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前世で裏切られたので王族との結婚は望みません  作者: gacchi(がっち)


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16.嫌な出会い

「仕方ない……ドレスを浄化するわ」


そう言ってロージーは光属性と水属性の両方を使って浄化していく。


ドレスや手についた泥を洗浄して、少しのほこりすら見えないほどに綺麗にしていく。

頭の先からつま先までが、細かな水滴に反射して光り輝くのをただ見惚れていた。


こんなに近くで浄化しているのを見るのは初めてだった。

制服の時とはまた違って、金色の髪で眼鏡もかけず、ドレス姿のロージー。


ゆっくりとキラキラ光り輝いて綺麗になっていく様は神々しいくらいで、

天使ではなく女神のように見えると思っていた。


「……まさか、聖女か?」


浄化が終わりかけた頃に後ろから声がして、

しまったと思い振り返ると礼服にマント姿の男性が立っていた。


銀色の髪を一つでまとめた緑目の細身の男性が、驚いた顔でこちらを見ている。

この方は見たことがある……しまったな。


「……マイケル王子、どうしてここに」



王族ならロージーにかかっている認識阻害の術が効いていない。

完全に今の浄化しているところを見られてしまった。どうしようか。


あまりのことにロージーも動けずにいるようだった。

このままではまずい。そう思い、とっさに動いた。


「少しの間我慢していて」


「えっ」


驚いているロージーを縦に担ぎ上げて走り出した。


お姫様抱っこなどではなく、荷物を運ぶような担ぎ上げ方なのは申し訳ないが、

悠長なことをしている場合ではない。


マイケル王子が戸惑っているうちにここから逃げなければ。

ロージーは担がれているのに慣れていないのか、必死にしがみついてくる。


「おい!そこの者たち!!待て!」


後ろから王子の声が聞こえてきたが、止まる気なんてなく、そのまま走り続けた。

中庭の迷路のような通路を通って、外壁の外に出る頃には、周りに人はいなくなっていた。


「ねぇ、どこに行くの!」


「抜け道があるんだ。王族が何かあった時に逃げる用の。

 護衛たちは知っていても、王子が実際に使ったことは無いはずだから。

 あのままあの場で話し続けるのはまずい。一度逃げて、学校長に相談するぞ」




誰にも見つからないように逃げて、なんとか学校に戻る頃には数時間が経っていた。

研究室に入ると、中には困った顔をした学校長が待ち構えていた。


「いや~大変なことをしてくれたようだな」


のんびりした口調とは違って困った顔をしている学校長に、ただただ謝る。


「申し訳ありません。油断してました。

 中庭だし、人気が無かったから大丈夫だと思って……。

 泥だらけのドレスを綺麗にしたくて浄化をかけてました」


「あぁ、うん。だいたいは予想ついてる。

 あれね、光が強過ぎて広間のほうまで見えてたから。

 と言っても、王族以外は見えなかったと思うけどね。

 王家の血が光属性だって言っただろう?

 たとえ光属性を持っていなかったとしても、近くで使われるとわかるんだよ」


ロージーの浄化を広間の中から見ていた?王族たちが?

だからマイケル王子が中庭まで見に来たのか?


「学校長、とりあえずまずいと思って逃げましたけど、

 あの後はどうなったんですか?」


「ああ。王族以外のものは気が付いていないから、そのまま夜会は続けられたよ。

 終わった後で陛下に呼び出されて、話を聞かれたけどね。

 知らないなぁって誤魔化したら王宮の部屋に閉じ込められている」

 

「え?閉じ込められている?学校長がですか?」


「うん。もちろん、こっそり抜け出してきてるけどね。

 マイケルがロージーのことを聖女だって言い出してね、結婚したいって言ってるんだ。

 マイケルに婚約者がいなかったこともあるが、聖女なら王族と結婚するべきだってね」


「……そんな」


ロージーをマイケル王子の妃に?

……王太子妃教育を受けたロージーなら可能だろうが、本人は望んでいない。


「だが、ロージーにはそんな気は無いだろう?」


「ありません。嫌です!」


「学校長、何か手はありませんか?」


「ある。まず、二人には早朝から旅に出てもらおう。

 隣国の王宮に手紙を届けに行ってくれないか?」


学校長の手紙を隣国の王宮に届ける?

それが王子との結婚をしなくて済む手になるのか?


「それは、隣国の王族に助けを求めるってことですか?

 それじゃあ、結婚相手が隣国の王族に変わるだけだと思うんですけど。

 ロージーの嫌は、そういうことじゃないでしょう!」


「あぁ、もちろん知ってる。心配しなくていい。

 君たちには駆け落ちをしてもらう」


「「え?」」


学校長がそう言って出して見せたのは、旅装束に魔術師のローブ、野宿用の一式だった。

二人分がそろっているように見える。


「聖女と騎士という本では、

 聖女は王子との結婚を嫌がって騎士と駆け落ちをするんだ。

 今、巷ではこの本がかなり流行っている。

 そんな中、君たちが馬で隣国に向かえば駆け落ちしたと噂が流れるだろう。

 王子との結婚を嫌がった聖女を無理やり帰国させて婚約者にしたら……

 ただでさえ第二王子のせいで評判が落ちている王家が、もっとひどいことになるだろうね」


「本当に、それであきらめてくれると思いますか?」


「もちろん。俺がそう説得してあきらめさせる予定だから。

 だから隣国にお使いに行って、一月位あちらの魔術学校の研修を受けておいで。

 実際には魔術師学校の研修で行ってるけれど、駆け落ちだと思わせればいいんだ。

 はい、これが手紙ね。

 明日の朝には王宮から使いが来るかもしれないから、日の出とともに向かって。

 街中を抜けるまではローブを被らないで素顔を見せて行くように。いいね?」


「わかりました。ありがとうございます」


「あぁ、ユリアス。ロージーは俺の養女という肩書で隣国に行かせる。

 たとえ隣国の王族でも嫁には出さないと言っていいから。

 護衛騎士として王弟が任命する。必ずロージーを守るように」


「はっ!」


ありがたい。王弟殿下の命令があれば、多少の無理は言える。


学校長はそれだけ言うと、また王宮へと戻って行った。


部屋の中に閉じ込められているはずの学校長が、

どうやって抜け出してきたのか気になるけれど、

まずは王宮からの使者が来る前に出発しなければいけない。


あまり荷物は持てないので最低限の旅の準備を整えて日の出を待った。


もう少しで朝陽が見え始めるという頃、馬に荷物を括り付け、

ロージーを後ろから抱きかかえるようにして馬に乗って出発した。




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