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第7章

「……ん」


 ミコトが目を覚ますと、辺りはすっかり暗闇の中だった。外もすっかり静かになり、自分がどれくらい寝ていたのかもわからない。


 体を起こすと、関節から変な音が聞こえてくる。無理な体勢で寝ていたせいか、思うように足を動かせない。まるで身体を蠟で固められたような感覚。


 ぼんやりする頭を覚ますため、二・三度頭を振る。意識を覚醒させると、今度は喉の渇きが襲い掛かってくる。


 もうセレンたちは寝ているだろう。彼らを起こすのも悪い。ミコトは何か飲み物を取りに行こうとして、部屋から出ようとした。


「きゃっ」


 開いたドアの向こうから、小さな悲鳴が聞こえた。ミコトが顔を出すと、ディアが驚いた顔でそこに立っていた。


「あ、ミコトさん」


「……悪い。驚かせてしまった。何をしている?」


「ちょっと眠れなくて……ミコトさんは?」


「ちょっと飲み物を取りに……」


 ミコトがそう答えると、彼女が目を輝かせながら身を乗り出してきた。


「ミコトさん。よかったら私も一緒に行ってもいいかしら?」


 ミコトが見つめ返す。その時のディアの顔は、昼間に見せたのと同じ微笑みだった。


 それに毒気を抜かれたわけではないが、ここで拒否するのも変な話と思い、ミコトははっきりと頷いた。


「わかった。こっちに来てくれ」


 ミコトがそう答えると、ディアは嬉しそうな顔でミコトについて行った。


 二人が向かったのは、普段ミコトたちが使っている食卓。ミコトは棚に置いてあるワインを手に取り、二人分のコップを用意した。


「あまり大したものじゃないが、飲むか?」


 上物や年代物でもない、ごく普通のワインを左右に振って見せると、ディアの輝く目がワインを追っていた。


「ええ! いただくわ! 私、美味しいものには目がないのよ!」


 何故か自慢するようにディアが笑う。それを見て、ミコトは慣れた手つきでコップにワインを注いだ。


 途端、ブドウの香りが二人の顔を撫でてくる。くすぐられるようなその感覚に、ディアがうっとりとした顔になった。


「うわあ……綺麗な色……」


 ディアが手渡されたワインを見つめる。まるで宝石を見つめるように、その目は輝いていた。


 ミコトがワインを口に運ぼうとすると、ディアが声を上げた。


「ミコトさんミコトさん」


 ディアがまだ飲むなと彼を制すると、その手に持っているコップを突き出してくる。


「乾杯しましょう。ね?」


 ミコトが顔を向ける。ディアはコップを突き出したまま、彼のコップが来るのを待ち構えている。


 まるで子供だった。憧れている大人の世界に飛び込もうとする、育ち盛りの子供。


 その子供が、今か今かとコップを叩き合うのを待っていた。


 ミコトは呆れつつ、大人役としてコップを突き出した。


「乾杯」


 彼がそれだけ呟くと、食卓に乾いた衝突音が鳴った。


 その音を聞くのがとても嬉しそうで、ディアは楽しそうに笑って、ワインを口に含んだ。


 ミコトも続くようにコップを仰ぐ。ブドウの酸味が渇きを癒し、芳しい香りが鼻腔をくすぐる。久しぶりの感覚にミコトは身を委ねる。


「おいしい……これが、この街のワインなのね」


 ディアがうっとりと笑う。彼女はじっとワインを見つめ、小さく吐息を漏らす。


「とてもおいしいわ。口いっぱいに味が広がって、まるでブドウが弾けたみたい。その後は優しい香りが胸の奥まで通り抜けていく感覚。こんなワイン、初めて出会ったわ」


 嬉しそうな微笑みをディアが浮かべる。まるで、その出会いに感謝するように。


 それを見つめながら、ミコトは再びコップを仰ぐ。いつもは急患が来ても対応できるようにワインは控えているのだが、久しぶりのワインはやはり美味しいと思った。


「ごめんなさい」


 すると、いきなりディアが謝罪を告げてきた。ミコトが驚いて顔を上げると、困ったように笑う彼女の姿があった。


「何を謝っているんだ?」


 何のことかわからず、ミコトはつい訊き返してしまう。その問いかけに彼女が呟く。


「お昼にセレンさんと喧嘩したでしょう? 私のことで」


「……ああ」


 言われて思い出す。確かにミコトは、セレンと言い争いをしたのを思い出す。


「聞こえていたのか?」


 ディアがコクンと頷く。どうやら病室までミコトたちの口論が聞こえたのだろう。


 ならば、彼らが何故喧嘩をしたのか。それも彼女には聞こえていただろう。ディアが再び申し訳なさそうに笑った。


「ミコトさんは、私のことを心配してくれたのよね? また具合が悪くなって、倒れるかもしれないから」


 ミコトは何も答えぃ、静かにワインを飲み続ける。それを見て、ディアはそのまま話し続けた。


「セレンさんのこと、怒らないであげてね。セレンさんも私のことを考えてくれただけだから」


「別に。自分は気にしていない。方針や意見の違いで衝突することもある。いちいち気にしていられない」


 やれやれといった様子でミコトが呟く。そんな彼の言葉にますますディアが笑う。


「でも、意外だったわ。セレンさん、いつもは大人しいのに、あんな風にぶつかることもあるのね」


「意外か? あれでもよく兄妹喧嘩をしたこともある。昔は口より先に手が出る奴だったよ。一回顔を殴られた時は、口を切ったこともある」


 物騒な話に、ディアはお腹を押さえて大笑いした。


「そうだったのね。今の姿からは想像できないわ」


 かつての兄妹喧嘩を想像しているのだろうか。ディアはしばらくお腹を押さえ続けた。


 しばらくそうした後、彼女はミコトに向き直った。


「ねえ、ミコトさん。聞いてもいいかしら?」


 ミコトは思わず身構えた。彼を見つめるディアの視線が、全てを射抜くような真っ直ぐさを見せていた。


 まるで全てを見透かすような彼女の目に、ミコトは沈黙した。まるで自分の罪を見抜かれているような、そんな錯覚。


 彼の沈黙を肯定と受け取ったのか、ディアが静かに口を開いた。


「どうしてミコトさんは、人を助けることに、そんなに必死なの? 」


 単純な問いかけが、二人の間に流れる。数拍の時間の後、ミコトが抑揚のない声で返答した。


「医者が人を救うのは当たり前のことだろう? 何かおかしいか?」


 その答えに、彼女は首を横に振った。それは違うだろう、と。


「ミコトさんのそれは、仕事だからとか、医者だからとか、そういうのとは違う気がするの。私が子供を助けた後、ミコトさんはすごい剣幕で私に怒鳴ったわ。命を粗末にするなって」


 子供を助けるために自分を犠牲にしようとしたディア。その行いを、ミコトはただ怒鳴りつけた。


ディアが問いかけているのは、命を守ろうとする、ミコトの激情に対してだった。


「あの時、思ったの。まるでミコトさんは、何かと戦っているみたいだって。人を治し、命を救うミコトさんの姿は、何かに抗っているように見えたわ」


 怪我した人々を治し続け、命を救うことに激情を爆発させる。


 彼女にはそれが、何かに抗う姿に映っていた。


「私、知りたいわ。どうしてそんな風に戦うのか」


 静かな問いかけと真っ直ぐな眼差し。ミコトは何故か、彼女から目を逸らせないでいる。まるで逸らすことを許さない、そんな雰囲気があった。


「教えて? あなたの話を」


 ディアが静かに語り掛ける。ミコトにその胸の内を聞かせてほしいと。固く握られた拳を、優しく解きほぐすように。


 ミコトは小さく溜息を吐いた後、ゆっくり口を開いた。



「人が死んだんだ。目の前で。何人も」



 まるで犯した罪を懺悔するような呟きだった。


 その言葉にディアが息を飲む。しかし彼女は何も言わず、先を促すように彼を見つめ続ける。ミコトもそれに応じるように話し続けた。


「昔、大学にいた頃の話だ。近くの鉱山で大きな事故が起きたんだ。負傷者がたくさん出たひどい事故で、医学生だった私も救援のため、現場に行くことになったんだ」


 話し続けるミコトの顔が、段々とは歪み始める。その痛みが伝わったのか、ディアも辛そうな顔になっていく。


「怪我で苦しむ人を救う。そんな物語を私は思い描いていた。だけど、そんな若造の考えは一瞬で吹き飛んだよ。私が目にしたのは、血を流し、呻き声を上げる人々の姿と、その傍らですでに息絶えた人々の遺体だったんだ」


 ミコトの顔が苦痛に歪む。それを話すこと自体が、苦しそうに見えた。


 しかし、彼は話を止めなかった。傷口から膿を取り出すように、その痛みに耐えながら、その惨劇を話し続けた。


「私はすぐに負傷者の治療に走った。だけど、そこは医者の数よりも、死神の数が圧倒的に多かった。ほとんど手の施しようがなくて、助かる見込みのない人ばかり。それでも何とかしようとするが、声をかけた瞬間に息絶える人も少なくなかった。助かる人もいたけど、死にゆく人の方が多かったよ」


 目の前で息絶える人々。助けようと手を取っても、死神は容易く目の前の命を刈り取っていく。


 それは、人の手ではどうすることもできない惨劇だった。


「初めて知ったよ。地獄は聖書だけじゃなく、地上にも描かれることがあるって」


 ディアは寒気を感じた。ぞわりとしたその感覚が、あまりにも生々しく、息苦しくなる。


 話を聞いただけでも恐ろしかった。ならば、その地獄を前にしたミコトは何を感じていたのか。恐怖か、諦めか。それとも失望か。


 その疑問に答えるように、ミコトが顔を上げる。


「そうやって死んでいく人々を見ていた私は、段々と怒りを覚えたんだ」


 意外な答えにディアがキョトンとする。諦めでも失望でもなく、彼は怒りを燃やしていたという。


「怒り、なの? どうして?」


「目の前で人が死ぬのを見るうちに、何でこの人たちが死ななければならないんだって、思い始めたんだ。昨日まで当たり前に笑って、友達と語り合って、家族と暮らしてきたこの人たちが、何で死ななければならないのか。その理不尽さが、私は許せなかったんだ」


 命は全て平等であると、聖書では語られている。それは同時に、誰にでも不運が訪れることも示していた。聖人であれ罪人であれ、全ての命は平等で、公平に不運が訪れることがある。


 その理不尽がどう呼ばれているかを、ミコトは知っている。


「そんな理不尽な『運命』で人が死ぬのを、私は許せなかったんだ。運命なんかで人の生き死にが決められるとか、そんな馬鹿なことがあるかって」


 運命。人々はそれを『神の気まぐれ』とも呼ぶ。もしそれが本当なら、人は神の気まぐれで命を落とすということだ。


 ミコトが怒っていたのは、まさに唐突に訪れる、その気まぐれに対してだった。


 気まぐれなんかで人の命が消える。そんなことがあっていいはずがないと。


 世界の不条理も、運命の理不尽さも目の当たりにしたミコト。その光景を胸に刻んだ彼は、一つの決意を持つに至った。


「それ以来、私は決めたんだ。運命だとか気まぐれだとか、そんなことで人を死なせたりしないって。誰一人として、無意味に死なせたりしないって」


 それから、彼の戦いが始まった。理不尽な運命と、くだらない気まぐれに対する戦いが。


「人の命が運命で決まっているのなら、そんな運命は否定してやる。神が気まぐれを起こすのなら、そんな神はぶん殴ってやる」


 ミコトの目に火が灯っていた。それは怒りなのか、それとも決意の光なのか。


「私の前で誰かが死ぬなんて、絶対に許さない。絶対に」


 ディアは言った。ミコトはまるで戦っているようだと。そして、それは間違っていなかった。


 運命の理不尽さの前に何もできず、希望を失った若者。彼が選んだのは、自分の希望を壊した運命への戦い。


 もう二度と、運命なんかの思い通りにさせてやらないと。



 しばしの空白が流れる。お互い何も言わず、静謐な時間が辺りを満たしていく。


 ミコトが顔を上げると、ディアの辛そうな顔が目に入った。


「すまない。聞いていて、気持ちのいい話じゃなかっただろう」


 人が死ぬ話など、楽しいはずがない。促されたとはいえ、血生臭い話をしたことに、ミコトも謝罪の言葉を伝えた。


 しかし、ディアはそうではないと、首を横に振った。


「ごめんなさい」


 彼女から謝罪の言葉が紡がれる。何故彼女が謝るのか、ミコトは眉をひそめた。


「……? 何故あなたが謝る? どうして、そんなに辛そうな顔をしている?」


「ううん、違うわ」


 ディアが辛そうに、悲しそうに彼を見つめる。何故彼女がそんな顔をしているのか。察することのできないミコトはただ狼狽えていた。


 何も言い出せない彼に代わって、ディアが小さく伝えた。


「本当に辛そうなのは、ミコトさんだわ」


 ディアの言葉が鋭い槍のように、ミコトを射抜いた。


 彼女に言われて初めて気付いた。自分の顔が思った以上に、ひどいものになっていたのだと。


 ディアの顔を見る。悲しそうに、労わるような目でミコトを見つめる。優しいはずのその視線に、まるで射抜かれるような鋭さを感じた。


 それ以上、その目を見ることができない。そんな気がした。


 ミコトは何も言わずにそっぽを向く。それを見て、彼が不機嫌になったと思ったのか、ディアは何を言うべきか困惑した。


 気まずさが彼らの周りに沈殿していく。息苦しさが胸元まで上がってくる。彼らはその空気の中、ただ押し黙っていた。


「あ! そうだわ!」


 パン! と可愛い音が響く。ディアが何かひらめいたという風に、両手を叩いて見せた。


「ミコトさん。今から面白いもの見せてあげるわ!」


「……面白いもの?」


 いきなりのことに今度はミコトが困惑する。まさか手品でもして見せるのだろうか。


 ミコトが戸惑っていると、ディアが得意気な顔でその両手を広げた。


「さあ、見ててね」


 ディアがその両手を掲げる。掌が向かい合うような形で、顔の高さまで上げて、その姿勢で静止した。


 すると、その両手に挟まれた空間に、青白い花火が小さく爆ぜた。


 パチリ、パチリと。彼女の両手の間に、青白い花が咲き乱れる。咲いては消えて、また咲いては消えて。


 彼女の両手の間で、青白い花が幾重にも花開く。それはまるで、天空に輝く星座のよう。


 ミコトはその花火をじっと見つめていた。幻想的というのか、それとも神秘的というべきなのか。言い表す言葉が見つからない彼は、ディアが生み出すその光景から目が離せなかった。


 その様子を見て、ディアはますます得意気になった。


「ふふ、どうかしら?」


「……ああ、とても綺麗だ。今まで見たことがないくらい、綺麗な光だ」


 その言葉にディアの笑みがますます強くなる。


「それは、君の体内電気を流しているのか?」


「ええ、そうよ。昔はよく、博士にも見てもらったわ」


 ディアがその手に広がる花火を優しく見つめる。


「手術が終わった後、私は自分の身体に流れる電気を上手く抑えられなかったの。少し力を入れるだけで電気が爆ぜるし、そのせいでお皿や窓も割れたりしたわ」


 お伽話に出てくるような話を、ディアが懐かしそうに語る。大切な宝物のように。


「それで自分の電気を制御できるように、博士から色々教えられたの。今見せているのも、博士に教えられたわ。こうして少しずつ、電気の扱いに慣れるようにって」


 小さく爆ぜる青い花を、ディアは優しく見つめる。咲いては散るを繰り返すその花に、彼女は何を見ているのか。


「そうやって扱い方に慣れてきた私は、こうやって花火を作れるようになったわ。それが嬉しかった私は、博士にこの花火をよく見てもらったの」


 自分を救ってくれた博士に見せた花火。今、彼女の手に広がる花火は、そんな博士との思い出でもあった。


「博士はこれを見て喜んでくれたわ。とても綺麗だって。まるで、私の命が輝いているみたいだって」


 すると、彼女がミコトに目を向ける。何かを問いかけるように、ワクワクと彼を見つめた。


「ね? あなたから見て、どうかしら?」


「えっと……どう、とは?」


 質問の意図がわからないミコト。そんな彼にディアがさらに笑いかけてくる。


「博士はこれを見て、私に言ってくれるの。綺麗で楽しくて……よく笑ってくれたわ」


 そして、ディアの目が彼を捉える。まっすぐに、楽しそうな笑みを浮かべて、ミコトに言った。


「元気になってくれたかしら?」


 自分の宝物を自慢するような、そんな子供みたいな笑顔だった。無邪気で、得意満面で、何も疑うことを知らない。そんな笑顔。


 ディアのそんな笑顔を見せられたミコトは、彼女をただ見つめ返していた。


 すると、ディアが何かに驚いたように目を丸くした。


「どうした? 何かおかしいか?」


「あ、ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃって」


 彼女はそう言うと、今度はにっこりと嬉しそうに笑った。


「今、ミコトさんが笑ってくれたのに驚いちゃって。ミコトさんが笑うの、初めて見たわ」


 今度はミコトが驚く番だった。自分でも気付かないうちに、ミコトは無意識に笑っていたのだ。思わず口を手で押さえてしまった。


「あら。隠さなくてもいいのに」


 からかうような笑みが向けられる。気まずいミコトは一回咳払いして、彼女に向き直った。


「いや、すまない。自分でも驚いてしまった。でも……そうだな」


 ミコトが顔を向ける。それは静かな口調だったが、彼の口元が微かに緩んでいるのが、ディアにも見えた。


「少し気も紛れたよ。良い物を見せてくれて、感謝する」


 ミコトの言葉を聞いて、ディアが満面の笑みを返した。彼の言葉がどう響いたのか、その顔が物語っていた。


 その時、壁掛け時計のカッコウが鳴き出した。もう寝る時間だと伝えるように。


「もう遅くなったし、そろそろ寝よう。早くあなたも寝るんだ」


「あら、残念。楽しい時間はすぐに終わっちゃうわね」


 そんなことを言いつつ、ディアがトンと立ち上がると、そのまま病室に向かって歩き出した。部屋から出る直前、彼女が振り向いた。


「それじゃあミコトさん。また明日!」


 そう言って、彼女は病室に向かって行った。


 後に残されたのは、夜の静寂とコップを握るミコトだけ。


 一人きりになった瞬間、ミコトは自分の顔に手を触れた。


 自分でも気づかないうちに笑っていた。その事実に彼は驚いていた。


 ディアは言った。初めて笑うところを見たと。それもそうだろう。自分が笑うなんて、本当に久しぶりのことだった。


 だけど同時に、それも当然だと思った。ディアが見せてくれた青い花火。その光を見た時、ミコトは自分の中が暖かくなるのを、確かに感じていた。


 彼女の光が自分を癒してくれた。それが何よりの証拠だった。


 ミコトがコップに残っていたワインを一気に仰いだ。


 いつもと同じワインなのに、いつも以上に心がおいしいと感じた。それだけは確かだった。

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