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聖女と呼ばれたいので、世界最強の魔王であることを隠して生きていきます  作者: 泣き虫ピエロ
魔王であることは内緒です
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三商会との会合

「それはどういうことでしょうか? バルミラ伯爵領の今日の発展は、私どもの流した血と汗があってことだということを忘れないでいただきたい。それなのに、我々の利権を手放せとは、あんまりではないでしょうか? お父様はそこのところをよく理解されていたのです。」


 ムラーノ商会の会長は、私の話を聞くと、席を立ちあがり大げさに嘆いて見せた。


「確かに、皆さんの協力なしには、今の伯爵家はありません」


「では!」


 私は静かに手を挙げると、低い声で言った。


「しかし、皆さんは領民の血と汗の上にいらっしゃることをお忘れでしょうか?」


 立ち上がって唾を飛ばしていたムラーノ会長が黙って席につく。


「そうは言っても我々は商人です」と、ナポリ商会の副会長は言った。「利を求め追及するのが商人です。そして、そのために労を惜しまずに務めてまいりました。お嬢様はご存じないかもしれませんが、大きな商会をやりくりするのは並みの努力では務まりません。領民の大半ができない仕事をしているわけですから、それ相応の利が我々にあっても良いのではないでしょうか?」


「その通り! よく言ったナポリの若造!」


 ムラーノが商売敵のナポリに声援を送る。


 ナポリ商会の副会長は、会長の長子で後継ぎだ。実質今のナポリ商会を指揮しているのは、このナポリの若旦那ということらしい。


「しかし、このままだと工房はつぶれ、民は路頭に迷い、皆さんも困ることになると思いますが?」


「その辺の加減は、商人の我々は心得ております」アルデン商会の会長が自信たっぷりに言った。「我々、三商会は、互いに切磋琢磨しながら、領地の発展に寄与してきました。実際、私どもの方法で豊かになったのですから、今後ともお嬢様にはご心配頂かず、すっかりお任せくださればよろしいでしょう」


「豊か? 発展? 今そう言いましたか?」


「その通りではないですか?」


 私は深くため息を吐いた。


「私は領民の姿を実際に見てまいりました。あなた方のような豊かな暮らしをしている者はほんのわずか。ほとんどの領民は貧しい生活にあえいでいます。子供に十分な食事を与えることすらできずに、みじめな思いをしている親の気持ちを考えたことがありますか? 民の中には、教会による炊き出し以外に、ほとんど食べる物がない者もおります。そのような者たちを前に、豊か、発展と言えますか?」


「ですが」とはナポリが言った。「それを解決するのはお父様、今は代理を務めてらっしゃるマリアお嬢様の仕事であって、私どもではないはずです」


「確かにこれまでこの領では、多くの搾取が行われてきました。しかし、お父様はそのことを深く反省しております。それゆえ、徐々に税率を引き下げ、今は二割五分にしております。

ですが、皆さんがご自分の利権を重視し、労働者から搾り取っては残るものも残りません」


「搾り取るとは心外な! 話にならん! 直接バルミラ伯爵にお話をする!」


 息まくムラーノは、今にも部屋を出ていこうとしていた。


 正直、彼らからすれば、ぽっと出の伯爵の娘からいきなり利権を取り上げられようとしているわけだから、納得いかないのもわかる。一人一人の労働者に多くのお金が残るようになることは、それだけ彼らの収益が落ちることを意味するのだから。人権なんて考え方のないこの世界の人々にとって、搾取することは罪とは感じないのだ。


「よくお考え下さい。皆さんが今の権益を守り、さらに富を築いたとしても、死んでしまえば何にもならないのですよ。または情勢が変わって、商会が傾くこともあるかもしれません。しかし、ここで領民のために私の政策に参加してくだされば、その名はずっと名士として語り継がれるのです。どちらの方が価値あることでしょうか?」


「ふん。偽善者が!」


 アルデンが低い声で吐き捨てた。もはや、私の顔を立てることすら必要ないと考えたのだろう。


「その物言いは無礼ですぞ、アルデン殿」


 脇に控えていたセバスチャンが鋭く言い放ったが、その効果もないようだ。


「私もムラーノ殿と同じくバルミラ伯爵と直接お話させていただく」


 所詮、私は貴族の令嬢でしかない。どれほど領民の窮状を訴えても、彼らに聞く耳はないようだった。


 そのうえ、私は素性が知れない者だ。正式に娘と書面で認められているが、この領地に私の足取りをたどれるものはない。ただ、バルミラ伯爵が直々に自分の娘だと言えば、異を唱えることができないだけだ。


 最初から、彼らは私の話など聞く気がないのだ。


「それでは仕方ありませんね」


 私は立ち上がると、三人を目の前にして言った。


「神の信託にゆだねることにいたしましょう」


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