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聖女試験で零点を取りました ~リハビリ計画を立てろと言われたので、患者の両足を再生したら失格になりました~  作者: 紗々羅


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ブラックな聖女、目覚めない少女

 筆頭聖女リュミエラと、グラントール神殿長の「人格の交換」――。

 セラフィーナの規格外の魔力によって行われたその大魔術は、一見すると、完璧に成功したかに見えた。


 二人は互いの手を取り合い、涙ぐみながら喜びを分かち合う。


「ああ……元に戻れたわ、愛しい私の体……!」


 うっとりと自分の白い肌を撫でさする、筆頭聖女リュミエラの姿をした少女。


「ふむ、これで私の威厳も元通りじゃな。あの美しい体に未練がないと言えば嘘になるが……少々残念ではあるが仕方あるまい!」


 恰幅のいい体を揺らし、立派な髭を撫でつけるグラントール神殿長。

 二人が歓喜に沸く一方で、部屋のソファには、完全に燃え尽きた姿で突っ伏している少女がいた。


「すやぁ……、すやぁ……」


 この大騒動解決の最大の功労者、セラフィーナである。

 連続で人格の入れ替えという神をも恐れぬ大魔法を発動した彼女は、完全に魔力切れを起こし、泥のように眠りこけていた。


「……セラフィーナ様も連続で魔法を使われていましたので、さぞお疲れでしょう。このままそっと寝かしておいてあげましょうね」


 リュミエラはそっと彼女に毛布をかけ、神殿長と共に足早に部屋を後にした。やりきった満足感でいっぱいの彼女たちの足取りは軽かった。


 しかし、事態はそう簡単には終わらない。

 セラフィーナは一昼夜が経過しても、ぴくりとも目を覚まさなかったのだ。

 さすがに心配になり、神殿へ迎えにやってきたセラフィーナの従者アルノーは、呆れ果てた顔で彼女を抱き上げると、そのまま自身の施療院へと連れ帰っていった。


 一方、神殿には何食わぬ顔で「日常」が戻ってきた。


 いつもなら夜明けと共に完璧な姿を現す筆頭聖女リュミエラが、その日に限って、珍しく大寝坊をやらかした。

 慌てて飛び起きた彼女(中身:セラフィーナ)を待っていたのは、容赦のない現実だった。


「聖女様、おはようございます! さあ、今日のスケジュールはこちらです!」

「すでに予定に遅れが出ておりますので、本日は全速力で巻いていきましょう!」


 部屋に押し寄せてきたのは、後輩聖女のセレスティアとアイリシアだ。二人は山のような書類とスケジュール表を抱え、有無を言わせぬ笑顔でリュミエラを取り囲む。


「まず、聖女の祝福を求めて町の商店主たちが大勢押しかけております。すぐに祝福をお授けください!」

「その後は、治癒魔法を求めて病院から不治の病の患者様が多数。苦しみを除くための祈祷を捧げていただきます!」


 次から次へと浴びせかけられる要望。息をつく暇もない分刻みのタスク。

 怒涛のスケジュールを前に、リュミエラ――いや、数日前まで自らの施療院でぬくぬくとサボり散らかしていた彼女の魂は、絶望に目を見開いた。


(な、何よこれ……!? とんでもないブラック職場じゃないの!!)


 筆頭聖女リュミエラが当たり前にこなしていたはずの聖女の公務。しかし、怠惰が染みついていたセラフィーナの魂にはあまりにも過酷な労働だった


(それに……何なのこの体!? 確かに私の体だけど、魔力が、魔力が少なすぎるわ! すぐに底をつくし、出力も小さいし……ひ、ひえぇぇーーっ!!)


 悲鳴を上げながら、押し寄せる信徒の波へとドナドナされていくリュミエラ(中身セラフィーナ)。

 彼女が本当の意味で「聖女の激務」を思い知るには、十分すぎる日常の再開だった。


シルバーウィーク期間中も平日は朝7時に投稿しますのでよろしくお願いします。

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