魔女狩り
「お嬢様大丈夫ですか! 戦姫様が魔女のわけがないだろ!」
すぐに戦場で共に戦った、グラスが駆けつけてきた。
しかし、平民が権威ある教会の兵士、神殿警察に意見できるわけもなく黙殺されている。
「グラス。すぐにこのことをセバスさんに知らせてください。私は心配ありません」
心配そうに私を見つめていたが、ここで私の後についてきても何にもならないことを悟ったのだろう、グラスは直ぐに踵を返すと走り去っていく。
私は街の人々の不安な視線を受けながら、街の大きな建物まで連れていかれた。その建物はムラーノ商会だ。以前私が三商会との会合を行った時に、スキル『死』によって会長が命を落としている。突然会長が死んだ上に、その死因が『神の裁き』によるものとされ、商会は完全に勢いを失っていた。
今ではそのほとんどを、ナポリ商会とアルデン商会に吸収され、三商会と呼ばれていた時の面影は全くない。
神殿警察の男たちは、商会の地下に私を連れていくと、椅子に拘束して尋問を始めるようだった。
『鑑定』を使ってみたところ、私にはめられた腕輪は魔力を吸収するもので、おそらく魔力不足によるストレスを与えるために付けられたのだろう。魔力不足なると、激しい頭痛と倦怠感に襲われるので、一種の拷問だ。
「私は聖リンネ大聖堂の司教だ。お前のことをムラーノ商会の者から通報を受け拘束した」
「ムラーノですか?」
地下に表れた男は威厳のある法衣に身を包んだ中年の男だった。一般の神父とは異なる装飾は確かに司教なのだろう。
しかし、なぜ他の領地の司教が、貴族の娘である私のところに?
「お前は前会長であるムラーノに対して『神の裁き』を行使して死に至らしめたと聞いている。それは間違いのないことか?」
「はい。間違いございません」
領地の当主権を持っている私には、司法権がある。領民に最終的に判決を下す権利だ。その中には死刑も含まれている。
「しかし、調べてみるとお前に『神の裁き』を教会が授けた記録はない。『神の裁き』は現在数人にしか授けられていないし、そもそも普通の人間では習得ができぬ特別な神聖魔法だ。誰がいつ授かったのかは、すべて把握している」
司教はじっと私を睨むと、「ではどこでお前は『神の裁き』を授かったのか?」と低い声で言った。
「私は記憶を失くしておりまして、正確なことはわかりません。しかし、この力は神より頂いたと考えております」
「はっ!」
あきれたように司教は声を上げる。
「お前のような小娘に、神が恩寵を授けるというのか? 『神の裁き』は我らが神の代行として悪を裁く魔法。長く修行を重ね、積み重ねてきた行いによってその人格が評価されて初めて与えられるものだ。それをお前はその年で神に与えられたというのか? そのようなことがあるわけがなかろう」
「理由は私には分かりかねます。神のお心を察するなどできません。しかし、使えるのは事実です」
少しの沈黙があった。私は司教を見つめ、彼も私を睨む。
この男がどういう意図で、はるばる私を捕まえに来たのか、それを知る必要があった。
「これ以上の尋問が必要だろうか?」
司教が尋ねると、神殿警察の男たちが静かに首を振る。
「この者は神を冒涜しております」
「私は冒涜などしておりません!」
パン!と乾いた音がした。兵の一人が私の頬を叩いたのだ。
「神の代行権を与えられたなどと詐称しおって! これが冒涜以外のなんだというのだ」
「何か詐術を使ってムラーノを殺したに違いない」
彼らの憎悪の宿った視線が一斉に私に向けられる。
しかも、彼らが言うことは正しい。私は『神の裁き』など使えない。神聖魔法は初級の回復魔法『ヒール』と『キュア』しか使えないのだから。
このままでは『聖女』どころか、『魔女』になってしまう。
私は暴言を浴びせられながら、深くため息を吐いた。
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