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君がいてくれたから、僕がいる。  作者: Matcha
第1フェーズ 「変わり始めた僕の人生」
3/7

#3 「私の救世主(ヒーロー)」

 ——「もう僕には、帰る場所がないんだ。」

「えっ……。」


 椛山は口を手で隠して、そう言葉を漏らす。


「……昨日君とこの館に泊まってもいいか話してた時にさらっと僕が言ったことなんだけどさ。」


「……五月雨さんが学校でいじめられている、ということでしたよね。」


「ああ。」


「両親に相談したりはしなかったんですか?」


「……両親は、僕がいじめられていることを全く信じてくれないんだ」


 〘……知ってるよ。〙


「……そう、なんですか……?」


 〘……やっぱり、君なんだね。〙


「ははっ、なんでだろうな。」


「……覚えてないのですか……?」


「……何故か、その頃の「記憶」がないんだ。」


「……!?」


〘……そうだよね。だって、「あんなこと」され続けてたんだから。〙


「……どうして……?」


「わからない。でも、僕は「思い出したくない」のかもな。」


 〘そうなんだ……。大丈夫、無理に思い出さなくてもいいよ。〙


「そう、なんですね……。」


「どうした?何か変なことでも言ったか?」


「……いえ、何もありません。」


 そう、私は知っている。


 何故、藍都が両親に信じてもらえてないのか。それは今から何年も前である——、


 ——〘貴方が私を「助けてくれた」、あの日のこと。〙


 ——6年前。


 小学4年生だった私は、毎日のように学校でいじめられる日々を送っていた。


 学校に、生きたくない。


 そう思っていた私だけど、親には言いたくない。


 変な心配をかけたくないから。


 でも、本当に私が「限界」を迎えたら、きっと気づいて助けてくれるはず、だから、今は我慢しなきゃ。


 ……って思ってたけれど。


「……。」


 今日はついに、自分の席の椅子がなくなっていた。


 キーンコーンカーンコーン。


「あっ……」


 授業が始まる鐘の合図が鳴る。


「おーい、もう授業始めるぞー。みんな席に座れー」


 そう言いながら、先生は私の方に視線を向ける。


「……椛山。椅子は何処にいった?」


「……なくなりました」


「……そうか。じゃあ廊下に立ってろ」


 そう、先生も私の味方じゃないのだ。


 ——昼の給食の時間。


 私が給食のご飯を食べようとした時。


「おい、椛山!」


 とある男子がこっちに向かって来ながら、私を呼ぶ。


「……何?」


 そう私が言うと、男子は私のご飯の入っている皿を取り——、


「……ちょっ、返して!」


 私はそう呼び止めるが、


「……っ……!」


 ——その男子は私の呼び止めなど聞こえてなかったかのように私のご飯をゴミ箱に捨てる。


 この男子の名は、「神楽銀(かぐらぎ) (ごう)」。クラス全体を動かして私をいじめてくる、いじめの黒幕だ。


「ハハッ、お前に給食なんていらないだろ笑」


 そう私を嘲笑った後、豪はこう私を脅迫してくる。


「……何度も言ってるが、警察になんて言えば、あんたら家族の命はないからな?」


 そう、豪は神楽銀財閥の御曹司。警察などに助けを求めたところですぐに全て揉み消されるだけなのである。


 そして私は今日もまた、給食を食べることができなかった。


 ……そう、これが私の日常。


 でも、本当の苦しみはここからなのだ。


 ——放課後。


 帰ろうとしていた私だったが、案の定、いつも通り神楽銀に家庭科室に呼び出された。


 私はちゃんと呼び出された家庭科室で待つ。


 なぜなら前、呼び出しに無視した時、クラスメイト全員から殴られるなど、酷い目に遭わされたのだ。


 私が家庭科室に着いてから少しして、神楽銀がやって来た。


 神楽銀の後ろの方には、神楽銀の仲間たち、いや、金に目が眩んだ奴らの集まりがいた。


「よしよし、偉いな、椛山。」


 そう言いながら、神楽銀は私の頭を触ってくる。


「触んな!」


 そう言って私は神楽銀を突き飛ばす。


「威勢がいいねぇ〜、でも——」


「——あんた1人でこの人数相手に何か出来るとでも?」


 この言葉とともに神楽銀とその仲間たちは一気にスイッチが入ったように私に襲い掛かる。


 また、いつものように身体をアザだらけにされる——、


 ……そうなるはずだった。


 ——君が来なかったら。


「……えっ?」


「あ、藍都くん……!?」


 私の前には、小学2・3年生の頃、同じクラスメイトで仲の良かった、藍都くんの姿があった。


 4年生になった今はクラスが離れ、いじめの件については心配かけたくないから、話していなかった。


「早く逃げろ!ここは僕が引き受けておくから!」


「で、でも……それじゃあ藍都くんが……!」


「大丈夫、何も考えるな。紗綾の辛さに比べたらこんなの、痛くもかゆくもないから。」


「……ごめんね、藍都くん……!」


 それだけ言って、私は家庭科室を後にした。


 〘今思えば、あの時の藍都は私の救世主(ヒーロー)のように見えたんだよ。だからこそ——〙


 ——私を守ってくれた君を、あんな目に合わせたくなかった。

【次回へ続く】

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