5章 3部「王都攻略戦3」
火の玉が飛んできたのを防御壁で防いだミコト。
お返しと言わんばかりにシズクが、巨大なつららを複数本生成し、
王へ射出するが、そちらも防御壁に阻まれる。
「これじゃあ、消耗戦ね」
そう言うと、
「なら、とことんやりましょう」
とミコトが返した。
そしてあたりから黒い霧が立ち込めたかと思うと骸の兵士が出現し、カチャカチャと音をたてながら王めがけて突撃していく。
しかし、それを難なくかまいたちや火の玉の爆発で薙ぎ払う王。
その合間にも、氷柱や雷の魔法で波状攻撃を仕掛ける。
が、ビクともしない。
その様子を歯がゆい思いで見つめるアカリ。
(私も、シズク様のように魔法が使えたら……!! )
アカリも魔法が使えないわけではないが、あくまでそれは自己強化と近距離での対人使用に限定される。
シズクのような、対群、または攻城兵器並みの破壊力を持つ魔法は使えない。
今回は、後戻りができない総力戦だ。
この場で、二人の陰に隠れているしかできることがない自分の無力さに歯がゆい思いをしていた。
すると、王が虚空より何かを取り出した。
そして、それをごみを捨てるかのように投げ放った。
「あれは……《血の指輪》!? 」
確かに、血の指輪を投げ捨てた。
だが、王の手には《血の指輪》はついている。
「遊んでやれ。駄犬」
そう言うと、黒い指輪から霧が立ち込めたそしてその中から出てきたのは。
体長は人の高さほど、頭が二つあり、鋭い爪と歯、そして、よだれを垂らしまさに狂犬そのものと言った様子の獣が出現した。
「何……あれは……」
攻撃の手はやめなかったが、思わずそうつぶやくシズク。
「王家の血筋は実によい素体だ。たとえ【覇】が進行して来ようともこれがあれば押し返せるであろう」
「な…………!? 」
思わず絶句するシズク。
「弟君の遺体でこんなものを作ったとでもいうのですか!? 」
アカリも思わず叫ぶ。
「よく見よ。頭は、二つだぞ」
その言葉にシズクは黙った。
そして、獣を見続けた。
「まさか……そこにいるんですか……姉さま……」
そう思わずつぶやいてしまう。
「やれ」
そう王が言うと、獣はシズクめがけて突撃してきた。
骸の兵士達を手前に召喚し防御しようとしたが
(間に合わない!!)
ミコトがそう思った時だった。
「貴様ァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!!!! 」
激高したアカリが、獣に向かって飛び出していた。
獣は突進しながらその右前足の爪でアカリを引き裂かんとした。
だが、
「このぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!! 」
アカリはそれより素早く動き、右前足を一刀両断。
着地できなかった獣はその場で倒れた。
が、片足を失った状態ですぐに立ち上がった。
そして、再びアカリを襲わんととびかかったが、
細かい氷柱の嵐が獣を襲い穴だらけにした。
獣は肉塊となりその場に崩れ落ちた。
「ほう、こうも簡単に殺されてしまうとは。やはり練兵された兵士相手では実力不足ということかな」
と、冷静に分析している王。
「このっ……このっ……」
そう言いながら、突撃しようと魔法を圧縮し飛び出そうとするアカリ。
しかし、ユリがそれを押さえる。
「まだです。いまはまだ。どうかこらえて」
「いや、行かせろ……あいつの首を落としてくれるっ……」
ともはや狂気さえ感じるほどの怒りを露わにし飛び出さんとするアカリ。
ユリや呼び出された骸が必死にアカリを押さえる。
が、そうこうしていると、王は再び虚空に手を入れ何かをばら撒いた。
金属音がちゃりんちゃりんと鳴り響く。
ばら撒かれたものは
「《血の指輪》!? 」
無数の《血の指輪》があたりにばら撒かれた。
「バカな!? そんな数の《血の指輪》どうやって!? 」
アカリがそう叫ぶと王はくっくっくと笑いながらこう返した。
「王宮とは実によい。私が子を孕ませさえすれば良質な素体が手に入るのだからな」
そして、そこから無数の霧と獣たちが姿を現す。
「ミコト様……これは……」
「ええ、この際出し惜しみなしよ。展開できるだけ展開して」
「御意」
そう言うとこちらもあたりを埋め尽くさんばかりの骸の兵士が姿を現す。
そして、獣の集団と骸の兵士が唸り声をあげながら突撃する。
個では、獣の方が勝っているが数はこちらが上。
乱戦になりながら魔法が飛び交う。
一方は、乱戦場に、一方は魔法の射出元へ。
さながら合戦場の様相を呈してきた。
「くっ……」
奥歯を噛みしめながら、必死に魔法を放ち続けるシズク。
ユリ任せとは言え魔力は自分から出しているミコト。
乱戦を抜けてきた個体がいてはシズクたちを守れないので前に出られないアカリ。
三者三様に、この消耗戦の亀甲状態を打破する手段を考えていた。




