットの中に、動物が居るの?」
較が近くの説明ボードを見て答える。
「生物に取り付けて、操る装置みたいね。無理に機械仕掛けにせず、動物を使うことで、山道等の運搬を効率的に行うシステムらしいね。へー、日本の雲集四門って人が考えたシステムなんだ」
「動物虐待みたいで、嫌だな」
本気で嫌そうな顔をする良美に頷く良華。
そんな時、爆発音が会場に轟く。
音のするほうを見ると、そこには、ロボットが立っていた。
その手には、工業用ウォーターカッターガンが握られていた。
目の前の建物が、切り裂かれるのを見て、逃げ惑う来場客達。
良華もパニックを起こして、必死に逃げようとするが、良美がその体を掴まえていた。
「何してるの! 早く逃げないと殺されるよ!」
良美が平然と出口に向かって逃げ惑う人たちの方を指差して言う。
「あんな中、突っ込んでいったら、人に押しつぶされるだけで、逃げられない。出口と反対側になるけど、ロボットが居なく、見て回った方に逃げな」
「小較も一緒にね」
較の言葉に、小較が呆れた顔をして言う。
「どうせ、良美は、見学していくつもりでしょ?」
「まーね。中々面白そうな展開になってきたからね」
良美の言葉に良華が驚く。
「なに馬鹿な事をいってるの! 危ないから逃げようよ!」
「慣れてるから平気だよ」
良美の言葉に、苦笑して較が言う。
「あちきが、安全を保障するから、良華ちゃんは、小較を連れて、先に行ってくれる?」
戸惑いながら、良華が頷き、小較と一緒に人が少ない、方向に逃げていく。
「それで、どうするの?」
良美の質問に、較が肩を竦める。
「攻撃されるまで、現状維持だね。攻撃された所で、叩き潰す」
そんな物騒な会話をしている中、ロボットのコックピットから犯行声明が流れる。
『これは、虐げられた我々の、決意の証である。ただ同然で住んだ土地を追い出され、低賃金で働かされた我々の恨みを知れ!』
次々と切り落とされる、施設と、それに伴う爆発を見て、大きく溜息を吐く較。
「何、馬鹿な事をしてるんだろう?」
「これも、大きな力に抗う事じゃないの?」
良美の質問に較が眉を顰める。
「冗談を言わないで。戦いって言うのは、結果を求める物だよ。こんな復讐心だけの破壊行為が、戦いな訳ない」
落下してくる、大岩を叩き割る較。
ロボットが、較達を気付く。
『日本人か! お前達が、俺達の国を、食い物にしたんだ!』
ウォーターカッターガンが較達に向けられる。
較が鋭い視線で告げる。
「その引き金を引いたら、敵対したとして潰すよ」
『五月蝿い、お前等が呑気に暮らしている間も、俺達がどんなに苦労したか、その身に教えてやる!』
鋼鉄すら寸断する高密度の水の塊が、較に迫る。
『リヴァイアサンスケル』
水が、弾け、鱗に様に変化して、ロボットの返って、装甲を打ち砕く。
『馬鹿な、最新鋭の兵器だぞ!』
較がゆっくり近付きながら解説を始める。
「貴方は、何も解っていない。そのロボットは、たんなるデモンストレーション用の兵器。ウォーターカッターガンも所詮は、工業機械の流用品。本当に、全てを壊すんだったら、そんな見た目の兵器では、無く、細菌兵器でも盗み出した方が良かったんだよ」
『黙れ!』
鋼鉄の腕が振り下ろされる。
『ジャイアントアーム』
較が拳を振り上げ、ロボットの腕を打ち砕く。
『化物!』
ロボットが転身して、駆け出す。
『ヘルコンドル』
較が腕を振るい、カマイタチを発生させて、足の関節を砕く。
「人型兵器って言うのは、間接部の弱点があるから、色々面倒なんだよね」
残った腕で、這って逃げようとするロボットに近付き、較は、コックピットを毟り取る。
「終わりだよ」
コックピットから出て来た現地人が叫ぶ。
「俺達の楽園を奪ったお前達に、決して屈しない!」
較は、冷めた目で言う。
「貴方達は、楽園を護る為に何をしてたの?」
男が怒鳴り返す。
「お前等が、俺達に武力が無い事を言い事に、追い出したんだろうが!」
蔑むように較が告げる。
「ふざけるのも大概にしてよね。武力が無い? そんな大切な者を護る努力もしなかった人間が、大きな口をたたくんじゃ無いよ!」
男は、必死に反論する。
「俺達だって必死に戦った!」
鼻で笑う較。
「その時だけ努力する事なら誰にでも出来るよ。必要なのは、大切な者を護れるように、事前に準備をする事。貴方達が平和で暮らしている間も、他の国では、植民地にされて、地獄の様な暮らしをする人達が居た。こんな事、世界中でいくらでも起こっていた。そんな現実を無視した結果がこの状態だって事だよ」
言葉に詰った男が、それでも搾り出すように反論する。
「だったら俺達は、どうすれば良かったんだよ!」
較が淡々と答える。
「あちきの知り合いに、自分の大切な森を護る為に、大きな組織に助力を求めた人が居る。その人は、森を護る条件として、命懸けで賭け試合を続けていた。その人は、個人の力の限界を知っていて、自分の価値を知っていた。貴方達には、何が出来るの?」
男が戸惑いながら答える。
「俺達は、指先が器用だ、この展示場に出ているロボット製造にも関っている」
較が納得したように言う。
「一人じゃ駄目かも知れないけど、力を合わせた時、それが、自分達を護る武器となる。考えなさい。その武器をどう使えばいいのか? 目を開きなさい、世界がどうなっているか? 貴方達の道は、その先にある」
較は、それだけを言い残すと、良美の所に戻っていった。
数ヵ月後、白風家のリビング。
「結局人型兵器って、アニメの中だけのものなの?」
首を横に振る較。
「そんな事は、無いよ。一番の有利点は、汎用性。基本的に人型って色々出来る。だからこそ人間は、地上で一番繁栄している。ただ、アニメみたいに、戦車や戦闘機に対して絶対有利性がないだけの事。所詮、ケースバイケースって事だよ」
「なるほどね。話は、かわるけど、前に行った、バンダイ国製品がこの頃、増えているのって何でかな?」
良美の質問に、較が大きく溜息を吐いて、一冊の雑誌を見せる。
「元々、バンダイ国の人達は、指先が器用なんだけど、各自の得意分野を明確にして、企業に売りつけたところ、これがビンゴして、生産効率が数段跳ね上がり、今じゃ、バンダイの先住民がバンダイ国製品の要になってるよ。テレビでも特集組まれてるネタだよ」
雑誌を見て良美が驚く。
「この企業の取締役って、あの時の人だよね」
電子株券を纏めた資料を見ながら、較が言う。
「あの時、事件の責任問題を全て、当時の甘い汁を吸っていた奴等に押し付け、軍事部門から、工業部門まで全部乗っ取ったみたい。そのおかげで、現地の人たちも大した罪には、問われなかった。株価があがって。もう直ぐ百億に達しそうだね」
良美が目を輝かせる。
「儲かってるんだったら、奢ってよ!」
「却下、株の配当金は、八刃学園の建設費用に回す予定なんだからね」
複雑な計算をし始める較に、諦めて、テレビに戻る良美であった。




