Preliminary Contest ⑫
『試合開始から十分経ってようやくタッチダウン一回か、不味いわね』
祭がコックピット内で小さく舌打ちした。
単純計算で前半で取れる点数は十六点となり、目標の半分しかとれない。おそらく実際はそれ以下の点数だろう。
『とりあえず次はあいつらの攻撃なんや、攻め方見てみよや』
『そうね、でもどう出るのかは大体予想つくわ』
所定のポジションにつき、ドローンからバジリスクのフロント機体へボールが渡される。バジリスクのフロントはまずボールを後ろ手に投げてセンターバックへパスをした。と同時にタイマーがスタートして試合が再開される。
『センターバックより前は全部突撃!!』
祭の怒号に近い命令を受けてセンターバック、炉々のヘイクロウがいる位置より前に出ている機体全てがボールに向けて突撃を開始した。
重量級の機体が一斉にボール一つに向けて迫る光景は圧が迫力が凄まじい、現にバジリスク側の経験が浅いパイロットは怯んで動きを止めていた。
バッファローの群れのような動きをみせるインビクタスアムトが真っ直ぐボールを持っているセンターバックへ迫る。センターバックはボールを持ったまま動かない、これは怯んでいるのかギリギリまで耐えてるのかわからない。
一番前を走っていた武尊のアリがボールに手を伸ばしたその時、ようやくセンターバックは横へパスを出した。
パスを受けたワイドレシーバーはそのまま走り出す。インビクタスアムトのフロント機体達が一斉に攻めてきたので、手薄になった相手陣地を攻めようというのだ。
現在インビクタスアムト側の守備陣はTJとエルザレイス、ハミルトンとライドル、 カルサヴィナとクリシナの六機が残っている。
攻めてきたワイドレシーバーの反対側から別のワイドレシーバーがくい込んで来たので、TJが二機の間に入ってパスコースを妨害する。他に攻めてきている機体はないのでこの二機を抑えれば何とかなるが、このワイドレシーバーが存外強い、既にハミルトンとカルサヴィナが躱されてライドルとクリシナへ迫る。
『心愛さん、ネコチャンで足を止めてください』
『やってみる!』
心愛がネコチャンを飛ばしてワイドレシーバーの足に張り付く、若干動きの鈍った感じはするが、それでも走りは止まらない。ネコチャンのパワーより遥かに強いのだ。
だが、少しでも鈍ればそれで充分である。
『ふっ』
ライドルが横から突き出したロッドがボールを的確に跳ねあげる。浮き上がったボールを再び取ろうとするワイドレシーバーだったが、不意にボールが軌道を変えて真横へ飛んでいく。
心愛がネコチャンを素早く移動させて弾いたのだ。
そして落下地点にはハミルトンがいた。
走り出すハミルトン。リミッターは付けたままだが、あっという間にハーフラインを超えて敵陣地へ。
既に攻め込んでいた健二達によってルートは出来上がっている。一分もしないうちにエンドラインへ到達した。再び立ちはだかるフルバック。
おそらく一度抜かれているので脇を抜けるのは難しいだろう、そして今ハミルトンは端から端まで走ってきたのでスピードがのっている。
ゆえに、そのままフルバックへぶつかる。そして。
『なぁんとおおお!! ハミルトンが持ち上げたあ!!』
『あの小さな機体にとんでもないパワーがありますね』
フルバックを肩で持ち上げたハミルトンはそのまま一歩前へ、また一歩、そして三歩目で。
『タッチダーーウン!!』
『インビクタスアムトが二回目のタッチダウンをきめましたね』
『これでインビクタスアムトは七点目ですね』
『いえ、違いますよ』
『え?』
甲斐説男の言う通り、一同がスコアボードを見ると驚きの結果が表示されていた。
「六……点?」
なんとハミルトンは重量制限を満たしていないにも関わらず、半減無しの六点だったのだ。
『ど、どういう事?』
『ちょ、ちょっとあたしわかんなあい! 厚ちゃん解説して!』
『直ぐに解説が始まりますよ』




