5章 1部「王都攻略戦1」
時間は午前三時と言ったところか。
辺りは、また暗く漆黒に包まれて静寂だ。
このタイミングで、指揮官クラスと宮殿突入班を合わせた人間で最後の打ち合わせが行われていた。
***
「まずは、みんな今日という日までよく準備に励んでくれた。
今日が本番だ、何がなんでも目的を達成したい。
各員、よろしくお願いします」
そう、訓示し頭を下げるユイト。
その様子に、ケンタや他集まった指揮官クラスの人間はクスクスと笑っていた。
「ユイトさん、あなたが一番偉いのにそう遜られるとやりにくいですよ」
と、ケンタが全員を代弁し、こう答えた。
「今の隊長はケンタだ。俺じゃあない。だから、頼むしかないんだって」
そう答える、ユイト。
その言葉にケンタはこう答えた。
「隊長、あなたに拾ってもらった者たちが集まっているのです。
最後までお供します。どうか勝利を我らの手に」
そう言うと、《拱手》し全員で勝利を祈念した。
***
各員が持ち場へと散っていき、宮殿突入班のみが残った。
残ったのは、ユイト、ミコト、シズク、アカリ、ケンタ。
そして、シズク奪還作戦で同行してもらったイノリを含む六人だった。
この、十一名で宮殿に突入する。
「最後に私たちだけで確認よ」
シズクがそう言い、全員が頷く。
「宮殿内部への突入は陽が出て、政が始まってから。
政が始まったら、王都内の兵士の駐屯所の機能を麻痺させて、宮殿への門を閉じる。
これでどれだけ時間を稼げるかは分からないけど、この間にすべてを終わらせるわ」
「とはいえ、宮殿内にも駐在兵はいる。その相手を、ミコトにお願いするわ。
あなたの精霊の力を貸して頂戴」
その言葉に、ミコトは頷く。そして精霊にも語り掛ける。
「ユリさん。どうかお願いします」
そうミコトが言うと、一体の骸が地面から出現しこう答えた。
「はっ、お任せを」
「ケンタたちには突入後、二手に分かれてもらう。
一つは退路を潰してもらうわ。
政を行う場所から、最も近い、地下迷宮への入り口三つを潰して頂戴。
残りは、現場での退路遮断よ。人選はお任せするわ」
「任された」
「アカリは私の護衛。そして私とユイトでその場にいる王と、摂政ヨイチを殺すわ。
何か最後に質問しておきたい人は? 」
その言葉に全員が無言で頷いた。
「それじゃあ。各員時間まで解散」
その言葉で、一旦場はお開きになり、場を去るもの。
残って談笑するものなどがいた。
ユイトも、装備品を確認するため一度部屋に戻った。
***
陽は上り王都にも朝が来た。
市場は、客を呼び込む声が聞こえ、どこかへ向かう早馬も通り、王都自体が活気に包まれている。
ユイト達は、この王都に来た時同様、馬車の荷車で移動していた。
傍から見れば、兵士を輸送しているだけに見える。
装備は各々が使えるものを用意している。
シズクとミコトは大杖。
シズクはさらに《血の指輪》を含めいくつかの指輪をしている。
アカリは、得意の長槍ではなく、室内戦を想定し両手剣を二本。
ユイトは、特注の火縄銃に短剣三本。
他、細々とした装備品はあるものの、主武装はこのような形になっている。
こうして、宮殿への正門へ向けて馬を進めていたユイト達だが、空に突然青い光の玉が一つ上がった。
やがて、それに呼応するように三つ上がり計四つ上がった。
「駐屯所四つすべて制圧です」
ケンタがそう言うと、馬の脚を速めるように手綱を握り馬車の速度を上げる。
やがて、最初の城門の前に到達すると仲間たちの手により、城門はすでに開けられており、馬車で素通りした。
そのまま、二つ、三つと素通りした。
「順調ね、この次からは魔法で飛ぶわよ」
そう言い、各員が武器を手にかける。
そして、四つ目の城門の前に着くと全員降車しシズクが魔法を展開する。
「全員私に近づきなさい! 」
そう言われ、シズクに近づくと全員が宙へ放り投げられた。
が、全員難なく着地し、城門を超えた。
だが、派手に魔法を使ったので、近くにいた衛兵が数人走ってきた。
「どこの者だ! ここは王宮ぞ! 何故魔法を使うか!! 」
その様子を見て、ミコトが反応した。
「ユリさん。お願いします」
そう言い、大杖を掲げると、地面から黒い霧が立ち込め、衛兵へ向かって骸の兵士が突撃していった。
その戦闘を見届けることなく、ユイト達は先へ進む。
途中で退路遮断組と別れ、最後、五つ目の城門。
城門前には衛兵がおり、この門を超えた目の前に、政をする宮殿がある。
「ユリさん!」
その声に反応し、骸の兵士が衛兵に襲い掛かり衛兵を殺した。
ミコトはこれまで、自分から人を殺すために魔法は使ってこなかった。
強姦されかけた時も、精霊魔法を使ったのは無意識だった。
逃げている最中も、やむを得ずだった。
だが、今回は違う。自発的に自ら人を殺めている。
彼らに何も感じないかと言われればそうではないが、他に手はないので迷っていられない。
その覚悟は、すでに終えていた。
五つ目の城門をくぐり階段を上る。
そして、大きい戸を開けた。
ぐぐぐっと低い唸り声のようなときしむ大扉の向こうには、
政の真っ最中の臣下、そして摂政と現王の姿があった。




