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5章 1部「王都攻略戦2」

 大扉が開いた。

 中にいた全員がこちらを見る。

 最初に動いたのは、ユイトだった。


 いきなり、王めがけて銃を撃った。

 ユイトの銃は魔法による改造で、火縄や装填作業を省略して発砲できる。

 銃声が鳴り響く。

 しかし、その銃弾は王自ら張った防御魔法壁により阻まれる。

 次に、狙いを王の近くに座っていた摂政に向けた。

 が、引き金を引くより先に、あろうことか王を盾にするような場所へと隠れた。

 これでは、撃とうにも撃てない。


 ここでその場にいた臣下たちは、悲鳴を上げながらユイト達が明けた扉以外から逃げようとする。

 出口は二か所。

 うち一か所は王が通る道のため、一か所に集中した。

 大急ぎで戸を開ける臣下たち。

 だが、その行く手にはケンタ達が居座っていた。


「ここから先へ通ることはできません。お戻りください」


 そう言いながら、武器を抜きじりじりとにじり寄る。

 その様子に、群衆も少しずつ本殿へ戻らざるを得なかった。

 だが、ここでハッとした臣下の一人が「衛兵!その者たちを捕らえよ!」と叫んだ。

 その場にいた十数人の衛兵もここで正気になり、こちらへ向かってきた。

 だが、「ユリさん、お願いします! 」の一声で呼び出される骸の兵士たちが衛兵たちをいとも簡単に無力化した。

 そして、そのまま骸の兵士は王の方へ向かって突進していく。

 このまま勝負あったか。


 そう思った時だった。


 王は、この混乱の隙に何らかの魔法を詠唱していたようで、すでに術式が展開されていた。

 その様子を見てシズクは「こっちに来なさい!! 」と叫んだ。

 同時に防御魔法壁を展開した。

 突入班がその防御壁に逃げ込んだ直後だった。

 まるで、爆発のような閃光と吹き荒れる暴風がユイト達を襲った。

 

 ***



 空が見える。

 辺りが静かになって最初に出てきた感想は、それだった。

 立派な宮殿は、土台の石を残し跡形もなく消し飛び、

 付近には瓦礫が散乱し、死体なのか生きているのかわからない家臣たちもその辺に複数転がっていた。

 見渡すと、ケンタの姿もあったが、家臣たち同様生きているのかわからないように転がっていた。


「ケンタ! 無事か! 」と叫ぶも反応はなかった。


 だが、それを気にする間もなく少し離れた場所から王が問いかけてきた。


「その魔力。王家に連なるものと見たが、如何に? 」


 その一言を含め、禍々しい邪気が立ち込めている。


「如何にも何も、この顔をお忘れですか! 兄上!! 」


 そう叫ぶ、シズク。

 しかし、王は依然として邪気を放ったままこう言い放った。


「我に兄弟などおらぬ。すべて殺した。そう、殺したはず、なのだがな」


 そう言いながら視線を横に立っている摂政へ向けた。


「いやはや、どういう手品か。シズク様ではありませぬか。

 あの時確かに殺したはずなのですが、どうしてここにおられますかな」


 そう、答える摂政は飄々としていた。


「確かに殺した。そう申しておったな。ヨイチよ」


 そう語り掛ける王。


「確かにあの時、シズク姫を討取りその姿を確認しました。

 が、目の前にいるのもまたシズク姫……なのでしょうかね。」


 と、考え込むヨイチ。

 その沈黙へ返さんとばかりに、《血の指輪》へ魔力を通し発光させたシズク。


「しかし、《血の指輪》を持っているところを見るに、あのシズク姫もまた王家の人間でもありましょうや」


「ほう、つまり?」


「シズク姫には替玉がいたという情報は、掴んでおります。

 しかし、指輪は本人でなければ光らない。ということを考えますに、

 一杯食わされた可能性はありますな。申し訳ございません。わが王よ」


 そう言いながら王へ向き直り謝罪するヨイチ。


「ふむ、ではあれが最後の血縁者。ということでよいのかな」


 と王は問うた。


「いかにも。王家の血を持ち《血の指輪》を持つものはわが王以外ですと、彼女一人でしょう」


「なれば、少し遊んでやるかの」


 そう言いながら首を鳴らしている王。


「お手を煩わせてしまい申し訳ありません」


「良い、つまらん政で飽きておったところだ」


 そう言いながら、にやりと笑う王。


「少しだけ遊んでやろう」


 その様子を見て、ユイトは指示を出した。


「俺は摂政をやる。

 シズク様は正面から高火力の魔法で王を叩いてくれ」


 ユイトはシズクの防御魔法壁の範囲から離れる。


「ミコトは防御壁を張りながら精霊魔法で物量戦をかけてくれ」


「私はどうすればいい」


 アカリがそう聞いてくる。


「主君を守るのが臣下の務めだろ?

 供回りをしてくれればいい」


 そう言う、ユイトの瞳は真っ赤になっていた。


「あなたその目……」


 と、シズクが心配そうに声を上げる。


「これが、血の記憶と精霊の補助を受けているときの俺だ」


 この言葉に、アカリは最初にユイトと一戦交えたときのことを思い出した。

(あの時目が赤く光っていたのは錯覚ではなかったのか)


「そっちは任せるよ」


 そう言うと、大きな声でこう呼びかけた。


「ヨイチ様! あなたも元武人となれば、魔法戦で陰に隠れていては戦えぬでしょう!

 私とどうか一戦交えませんか! 」


 そう挑発して見せた。

 ふむ、と王の顔色を伺うヨイチ。


「構わぬ、行け。奴を殺したのち、側面より姫の首を取ってまいれ」


 と指示を出した。


「御意。ご武運を」


 そう言い残し、王のそばを離れるヨイチ。

 そして二人とも、王宮の台座の脇へ飛び降りた。

 その瞬間だった。横で轟音と共に爆発の閃光が光った。


(あとはあんたが勝てるかどうかだ。シズク様。頼みますよ)


 そう心の中で祈りつつ、敵に相対した。

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