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前世で裏切られたので王族との結婚は望みません  作者: gacchi(がっち)


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20.隣国の王宮での生活

王宮での生活が始まってから二週間。

魔術学校に通いながらマリージュ様と交流する日が続いていた。


今日は魔術学校は休みなため特に予定は入っていなかった。


「それにしても魔術学校での活躍は聞いたわ。

 学校長が泣いて感激していたらしいわね」


「あれは、どうしてもとお願いされて仕方なく」


マリージュ様は暇なのか、毎日のように私とお茶をしに部屋に来ていた。


その間は安全だからと言ってユリアスは騎士団の訓練に行っている。

護衛騎士として本来は毎日のように稽古する時間が必要なのだとか。


マリージュ様がいる間は、ベージェ王子が押しかけてくることも無く、

マリージュ様の護衛騎士が何人もいるために他の危険も少ない。


ユリアスが私から離れられるタイミングはこの時間くらいしかなかった。


「光属性で評価されるのは当たり前だと思ってたわ。

 だってこの国には光属性はほとんどいないのですもの。

 でも、水属性での評価も高いなんて、

 さすが叔父様の学校で講師になるだけのことはあるわね」


「ほめていただけるのはうれしいのですが……。

 この国には光属性がいないのですか?

 めずらしがられている気はしていましたが、いないとは思っていませんでした」


「ほら、光属性は王家の血と言ったでしょう。

 アステカニア王国の王家の血なのよ。

 今までアステカニアからルーニア国に嫁いだ王族はいない。

 公爵家からも、私が初めてになるのではないかしら。

 だからルーニアには光属性がいないのよ」


「あぁ、なるほど。ルーニア国の王族は光属性とは関係ないのですね」


「ルーニア国の王族は土属性が多いわ。

 だから私が王妃になることに反対されないのだと思うけど」


そう言ってマリージュ様が束ねていた髪を一房掴んでこちらに見せる。

綺麗な土の色の髪に緑がまざる。


土属性も葉属性も農耕がさかんなルーニア国では重宝されるだろう。


「ルーニアでは土、葉、水が大事にされる感じでしょうか」


「ええ、そうね。

 それでもやっぱり光属性をありがたがるのは聖女のイメージが強いせいね。

 アステカニア王国の初代は、

 光属性の国王と聖女が結ばれたのが始まりだと言われているわ。

 魔獣が多くて誰も住めなかったアステカニア王国は、

 光属性の王族がいなければ生き残れなかっただけですけどね」


「その一方で穏やかな気候のルーニア国では、

 農耕の主導者としての王族というわけですか。

 隣国でもかなり違いますものね。いろいろと」


そう、ルーニアではいろいろと違うようだ。

アステカニア王国とも前世の王国とも。特に礼儀作法が。


「今朝もあの馬鹿が食事中に押しかけたと聞いたわ。

 ……ほんっとうに申し訳ないと思ってるの。

 これ、差し上げるから好きに使って?」


渡されたのはマリージュ様が愛用している扇だった。

見た目は普通の扇のようだが、思ったよりも軽くできている。


「軽く、丈夫に作ってあるの。殴ってもすぐ壊れないように。

 我慢できなくなったら、それで頭をスパーンとやってくれていいから」


「スパーンと……ですね。わかりました」


毎日のようにベージェ王子があらわれて、

わけのわからないことを言われ、さすがにイライラしている。


おそらくユリアスが騎士団に訓練しに行ったのは、

そのイライラをぶつける先が欲しかったのだと思う。


うらやましい。私も何かぶつける先が欲しい……。

この扇、本当にスパーンしちゃっていいかしら。


「そう言えばユリアスはここの騎士団でも喜ばれていたわ。

 とってもいい訓練になっているそうよ。

 たまには見学しに行ってみない?

 王宮の部屋にばかりいるのもあきるでしょう」


たしかに王宮内は部屋か中庭くらいしか行っていない。

下手な所に行ってベージェ王子にからまれたくなかったからだ。


でも今ならマリージュ様がいてくださるし、ユリアスの訓練も見てみたかった。


「そうですね。騎士団に行ってみたいです。

 見学させてください」


「ふふふ。驚くわよ~」


驚くってなんだろう?首をかしげてしまった私に、

マリージュ様は見たらわかるわよと言うばかりだった。


「えっ。……なんですか、これは?」


騎士団の訓練所に着いて、演習場の中に入って見たら、

演習場のいたるところに人が倒れていた。


遠くの方で剣がぶつかる音がする……真ん中にいるのは金色の髪。

ユリアスだろうか。それを囲むように数人の騎士がいるのがわかる。


「やっぱり今日もこうなってたわね。

 ユリアスが来たら、その日訓練所にいる者が全員で立ち向かうそうよ。

 まだ一度も勝てていないらしいわ。ユリアス一人に」


「え?全員でユリアスに?」


じゃあ、あの倒れている人たちは全員ユリアスに負けたってこと?

体力が無くなっているのか、ぼろぼろになって倒れている騎士たちに、

なんとなく申し訳なくなる。


うちのユリアスがすみませんでした……。


すぐさま演習場に入って、手あたり次第に治癒をかけて回る。

完全復活というわけにはいかないけれど、せめて歩いて帰れるくらいまでは。


半分くらいかけ終わった頃、なぜかわからないけれど罵声をあびせられた。


「この偽聖女!あんたなんか呼んでないのよ!

 今すぐ帰りなさい!」


振り向いてみると年齢は十二,三歳くらいだろうか。

かなりくすませた感じの金髪に水色の目の少女が仁王立ちしている。


顔立ちは可愛らしいが、目を吊り上げて怒る様は可愛らしさを台無しにしている。

黙っていれば美少女に見えるだろうに……。


どうして怒られたのかわからず、他に何かあるのかと思って辺りを見ても、

その少女が怒ってる相手は私のようだった。


私に向かって偽聖女って言った?

聖女をかたったことはないけど、騙していると言えばそうなのかしら。


「私は聖女じゃありませんけど、何か御用ですか?」


誤解を解くようににっこり笑って問いかけたけど、

逆に少女の怒りは増したようだった。


「……これが噂の。負けないわよ」


わなわなと震えながら小声でそう言い、演習場から出て行ってしまった。

今のは何だったのだろうか。


「ごめんなさい。

 今日もいるかもしれないとは思ってたけど、

 まさかああいう行動に出るとは思って無かったわ」


「マリージュ様、今の少女はどなたですか?」


「今のは私の義娘になる予定の、第一王女ミルフェよ」


「第一王女様?何だか、私嫌われてません?初対面ですよね?」


「実はね、困った子なのよ。

 あの子、自分は光属性だって言い張っちゃってて」


「えーっと。光属性じゃないですよね?

 髪は金色にも見えなくは無いですけど、あれって土属性ですよね。

 瞳が水色ってことは水属性もあるんじゃないですか?

 ルーニアの王族としては最高の組み合わせだと思いますけど」


「そうよねぇ。私もそう言ったのだけど……。

 自分は光属性と水属性で、聖女に違いないって」


「え?聖女、ですか?」


「そう。聖女」


聖女とはいうものの、何が聖女なのかは決まっていない。

聖女とは、歴史上に出てくる聖なる乙女のことであって、現実にはいないからだ。


言い張るのは自由だが、いないものなのに言っても、何も意味はない。

聖女だから何かできるというわけではない。


「それと、もう一つ。

 自分が聖女なのだから、ユリアスは自分のものだって思ってるのよ」


「は?」



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