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聖女と呼ばれたいので、世界最強の魔王であることを隠して生きていきます  作者: 泣き虫ピエロ
魔王であることは内緒です
24/26

公開処刑

少し残酷な描写が入ります。ご注意ください。

 刑場は広場に作られていた。多くの人がごった返す中、司教の前にマリアは連れ出される。皆の目線が彼女を前にした司教に集まっていた。


「この者は魔女である!」


 壮麗な法衣を身にまとった司教は、ゆっくりとよく通る声で話し始めた。


「この者は我らが主なる神より、力を授かったと詐称している。これは神に対する冒涜である。教会で奉仕するシスターという立場にありながら神を冒涜するとは、許しがたい所業。故にこの者を魔女として、ここで処刑する!」


 一気に刑場がざわついた。


 皆が顔をお互いに見合わせている。


「マリア様なら授かっているかもしれない」


「そうだ! お嬢様は聖女でもおかしくないぞ!」


 口々に罪状を否定する声が上がる。


 しかし、司教はそれを手で制すると言った。


「静まれ! 魔女は誘惑の魔法を使う。お前たちはその魔法により騙されているのだ」


「そうだ! そいつは魔女だ! 殺してしまえ!」


「殺せ!」


 司教の声に呼応するように群衆の中から処刑を望む声が上がる。


「誰だ! そんなことをいうやつは、お前を殺してやろうか!」


 集まった人々の中で罵声が飛び交い始めていた。


「静かに!」


 再び司教が皆を沈める。


「これから、私の神聖魔法を込めたむち打ちを行う。そうすれば、この者も自分が邪悪なものであることを認めるであろう」


 マリアは刑台の上に立たされると、柱を抱きかかえるように縄をかけられる。司教が手にしているのは、羊の背骨がついた鞭だ。それに神聖魔法を付与することで威力を上げている。


 彼は大きく振りかぶると、マリアの背に鞭を振り下ろした。


「ああああああ!」


 鞭の打撃音と同時に、彼女の悲鳴が上がる。


 羊の骨が服を割き、皮を突き破る。打たれるたびに血が飛び、徐々に震える肉があらわになっていく。


「今こそ自分の罪を悔い改めよ!」


 振り上げられる鞭がマリアの背を血に染めていく。


 十回も打つと、彼女の上げる叫びが聞こえなくなった。痛みのために気を失ったようだ。


 司教は指示を出すと、神殿警察に水をかけさせる。彼らも痛々しい彼女の様子に、眉をひそめているが言われた通りにした。


「聞く。マリア・バルミラ。そなたは神を冒涜し、民衆を惑わす魔女だな!」


「いえ……私は、……魔女ではありません」


「まだ認めぬか!」 


 彼はマリアに中級回復魔法『ケアル』をかける。たちどころに彼女の背の傷は癒え、垂れ下がった肉は元通りになっていた。


「己の罪を認めぬとは、どこまでも邪悪な魔女だ」


 再び彼の持つ鞭が振り下ろされ、血が飛んだ。


「ああああああ!」


 たとえ傷がいえたとしても、消耗された体力まで戻るわけではない。彼女の顔からは脂汗が噴出し、悲鳴はどんどん小さくなっていく。


「もう我慢ならねえ! マリア様を助けるぞ!」


 グラスたちの一団が叫びを上げた。


 刑場の警察が一斉に槍を構える。


「グラス! そこから動くことは許しません。これは命令です!」


 息も絶え絶えのマリアが、それでも彼らを制止する。


「ですが!」


「私は大丈夫です。絶対に動いてはなりません!」


 そうして、広場が緊張が満ちる中で、むち打ちが続けられた。


 何度も気を失い、何度も水をかけられる。鞭のせいで筋肉が布のように垂れ下がり、打つところがなくなると『ケアル』で回復する。


 そんなことが幾度も続き、いよいよマリアが声を上げることもしなくなったとき。司教の法衣も返り血でどす黒く染まっていた。


「なんと、強情な!」


 滝のように汗を流した司教はマリアが小さく何かを呟くのを耳にした。


「なんだ?」


 耳を近づけると、『主よ。彼の罪をどうぞお許しください。自分が何をしているのか知らないからです』と震える唇が言った。


 それを聞いて、頭に一気に血が上った司教は、無理やり彼女を柱から引き離すと、そばにいた神殿騎士の剣を抜いた。彼女の髪を鷲掴んで平伏させると、激高して言った。


「魔女の分際で私の罪の許しを願うか! 傲慢な!」


 そう言って、彼はその細い首筋めがけて剣を振り下ろした。


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