改心
マリアは連日拷問を受けていた。最初の三日は睡眠と食事を奪われた。魔力を吸収する腕輪を付けられてもいるので、もう体力も気力も限界に違いないだろう。
拷問を担当していた神殿警察の男はそう思っていた。
しかし、四日目になっても、五日目になっても、彼女は自分が魔女だと自白することは無かった。伯爵の娘なので、あまり手荒なことはできないが、このままでは埒が明かない。
そう考え、六日目からはむち打ちも始めたが、一向に効果はなかった。
彼女の瞳に宿る意思は萎えることがなく、男は諦めと同時に、敬意も抱き始めていた。十代後半の少女が、しかも貴族の娘として大事にされてきたのであろう者が、場合によっては将軍や王族でさえ音を上げるような拷問になぜ耐えられるのか。
しかも彼女は日に三度。自分たちがそうしているように祈りを捧げる。
このような境遇にあっても、必ず時間になると祈るのだ。
もしかしたら、神から守られているのではないか?
教会によってではなく、直接に神に力を授けられた者を、人は『聖女』と呼ぶ。我々は聖女様に鞭を打っているのではないだろうか?
そう考えだした男は、一週間がたつ頃には、思うように拷問することができなくなっていた。そして、それは神殿警察のほかの者もそうだったようだ。
「あの方は……もしかしたら『聖女』ではないか?」
「あの信仰心は本物だ」
休憩時間に、司教の耳を盗んでささやかれる言葉には、戸惑いが表れていた。
「私には……これ以上できません」
とうとう男は振り上げた鞭を落としてそう言った。
「私は何ということをしてしまったのか。あなたが魔女であるはずがない。どうかお許しください」
彼は椅子に縛り付けられたマリアの足元に平伏すると、涙を流しながらそう言った。
満足に眠りもせず、食事もなく、魔力の枯渇に悩まされていたうえ、連日鞭を打たれていたはずの少女は、彼に優しく微笑むと言った。
「あなたが気に病むことはありません。私はあなたを許します」
それを見ていたすべての者が頭を下げ、続けて許しを求めた。
しかし、それを聞いた司教は彼らを怒鳴りつける。
「魔女に頭を下げるとは何事か! もうお前たちに任せてはおけまい! 明日、公開処刑をおこなうことにする」
戸惑いの声を上げる兵士たちを無視して、その夜は司教の怒りの声がこだました。
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