#11「表裏ある日常」
あの襲撃から2週間が経とうとし——、
——いつの間にか季節は秋を迎えていた。
「……もう9月か」
僕は教室の窓を開け、そう呟く。
僕の居る教室には誰も居ない。
「早く来すぎたか。」
そう。時刻はまだ7時前である。
紗綾と復讐を果たした1ヶ月間。
まるで紗綾に会ったのが昨日のように感じるくらい、早すぎる1ヶ月だったと僕は思った。
……色々と、辛かった。
でも。
その分、いやそれ以上に——。
「——楽しかったな、この1ヶ月間。」
こんなドラマみたいな展開、2度と味わえることはないだろう。
そして普通は——、
「おっはよぉ〜!藍都♪」
そう言いながら、紗綾は僕の腕に抱き着く。
——こんな幼馴染との甘々展開もないだろう……。
「ちょっ!?も、もし誰か来たらどうするんだよ……!」
そう言いながら僕は紗綾から素早く離れる。
「いやいや来ないよ〜!まだ7時前だし♪」
紗綾は能天気にそんなことを言いながら、また僕の腕に抱き着く。
「……ったく、誤解されても知らないぞ……。」
僕はそう呟きながらも、この紗綾の行動を渋々受け入れる。
「……藍都は、私とくっつくの……嫌……?」
紗綾は上目遣いでそう僕に甘えてくる。
上目遣いをする紗綾の目はまるで宝石のように美しかった。
「……っ!い……嫌とは言ってないが……、ご、誤解された時の説明が面倒くさいだろ……?」
動揺が言葉に出ている。
……もう僕の心臓は限界を迎えていた。
「……あとちょっと……、ちょっとだけならいいよ……。」
僕は紗綾の甘えに完敗した。
「……わかった、じゃあ……ギューしよ?」
「……?」
どういうこと?という考えが僕の頭の中を張り巡らせた。
「一回ギューしてくれたら今日はもう学校で甘えないから、お願い……?」
「……いいよ。」
なんかもうやけになっていた自分がいた。
「……!ありがとう……。」
そして僕らは共に視線を合わせ、共に距離を近づけ、何時しか2人の距離はゼロに。
僕は紗綾を抱きしめる。
抱きしめた彼女の華奢な身体は少し震えていた。
やはり、と思い僕はふと彼女の耳に視線を移す。
(……ったく無理してるじゃないか……。)
だが、紗綾の緊張が安心へと変わっていくのに然程時間は掛からなかった。
そしてそんな甘く、とろけるような時間は過ぎていき……、
「……!?え……紗綾さん……?と誰……?」
同じクラスメイトの女子が教室の扉の前で僕ら2人の行動を見て驚きながらそう呟く。
ヤバい。
(い、いや待てよ……?)
このことを言い出した紗綾なら、なんか誤解を解くことを言えるんじゃ……!?
と、期待を込めながら僕は紗綾の方を見る。
「……あっ……えっと……、」
言い出しっぺのあんたがおどおどしてどうするんだーー!
「はぁ……すまない、このことは他の人達には内緒にしておいてくれないか……?」
そう、ため息をつきながら僕はクラスメイトの女子に懇願した——。
まぁそんなこんなあって……。
キーンコーンカーンコーン。
「……トイレ行くか。」
僕はトイレに行くため、教室を出て廊下を歩く。
すると、
「……さ、五月雨くんと椛山さんって付き合ってるんですって……。」
「そ、そうらしいね。私も噂で聞いたよ、びっくりだよね……。」
近くでボソボソと話している2人の女子の口からそんな言葉が聞こえた。
そう。
——あの後、隠れて他の生徒が聞いていたのか解らないが、噂が流れ、結局バレた。
僕は出来るだけ早歩きでトイレに逃げ込み、個室のトイレの扉を閉めたと同時に、
「ど、どうしてこうなったぁぁぁ……。」
これからはもっと学校生活が忙しくなっていきそうだ。
そんなことを思う、僕なのだった——。
——「……ところで、「藍都」との関係は順調なのか?」
「はい。どんどん仲良くなっていますよ。全て——」
「——「順調」です……♪」




