9.騎士
「騎士爵をですか?俺に?
俺、騎士やめてますけど?」
次の日になって学校長室に私とユリアスが呼ばれ、
ユリアスに騎士爵が受け渡されることになったと聞かされた。
一番驚いているのはユリアス自身だった。
「あぁ、陛下から昨日の迷惑の詫びと、これからの護衛のためだそうだ」
「護衛ですか?」
「フレッドの王位継承権ははく奪された」
思わず、息が止まるかと思った。
昨日の件はただでは済まない気がしていた。
それでも、王妃の子であるフレッド様から、
王位継承権をはく奪するほどとは思わなかった。まさか、の出来事だった。
「それでも、王族にいることには変わらない。
今後は臣下に下るだろうがな。それでも身分はまだ高い。
昨日の証言をしたロージー君が危ないんだ」
覚悟はしていたけれど、やはり危険な立場になってしまった。
王子の王位継承権を奪ったのだから、当然ではある。
「逆恨みしたフレッドや、側近を降ろされた二人、それにフレッドを推していた貴族たち。
王妃やその生家という線もある。
護衛をつけておいた方が良いだろうとのことだ。
そのためには平民のままのユリアスでは守り切れないだろうと。
陛下の命を受けて護衛をしている、ということであれば王妃でも手が出せない」
「私を守るためにユリアスを騎士にするのですか?
あんなに騎士を嫌って魔術師になろうとしているんですよ?」
「何も、騎士が魔術師になっちゃいけないわけじゃないぞ?
両方なればいいじゃないか。
それに、ハンドウイル家に戻る必要もない。ダメか?ユリアス」
「……いえ、ロージー先生が危ないのであれば、護衛します。
それが騎士であった方が守りやすいのであれば、問題ありません。
俺はあの家と縁が切れて魔術師学校にいられるのであれば、特に何も」
「……そんな」
本当にそれでいいのだろうか。
騎士になりたくないと言っていたのは、よほどのことがあったからでは。
「あ、あと、二人とも俺の後見下に正式に入ってくれるか?
婚約を無理やり持ち掛けるような嫌がらせがくることがありうる。
嫌だろう?そんなの?」
「「嫌です」」
反射的なのか、声がそろった。
ユリアスも政略結婚を嫌がっているんだ。
あんな婚約破棄されたら、それもそうかな。
「だから、俺の後見下に名前を入れておくよ。
それでもうるさいようだったら、最終的には養子になることも考えておいてくれ。
養子になったから子爵家と縁を切れとは言わないから」
「わかりました。何かあればよろしくお願いします」
「俺も問題ありません。よろしくお願いします」
話が終わって、廊下に出た瞬間、ひざから崩れ落ちそうになった。
ユリアスが腕をつかんでくれたおかげで崩れ落ちなくてすんだが、
足に力がうまく入らなかった。
ひょいって感じでユリアスに片手抱きされ、肩に頭を乗せられる。
恥ずかしくて逃げ出したくなるが、
暴れようにも暴れるだけの力は残っていなかった。
「ごめんね、ユリアス。力が抜けちゃって……」
「いい、わかってる。こっちこそ、俺が巻き込んじゃったせいだ。ごめん」
「ユリアスのせいじゃないから」
「うん、だけど、ごめん」
これ以上何を言ってもユリアスの負担にしかならないと思い、口を閉じた。
本当に王族に関わると良いことが何もない。
これ以上は何もなく済むように祈った。




