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4章 6部「戦いの前夜の一幕」

 こうして、密かにではあったが、各隊員への面談が始まった。

 面談と言っても複数人同時に行っていたため人数分やるわけではなかったが、時間はかかる。

 その間は、客人として匿ってもらえることにもなったので、忙しいながらも平和な日々が続いた。


 ***


「んー! 疲れた!! 」


「今日はこれで終わりです。お疲れ様です。ユイト様」


 面談を終えて、大きく伸びをするユイト。

 今日だけで三十人近くと面談を行った。

 皆、「隊長、よくご無事で……」「お元気でしたか……!! 」とユイトの生還を喜んでいた。

 かつて、共に訓練し、前線で死線を潜り抜けた戦友たちと喜び合った。

 だが、喜んでばかりではいられない。


 これから、行おうとしている計画をすべて話し、参加の可否を問うた。

 志願率は、九割前後と言ったところだった。

 残りの者は、家族のためなどを理由に参加できないと断ってきた。

 その場合は、遠方への任務についてもらったりして王都から離れるように計らった。


「しかし、あなたの隊はよくあなたについてくるわね。命の保証なんてないに等しいのに」


 とシズクは感嘆する。


「我々のほとんどは孤児です。ユイト様がいなければ今がない。そんな者たちばかりです。

 そんなユイト様の頼みなのです。命を賭して望む気持ちは同じです」


 そう答えるケンタ。


「そう……、救出してくれた子たちも、同じ心境で来てくれたのね……」


「はい、我々は国に仕えると同時に、ユイト様に返しきれない恩義があります」


 そういうケンタにユイトはこう言った。


「だが、今回の任務はそのすべてを失うに等しいのに。本当によくついてきてくれるよ。

 嬉しい限りだ」


 そう、笑顔で答えた。


「さて、ご飯の前に、風呂でも入ろうかね」


「わかりました。準備させます」


 そう言うと、ケンタは立ち上がった。


「おう、よろしく頼む」


「では、お二方。また」


 そう言い残し、部屋を後にした。


「私も、晩御飯の準備を手伝ってくるわ」


 そう言い、シズクも立ち上がり、部屋を後にした。

 部屋には、ユイト一人が残る。


「さて……」


 ユイトは、実際に事を起こすとなった際のことを頭に思い浮かべていた。

 事前にケンタとも打ち合わせてはいたが、王都内各地にある駐屯所をこの隊で制圧し、指揮系統を麻痺させる。

 その隙に、ユイト、シズク、アカリ、ミコト、他少数選抜の護衛を伴って本殿を奇襲し王と摂政を暗殺する。

 王都内の駐在兵の指揮系統麻痺、これはこの隊の戦力と実力をもってすれば可能だろう。


 だが、問題は突入部隊の方だ。

 入ってしまえばそこからは未知の世界だ。

 何が起こるかわからない。

 加えて、王自身やその場にいる近衛兵がどれほど抵抗してくるかも未知数だ。

 不安が付きまとう。


 また、王の暗殺で事自体は達成できるが、摂政も同時に殺しておかないとこの国の未来にとって癌そのものだ。

 準備は整いつつある。

 この調子で行けば1か月後にはことを起こせるだろう。

 不安と期待、そして焦りを感じながら、ユイトも外の空気を吸うため部屋を後にした。


 ***


 風呂とご飯を食べ、部屋で落ち着いていたユイト。

 本来なら寝る時間だが、今日はある人物を呼び出していた。

(そろそろかな……)

 と、思いつつそわそわして待っていると、部屋をノックされる。


「ユイトさん、いますか?」


 そう外から声が聞こえた。


「ああ、いるよ」


 と、戸へ向かって返事をすると、戸が開いた。


「ユイトさん、来ちゃいました」


 と照れ笑いするミコト。


「いや、呼び出したのはこっちだから。まあ座って」


 そう言い座るように促した。

 ミコトは正面に座った。

 しばらく、お互い見つめあっている状態になったが

 ふふっと笑い、先に話を切り出したのはミコトだった。


「こうやって、二人でのんびりお話しできるのって川で魚釣りしてた時以来ですね」


「そうだな、あの時とは状況が何もかも違うな」


 そう返す、ユイトも自然と笑顔になる。


「それで、話ってなんですか? 」


「ああ……」


 ミコトに話を促され本題に入るユイト。


「ミコト、何年生まれ? 」


「え……」


「いやだったら答えなくてもいいんだ。だけど……」


 少し間を開けて聞いた理由を明かした。


「君が通っている学校、多分俺も通ってるんだ」


「え……、でも……。いや、まずなんで通っている学校をしってるんですか? 」


 唐突な話に困惑するミコト。


「もうあの時の服はないだろうけど、ミコトを助けたときに着ていた制服。

 あれ、俺の通ってる学校の制服なんだよ」


「え、そうなのですか!? 」


「柵梁高校だよな? だから、いろいろ確認しておきたくて」


 そういうユイトの顔は、まじめな顔をしつつ頬が熱くなっているのを感じていた。


「召喚された年月は違う。ということは歳の差があるのかなーって思って」


「うーん、どうでしょう。順当に言えば召喚された年月分年が離れてるってことになるのでしょうか。

 私は二〇二六年六月生まれの十七歳ですね」


 その言葉に、息をのむユイト。


「ユイトさん?」


 その様子に、少し不安そうに様子をうかがうミコト。


「……俺は二〇二五年八月生まれ、歳は十六歳だ」


 その言葉に、ミコトは固まる。


「えっ、召喚された年月日と生まれの年月日には関係はない……? 」


「わからない、そこは禁呪魔法を実際に解読しないとわからないけど」


 ユイトは喜びをかみしめながらこう言った。


「向こうの世界でも、会えるな。俺たち」


 その言葉に、ミコトは嬉しそうに笑顔をむけた。


「はい、会いましょう!絶対!! 」


 ふふっ笑いあう二人。


「でもそっかー、俺の方が、一つ年上なのかー」


 天井を見上げながら、そうつぶやくユイト。


「でも、今の時点では私の方が年上です! 」


 そういい胸を張る、ミコト。


「けど、俺の方が生きてる年数は長いぞ。

 召喚されたの八年前とかになるんだから」


 と、胸を張り返すユイト。


「そうですね、そうでした」

 と、笑いながらミコトは答えた。


「けど、召喚された日時が違うから同時に帰ってもすぐには会えないすね。

 多分私知らない人に声をかけられてびっくりしちゃいます」


「それもそうだな。どうしようか。何か合図でもあれば……」


 ふむ、と考え込む。二人。

 そして、ミコトが案を出してくれた。


「あ、屋上!」


「屋上?」


「屋上で待ってます。部活動とかが使うことがあるから施錠はされてなかったですよね! 」


 少し考え込むユイト。「んー」と唸った後


「ごめん、開いてるか覚えてないや」


 と答えた。

 その解答にミコトは「じゃあ、待ってます。屋上で」と言った。


「けど、タイミング的には俺が待つってならないか? 」


「あ。そうですね……」


 そして、二人とも再び笑いあった。


 ***


 ユイト達は、すべての隊員と会い、そして語った。

 その結果、617人中598人の協力を得ることができた。

 この598人とユイト、ミコト、シズク、アカリを足した602名が、この作戦に参加できる兵員だ。

 決行日も決まり、各員へ作戦の伝達が行われた。

 そして、決戦の朝が……来た。

 

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