#4「微かな記憶」
「お願い、藍都くん勝って……!」
家庭科室から逃げ出した私は、神楽銀の仲間達にバレないような所で密かに藍都くんの事を見ていた——。
——「とは言ったものの……この人数か……。」
ざっと見て神楽銀の取り巻き達は15人。
だが、紗綾に危害を加えさせない為にも、ここで勝つことが必須条件。
負けるわけにはいかない。
「どうしたw?カッコよくやって来た割には、ビビってるようにしか見えないがw?「五月雨財閥の御曹司」さん笑」
「うるせぇ……、僕はお前らに負けるわけにはいかないんだよ……!」
「勝てるものならやってみろよ!!五月雨ぇぇ!!」
「こっちのセリフだ!!」
そして、僕vs神楽銀とその取り巻き達の殴り合いが始まった——。
——どれくらい経ったのだろう。
もう窓の外は暗闇に星の光が点々としているような、そんな時間になっていた。
「……なんとか、勝ったか……」
「……っ!?」
頭がズキズキする。
その部分を手で触ると少し手に血がついていた。
多分、不意打ちで鉄の棒で殴られた時の怪我だろう。
この件について、両親になんて言おうか。
そんなことを考えながら、家庭科室を出ようとした時。
「——大丈夫!?」
「えっ……!紗綾!?」
声が聞こえる方向に目を向けると、そこには家庭科室の近くの外の草木に隠れている紗綾の姿があった。
「なんでこんなところに……、危ないだろ……!?」
「ご、ごめん……。藍都くんが心配で……。」
「心配しなくていいよ。」
「紗綾は僕が守るか……ら……。」
「あ、藍都くん!?どうしたの!?」
目の前で藍都くんは意識を失ったように倒れた。
その後のことは記憶が曖昧でわからない。
いつの間にか、私は病院にいた。
藍都くんの容体は悪くなく、大事には至らなかった。
殴り合いの次の日には学校に来ていたくらいである。
だが、問題はここからであった。
神楽銀財閥の御曹司と五月雨財閥の御曹司の殴り合いの喧嘩。
もちろん簡単に許されるはずのない問題である。
そして何よりも酷い話だったのは、「藍都から」殴ってきた、と神楽銀は事実を捻じ曲げてきたのである。
勿論、本当にそうであれば、こんなことあってはならない大問題。だが、嘘だ。
なのに、どうして——。
私は衝撃的な噂を聞き、急いで藍都くんのもとに向かう。
そして、藍都くんのもとへ辿り着いた私は、こう言う。
「藍都くん……!なんで……神楽銀のことを許しちゃったの……!?」
——君は、藍都は、神楽銀の話が本当だとみんなに言ってしまったのだ。
「……これで、君じゃなくて、僕の方にいじめが向くだろ?」
藍都は色んなものを犠牲にしてまで私を助けてくれた。
だから次は、私が助けなきゃ……。
そんな風に思う私だけど、聞いてしまうのだ——。
——ある日、ちょうど藍都くんの家を通り過ぎようとした時だった。
藍都くんが父親に外で説教みたいなことをされていたように見えたため、私は近くで隠れながら話を盗み聞くことに。
「……藍都。お前にはうんざりだ。2度と、俺ら両親の前に現れるな。」
「……っ……!はい……。」
「お前はもう——、」
——いらない。
冷酷な目で藍都の父親は、藍都くんにそう言い放った。
あの人達は、同じ人間と思えない。
あんな奴ら、家族じゃない。
だからこそ、あいつらを、
始末して「復讐」しなければならない。
これが私の藍都にしてあげられる最高のプレゼントなはず——。
——そう、今も私は思っている。
だから。
「……悔しくないのですか?五月雨さんは……。」
「……。」
藍都は私の言葉を聞いて少し黙る。
そして、こう答える。
「……悔しいに決まってるだろ。でも……、」
「「紗綾」を巻き込みたくはない」
「……!?」
「なんで今……、下の名前で呼んだの……!?」
「い、いや、あ、あれ……?僕も、何でなのかわからない……。」
二人の間に沈黙が訪れる。
少しして、私は居心地の悪いこの沈黙を破るように、
「きょ、今日は疲れたので早く寝ますね。お休みなさい、五月雨さん。」
「あ、ああ。おやすみ」
私はさっきの藍都の言動を聞いて思った——。
——まだ、藍都は私のことを微かに憶えている。
【あとがき】
どうも!Matchaです!!
ようやく物語が動き始めそうになりましたwここまで長かった……。
ではまた!次の話か、それ以降の話で会いましょう!またね!




