#9「宝物」
「ははっ、どいつもこいつも呆気ないなぁ〜!「藍都」w」
「父上……いや、穂高ぁぁぁぁ!!!!」
そう僕が穂高に向かって怒り狂うように叫ぶと、
「うるせぇなぁ……、あの二人は「目障り」だったから殺したんだよ!!」
「……!」
「ったく、あの女は要らねぇこと言いやがるしよ……!せっかく「神楽銀財閥の政治の闇」を揉み消してやったのによぉ……!まぁいい、一番「厄介」なやつは殺れたしなw」
「……。」
何が目障りだ
何が「財閥の政治の闇」を揉み消してやっただ……
こいつは、人を道具としてしか見てないのだ。
こいつは、何があっても殺さないといけない……!
たとえ、刺し違えたとしても。
絶対に、絶対に。
殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス
その瞬間、僕の心の何かが解き放たれたような、そんな気がした。
「絶望で言葉も出なくなったか?ははっw表の姿はカッコよくても、裏では怯えがちな所も昔から変わってねぇなぁ!」
「ほざけ。絶対に——」
僕はその言葉と共に地面を蹴るように穂高の方向へ駆ける。
「……!?」
「——お前は殺す!!」
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そう。
僕は昔から、カッコつけたがりの弱虫だった。
いや、両親の面目を潰さないよう、ただ「仮初め」の自分を演じた。
演じなければ、少しでも弱みなんて見せれば、死よりも苦しいことをされる。
小さい頃から歯向かえば苦しいことをされると理解していたから。
大切な人が出来てはカッコつけて、裏ではそんな自分が本当の気持ちとはかけ離れていることを考え、吐き気で眠れない日もあった。
でも、これが正しいんだ。
昔から両親からの虐待を受け続けていた僕はいつしか、そう思い込むようになっていた——。
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——でも。
今は。
僕が全てを「失った」あの日。
全てが「壊れた」あの日に。
唯一、僕の味方で居てくれた彼女を。
僕の記憶から消えてしまっていたはずなのに、その記憶の時間の針を動かすため、偶然とはいえ、また僕の前に現れてくれた君を。
大切な「宝物」を。
もう、失くしたくない。
もう2度と君が動かしてくれたこの時間は止めてはいけないから——。
「……!ぐはっ!?」
僕は穂高にナイフを突き刺す。
だが。
「……なんてな。」
「……!?」
穂高の腹から一向に血が出ない。
「俺は非常時用に服の中に防弾もナイフも貫通しないチョッキを着けてんだ、だからナイフなんて意味ねぇんだよ!!」
そう言いながら穂高は僕を蹴り飛ばす。
くそっ……、反撃を喰らう前に終わらせたかったのに……!
「藍都、もう楽にしてやるよ。じゃ……」
「死ねぇ——がはっ……!?」
「!?」
僕を刺そうとしていた穂高が突然、頭から血を流して倒れたのだ。
「……良かった……藍都が……死ななくて……。」
「……!?紗綾……!」
そう。頭を撃たれたはずの紗綾が、意識を取り戻し、穂高の頭を撃ってくれたのだ。
「紗綾……!?ど、どうして……?頭撃たれたはずだよね!?」
そう僕が訊くと、
「……実はさ……、あれ——、」
「——演技なんだ笑」
……?ん……?
え……?
「……えっ?」
「だから……わざと死んだふりを演じてたの」
「はぁぁぁぁぁ!?」
意味が分からない。いや、この死んだふりが功を奏していたとしても理解が出来ない。
「なんでそんなことするんだよ!!」
僕は大きな声で紗綾にそう怒る。
「ごめんごめん……、そんな心配してくれてると思わなかった笑」
本当にこの女子は何を考えているのだか……。
「……もうやめろよ?「心配だったんだから」な……。」
「……!?私の心配なんてしなくても……。藍都さえ生きていればいいんだよ?」
僕の言葉に紗綾は驚いた表情を浮かべながらそう言う。
「……なんで僕だけとか言うんだよ……。紗綾が生きていなかったら意味ないだろ……!」
僕のこの言葉で紗綾は、
「……ふふっ♪これは告白かなぁ〜?w」
いつものように僕をからかい始める。
「なんでそうなる!?ったく、帰るぞ!」
「今の反応は図星だねぇ〜?」
「もう絶対助けないからな」
「ごめんごめんw」
いつもと変わらない調子を取り戻した紗綾なのだった——。
【次回 最終話……?】




